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EdTechZineオンラインセミナーは、ICTで変わりつつある教育のさまざまな課題や動向にフォーカスし、最新情報をお届けしているWebメディア「EdTechZine(エドテックジン)」が主催する読者向けイベントです。現場の最前線で活躍されているゲストの方をお招きし、日々の教育実践のヒントとなるような内容を、講演とディスカッションを通してお伝えしていきます。

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イベントレポート(ICT活用)

開始から2年半が経過したGIGAスクール構想、学校現場はどう変わったか? 全国各地の事例を紹介

「GIGA2年半~全国で起こった学びの大改革を語り合おう~」レポート

 日本全国の子どもたちが、1人1台のコンピューターを活用できる環境を実現させた「GIGAスクール構想」。本格スタートから約2年半が経過し、学校現場や教員、そして子どもたち自身にはどのような変化があったのか。ICT CONNECT 21は、全国の教員や教育委員会に対して「GIGAスクール構想を通じて起きたポジティブな変化」についてアンケートを実施した。その回答結果から注目すべき事例や、現場からの生の声を紹介しつつ、これまでのGIGAスクール構想を振り返るオンラインイベント「GIGA2年半~全国で起こった学びの大改革を語り合おう~」が7月に開催された。本稿では、イベント内で紹介され、反響が大きかった全国の活用事例をレポートする。

GIGAスクール構想の2年半を振り返る

 ICT CONNECT 21は、学校現場や自治体、省庁、企業などをつなぎ、GIGAスクール構想の実現に向けた支援、経済産業省「未来の教室」創出事業の支援、技術標準化の推進などを行っている。今回のオンラインイベント「GIGA2年半~全国で起こった学びの大改革を語り合おう~」は、同団体のGIGAスクール構想推進委員会の中にある、利用促進部会の研修サブ部会が主催した。

 冒頭のあいさつでは、ICT CONNECT 21の会長を務める赤堀侃司氏が登壇し、「このイベントで知識を吸収して情報を交換し、GIGAスクール構想の次のステップに向けて、あるいは子どもたちのウェルビーイングを目指すために、お互いに努力していきましょう」と語った。

 今回のイベントで大きな注目を集めたのが、事前アンケートによる「現場からの生の声」だ。ICT CONNECT 21が教員や教育委員会を対象に行ったアンケート調査では、GIGAスクール構想をきっかけに試行錯誤しながらICT活用に取り組んできた学校や、いち早く活用をスタートし、日常の道具として使いこなすまでに至った先進校の取り組み、地域の強みを生かし「地方創生」の要素も入れて産官学で取り組む自治体など、実に多くの声が集まったという。本稿では、その中から紹介された事例4件を詳しく紹介する。

アンケートに寄せられた意見
アンケートに寄せられた意見

【沖縄県石垣市】自己研鑽や生徒同士のコミュニケーションにも広がった

 石垣市教育委員会の比嘉幸宏氏からは、1人1台端末によって変化した児童生徒の学びとして「英語への取り組み姿勢が変わった」事例が語られた。

 沖縄県石垣市は、小学校低学年はiPad、小学校高学年から中学校まではWindows PCを使用する「マルチOS」でGIGAスクール構想を展開している。さらに、使うツールとしては、iPadのアプリ、「Microsoft Teams for Education」「Google Workspace for Education」など、主要なサービスをすべて活用する珍しい例となっている。この理由として、比嘉氏は「石垣市は、毎年3割の教員が異動する。どこの学校でも使えるように、さまざまなツールやサービスの使い方ができるようにしている」と話す。

 導入から2年半経った現在は活用も広がり、教員用の「Microsoft Teams」に大学の教授を招待し指導案を一緒に考えていくといった、新たなコラボレーションである「石垣市学力向上フロンティア教育推進事業」も始まっている。

 比嘉氏が、1人1台端末活用の大きな成果として挙げたもののひとつが、英語での活用事例だ。英語の弁論大会に出場する生徒たちが「Microsoft Teams for Education」の「ライブキャプション」や「Reading Coach」などの機能を活用し、AIによるフィードバックで自分の発音を確認し練習に励んだという。

 「英語に対してとても熱意のある生徒たちだったが、コロナ禍で学級閉鎖が続き、外国語学習支援員の面談ができないなど、思うように学習ができない状況が続いていた。こうした生徒たちに対して何かできないかと、教育委員会の担当指導主事や外国語学習支援員とで協議した結果、Teamsの活用に至った」と、比嘉氏は話す。

 具体的には、オンライン会議で外国語学習支援員と弁論の練習をしたほか、発音が英語で認識できているかをTeamsのライブキャプションで確認し、Reading Coach機能で点数化された発音を見て、生徒自らフィードバックすることができた。このように生徒の努力を後押しできる環境を用意したことで、その学校の生徒が弁論大会の上位を独占することができたという。

石垣市の活用事例
石垣市の活用事例

 また比嘉氏は、日本語を母国語としない外国にルーツを持つ生徒とのコミュニケーションにおいても、Teamsのライブキャプション機能を活用したエピソードを紹介した。当初は教師の言っていることをまったく理解できない状況だった生徒が、ライブキャプションを使うことで少しずつ理解できるようになり、笑顔が徐々に戻ってきた。

 さらに、こうした活用は、生徒同士のコミュニケーションにも広がっていった。「この機能を知った生徒たちが自らライブキャプションを使い、その生徒の母国語と日本語を行き来して、意思疎通ができるようになった。そのときの生徒の笑顔は忘れられない」と、自身の体験を伝えた。

 ICT活用が及ぼした影響はそれだけではない。比嘉氏は、例として「児童生徒がシステムに詳しくなった」ことや、「自ら興味を持って課題に取り組んでいる生徒が、1人1台端末を活用して分析を行う姿も見られるようになった」ことなどを紹介した。また、生徒会が「Microsoft Forms」を使って給食時に流す音楽のアンケート調査を行うなど、「大人の手を離れ、児童生徒同士で『学校をどのようにしていくか』を考えるケースが見えてきた」という。

 比嘉氏は「児童生徒の学び方が多様になったが、これらの取り組みや成果は、GIGAスクール構想が始まったからこそできたことだと思う」と話し、日々の事例を積み重ねながら、現在も6名のICT支援員とともに、令和の日本型教育を目指して取り組みを進めていることを伝えた。

次のページ
【大分県玖珠町】全国に広がる「ジュニアICTリーダー」を提唱

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この記事の著者

相川 いずみ(アイカワ イズミ)

 教育ライター/編集者。パソコン週刊誌の編集を経て、現在はフリーランスとして、プログラミング教育やICT教育、中学受験、スマートトイ、育児などの分野を中心に、取材・執筆を行っている。また、渋谷区こどもテーブル「みらい区」を発足し、地域の子ども達に向けたプログラミング体験教室などを開催している。一児の...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です


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