はじめに
今回のオンラインセミナーは、一般社団法人日本教育情報化振興会(JAPET&CEC)の教育ICT課題対策部会が2022年11月に開催した、ICT支援員の課題を共有するセミナーに続くものとなる。前回のセミナーは大きな反響を呼び、ICT支援員をはじめとした教育関係者からの強いリクエストを受けて第2回が開催された。第1回の内容については、以下の記事に詳しくまとめているので、ぜひ参照してほしい。
ICT支援員にまつわる「お金」の問題を掘り下げる
第1回に続いて司会を務めた株式会社ハイパーブレイン 取締役の大江香織氏は「今回のセミナーは予算などの『お金』をテーマにしているため、明日すぐ役立つ内容ではないかもしれないが、『明後日』には必要な知識となる。特に『ICT支援員の必要性を感じていても予算がない』という状況を打開するヒントとなってほしい」と、セミナーの趣旨を伝えた。
コーディネーターを務めたのは、国際大学GLOCOM 主幹研究員/准教授の豊福晋平氏。さらに、ICT支援員の現場を知り、自らも課題に取り組む経験豊富な講師として、合同会社かんがえる 代表の五十嵐晶子氏、株式会社NEL&M 代表取締役の田中康平氏、株式会社ラインズオカヤマ 営業企画本部長の難波真由美氏の3名が登壇した。
ICT支援員の課題を「予算と給与」から問題提起
今回のセミナーでは3人の講師がそれぞれの立場や知見から、予算や給与をテーマに自治体の現状を伝え、問題提起を行った。最初に登壇した田中氏は、自治体におけるICT支援員の予算について解説した。
田中氏は「現場のICT支援員は予算について意識することはあまりないが、公立学校においてはICT支援員の費用は地方自治体の予算の中から賄われている。また、これからICT支援員を志す場合、資格試験でも出題される可能性もあるので大枠を知っておいたほうがよいだろう」と話し、予算や入札方式についてわかりやすく伝えた。
まず、予算が決まるスケジュールは自治体によって異なるが、前年度の12月末までには来年度どのようにお金を使うかがほぼ決まっており、翌年1月ごろに内部折衝が行われる。最終的には、年度末最後の3月の議会で承認を受けて予算が可決される。業者が入札する時期は前年度の1~2月で、契約は4月からになるケースが多い。そこから業者がICT支援員の求人活動を行い、事前研修を経て学校へ配置になるため、実際の稼働は4月からではなく、タイムラグが生じてしまうことが多々あるという。
また、予算は大きく分けて「当初予算」「暫定予算」「補正予算」の3つがあり、メインは3月の議会で可決する「当初予算」となる。自治体によっては国から地方交付税が下りてくるため、ICT支援員の予算は交付税措置として自治体に分配されている。ただし、交付税の使い道は自治体の裁量に任されているため、対応が異なるという。
さらに、田中氏は予算の科目や、執行手続きの入札についても解説。地方自治体で可決された予算は学校が直接使うことは少なく、一般的には教育委員会が入札を行う。入札にもさまざまな方法があり、それぞれにメリットとデメリットがある。「一般競争入札」や「指名競争入札」は経済性が高い反面、不適格業者が混入する、業者が固定化してしまう傾向にある。一方の「随意契約」は事務手続きが簡単で、業務に特化した業者と契約できるが、言い値になりやすい。
田中氏は「ICT支援員という業務においては、技術的能力や実績・安全性、技術者の要件などで評価する『総合評価方式』が優良な事業者を選びやすいと考えている。経済性は低下しやすいものの、実際にICT支援員が学校現場で活躍している自治体は、この方式で選定しているケースが多い」と話した。