大学での学びにつながる読書を推進する「ブックマラソン」
──大平先生は「むすびわざブックマラソン」の推進担当をされています。取り組みの実施にはどのような背景があったのでしょうか。
「むすびわざブックマラソン」(以下、ブックマラソン)は、本学の文化学部 国際文化学科で始まり、現在は文化学部全体の取り組みとして広がっています。
「読書」というと「小説を1冊通して読むこと」をイメージする人が多いようですが、ブックマラソンにおける読書は少し違います。基本的には「本の種類によって善し悪しがあるわけではない」という前提がありますが、本学のブックマラソンで推奨しているのは「学部の学びにつながる読書」です。
国際文化学科の中にもさまざまな専攻があり、文化学部全体にまつわる本もあれば、各ゼミの研究領域に関する本もたくさんあります。そういった本をたくさん読んでほしいという想いで始めたのがブックマラソンなのです。
──大学での学びにおいて、読書を重要な活動として位置付けているのですね。
はい。研究者もそうですが、大学において「本を読んで、書くこと」は基本です。また、大学教育は学生に新しいことを伝える仕事だと言われていますが、その「新しいこと」は「古いこと」からつながっています。
例えば、教育の研究領域ではヴィゴツキーやブルーナーといった歴史的な学者たちが書いた本を読んで、新しいことを考えます。特に古典は学生にとっては読みにくいかもしれませんが、その学問において定着している意見ですから、まずはそれを読むところから始めてほしいのです。
私はよくゼミ生に「地図にない場所を探そうと思うのなら、地図を見なければいけません」と言っています。新しいことを考えるには過去の人々の意見を理解することが必要なのです。だからこそ、大学での学びでは読書が重要だと考えています。
インターネット上の情報と比較して、本は信頼性が高いとも言われます。ですが、本に書かれている情報も、何が正しくて間違っているのか簡単に判断できるでしょうか? 学生はよく「先生、これで合っていますか?」と尋ねてくるのですが、大学の学びに正解はないし、正解がたくさんあるとも言えます。
ですから、本から正解を知ろうとするのではなく、本を読んだうえで、自分の研究に何が必要なのかを見つけることが重要なのです。