子どもたちのICT活用が進む一方で、教員がICT環境を十分に活用しきれていない
GIGAスクール構想による教育現場のICT環境整備がスタートして2年。インターネット接続環境や1人1台の端末、クラウドサービスといった基本となるICTインフラが整いつつある。Googleも、同社が開発したOSを搭載する端末「Chromebook」や、クラウドベースで提供される教育用途のグループウェアツール群「Google Workspace for Education」などで教育機関を支援している。
Google for Education営業統括本部の杉浦剛本部長は、日々学校現場の悩みや課題感と向き合ってきた中で見えてきた、次のステップへ進むための課題として、以下の3つを挙げた。
- データ利活用の具体例の不足
- 教務や校務でのクラウド利用の制限
- ゼロトラストへの理解と実績の不足
学校では、デジタルに慣れ親しむ児童生徒がICT環境を活かして学びを実践している一方で、先生側はクラウドの働き方改革への活用や、紙からのデジタル化への対応が遅れているという。
その大きな要因として杉浦氏が挙げたのが「クラウドに対する漠然とした不安」で、これがICTプラットフォームを学びに最大限活用する上で障壁になっていると指摘する。
国側も「教育データ利活用ロードマップ(デジタル庁)」「全国の学校における働き方改革事例集(文部科学省)」「教育情報セキュリティポリシーに関するガイドライン(文部科学省)」といった、さまざまな情報提供を行っているが、そこを一歩後押しするのが、今回発表された「Google for Education教育DXパッケージ(以降、教育DXパッケージ)」だ。
「Google for Education教育DXパッケージ」がもたらす3つのDX
「教育DXパッケージ」は、最上位エディションである「Google Workspace for Education Plus」と、先生が実践しやすいような仕組みをつくる「DX研修プログラム(無償)」、教育DXパートナーによる「DX導入サポート」の3つで構成されている。
教育DXパートナーは現在、電算システム(DSK)、Ddrive(ディードライブ)、サテライトオフィスの3社が参画している。
杉浦氏は、「教育DXパッケージ」について大きく3つのDX(学びのDX、校務のDX、セキュリティのDX)を実現する施策群であると述べた。
「学びのDX」では、学びのデータを集約できるプラットフォームを構築することで、データ活用の障壁となっているデータ分散を防ぎ、支援する。また、Google Cloudが提供し、ビジネスシーンでも活用されているBIツール「Looker Studio(ルッカー・スタジオ)」が提供され、データの可視化や分析を手助け、学習者ごとに個別最適化された学びの実現を促す。
児童生徒向けのポータルサイトのテンプレートも提供され、学校との連絡をデジタル化するとともに、児童生徒の健康状態を集約・可視化し、指導に役立てられるような仕組みも用意されている。
「校務のDX」は、主に研修として提供され、教務と校務の効率化による働き方改革をサポートする。例えば、学習ログを活用するためのビジョン設計やコンセプトづくりをリードする管理者向けのワークショップや、ペーパーレス化・押印などのワークフローのデジタル化といった、校務効率化の実践的な研修も含まれる。
また、ICT活用の基礎と応用を学ぶのに役立つ「Google for Educationの認定教育者」の資格(参考記事)を取得するための研修などのサポートや、学校のホームページを「Googleサイト」化し、学校外への情報発信に役立てられるテンプレートも提供される。
「セキュリティのDX」では、学校支給端末の持ち帰りだけでなく、個人端末の利用も進む状況などを想定し、「ゼロトラスト(学校内といったプライベートな領域であれば安全という概念を捨て、すべての情報資産へのアクセスを疑い、正当性や権限があるかを確認する考え方)」に基づいた環境の構築方法や、情報漏えいの人為ミスを防いだり、漏えい時に素早く気づき即座に対応したりすることで被害を最小限に食い止める体制づくりの支援などを行う。