IT人材育成が課題の日本において、プログラミング教育の裾野を広げる努力も大切だが、グローバル社会で活躍できるハイエンド人材の育成も同時に考えていくことが重要だ。
本稿では、プログラミングスクール「Tech Kids School」で学び、未踏ジュニア(注1)のスーパークリエイターに選ばれた3名に話を聞きながら、これからのハイエンド人材育成について考える。
注1:未踏ジュニア
天才クリエイターを発掘し育成する事業「未踏」のジュニア版で、17歳以下の小中高生および高専生を対象とした人材育成事業。その中でも優秀なクリエイターを選出したのが「未踏ジュニアスーパークリエイター」である。
編注
取材対象者の年齢/学年は、取材時点(2017年12月)のものです。
興味・関心を広げる手段として、親の勧めでプログラミングスクールへ、
まずは本稿のインタビューに協力してくれた3名を紹介しつつ、彼ら彼女らがどのようなきっかけでプログラミングを学び始めたのかを探っていこう。
共通点は3名とも、「親の勧め」でプログラミングスクールに通い始めたことだ。彼ら彼女らが学び始めた当時といえば、まだ今ほどプログラミングは子どもの習い事として知名度もなく、プログラミング必修化の動きに関しても周知されていなかった時期だ。ゆえに、子どもの方から「プログラミングを学びたい」という直接的な意思表示があったのではなく、親が子どもの興味・関心や得意なことに気づき、それを広げるための選択肢としてプログラミングを勧めたようだ。
大塚嶺(おおつか・れい)さん
大塚さんは、小3の誕生日にカメラを買ってもらったことがきっかけで、カメラやコンピュータをいじるようになった。「写真を撮ることよりも、“カメラをいじっていたい”と思うようになって、そのうち、家のパソコンとかもいじるようになって楽しいなと思うようになりました」と大塚さん。母親からTech Kids Schoolを勧められたというが、当時はプログラミングのことはよく分からないまま体験に行ったと言う。「体験ではスクラッチとWebをやりましたが、Webの方が楽しかったのでそちらを選びました」(大塚さん)。
未踏ジュニアでは、視力が低下したお年寄りから子どもまでが楽にニュース記事を読めるアプリ「らくらく読み読み」を発表した。
菅野楓(すがの・かえで)さん
もともと言語を習うのが好きで、今はドイツ語を習得中の菅野さん。「言語を勉強するのと同じように、プログラミングを学べばコンピュータと話ができると思いました」とプログラミングを学び始めた当時について語る。両親はIT関係ではないが、父親の勧めでTech Kids Schoolに通い始めた。「iPhoneコースでObjective-Cから始めましたが、iPhoneに私の話すことが通じているみたいで面白かったです」と話す菅野さんは、すでにApp Storeに3つのアプリをリリース。
未踏ジュニアでは自然言語処理で映画脚本のテキスト分析を行い、登場人物の感情変化をもとにストーリーを評価するシステム「narratica~ストーリーコンサルタント~」を発表した。
矢野礼伊(やの・れい)さん
矢野さんは、幼稚園年中のときにエンジニアの父親からPCを譲り受けて、小2の頃からフリーソフトを使い、小4からプログラミングを始めた。「母親から聞いているのは、父親がPCに向かっているのをよく見ていたそうです。それで、たまたま家にあった中古のPCをもらいました」と矢野さんは話す。その後、小6の時に母親の勧めでTech Kids Schoolに通うようになったと言う。小学校時代は、プログラミングだけではなく、毎年の理科展に合わせて、何かしらのものづくりに挑戦した。
未踏ジュニアでは、独居老人宅の玄関に見守り装置を設置し、介護者がリモートで見守りできるシステム「見守りフォトスタンド」を発表。深層学習を用いて人が写っている画像と、そうでない画像の判別を行った。