対面授業の臨場感をオンラインで伝える──立命館大学がハイブリッド授業をいち早く実現できた理由
1922年に設立され「自由と清新」を建学の精神として掲げる、立命館大学。2020年度の夏休み期間中にハイブリッド授業に対応するためのインフラ整備を行い、9月の秋学期スタート時には、全キャンパス・ほぼ全教室にあたる600もの教室がハイブリッド授業を実施できる環境を整備した。
もともと立命館大学は2000年ごろから、テレビ会議システムなど遠隔でのコミュニケーション環境の導入に取り組んできた。そして2020年春の緊急事態宣言を受け、学生と教員の行動が制約を受けることになったために、オンライン授業への完全対応をいち早く決断。当初は学内の既存機器や設備で賄い、現場で対応していたが、並行してハイブリッド授業に向けた整備を進めていった。
「2020年度の秋学期からハイブリッド授業」という早急な対応を決定したのは、オンライン授業だけではさまざまな課題があったことに加え、海外からの留学生や他地方から授業に参加する学生が多いことから、リアルなキャンパスの雰囲気を伝えられるような、魅力ある遠隔授業を行う必要があったためだったという。そこで迅速な対応ができるよう、常任理事会のもとに設置された学内の危機対策本部会議に対して、教学部から秋学期以降の授業方針が示された。危機対策本部会議がハンドリングしながら、特別予算が組まれ、部門ごとでアクションを検討・実行し、部門間での連携が進んでいった。
同大学の情報システム部で環境整備を統括している倉科健吾氏は「先生方や教学部の職員がマニュアルを作成したり、ワークショップを行ったりする傍ら、情報システム部ではインフラやシステムの構築・導入、キャンパス統括部門では消毒や空調などの環境を整えるなど、ソフトウェアとハードウェアの整備を同時に開始し、一気にプロジェクトが走り始めた」と振り返る。
そして、夏季休暇のわずか30日間という驚異的なスピードで、600もの教室にハイブリッド環境を導入した。一気に整備を実施した理由について、倉科氏は「会議の場では、教室稼働率が平時から高く、日常授業の編成も大変だったところに、オンラインと対面での使い分けや、それに伴う時間割の変更を頻繁に行うのは現実的ではないと判断された。だからこそ、早急にハイブリッド環境を全教室に整備し、さまざまな事態に柔軟に対応できるようにしたかった。法人の事業計画に、ICTを活用した次世代の教育基盤整備が重要な課題として盛り込まれており、これを前倒しするものとして決定した」と語る。
そしてハイブリッド授業環境の要件として、音声は「90分聞いても疲れない音」「エコーバックやノイズを抑制して聞き取りやすくする」、映像は「任意の場所を映せる」など、多彩な形態の授業に対応しながら、教員が1人で簡単に使えることを必須とし、特に機器選定や実装においては「教室機器とクラウドの橋渡し」を意識したという。