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教育現場でのICT活用事例紹介(大学・専門学校)(AD)

快適なハイブリッド授業のポイントとは? コロナ禍最初の夏に600教室を整備した立命館大学の事例に見る

立命館大学におけるShure製品導入事例

 新型コロナウイルスの感染拡大によって、大学では同期型・非同期型の遠隔授業や、対面とオンラインを組み合わせたハイブリッド授業などが一般的になりつつある。アフターコロナにおいても、こうした傾向は継続されると考えられ、特にテクノロジーの進化も相まって、ハイブリッド授業への期待は高まっている。しかしその中で盲点となっているのが、オンライン授業での音声品質に関する課題だ。本稿では、2022年2月開催の「第27回FDフォーラム」でも紹介された、立命館大学のハイブリッド授業に関する取り組みを踏まえつつ、遠隔授業における音声の役割や価値、そして効果を最大化するための環境整備のポイントについて紹介する。

対面授業の臨場感をオンラインで伝える──立命館大学がハイブリッド授業をいち早く実現できた理由

 1922年に設立され「自由と清新」を建学の精神として掲げる、立命館大学。2020年度の夏休み期間中にハイブリッド授業に対応するためのインフラ整備を行い、9月の秋学期スタート時には、全キャンパス・ほぼ全教室にあたる600もの教室がハイブリッド授業を実施できる環境を整備した。

立命館大学
立命館大学

 もともと立命館大学は2000年ごろから、テレビ会議システムなど遠隔でのコミュニケーション環境の導入に取り組んできた。そして2020年春の緊急事態宣言を受け、学生と教員の行動が制約を受けることになったために、オンライン授業への完全対応をいち早く決断。当初は学内の既存機器や設備で賄い、現場で対応していたが、並行してハイブリッド授業に向けた整備を進めていった。

 「2020年度の秋学期からハイブリッド授業」という早急な対応を決定したのは、オンライン授業だけではさまざまな課題があったことに加え、海外からの留学生や他地方から授業に参加する学生が多いことから、リアルなキャンパスの雰囲気を伝えられるような、魅力ある遠隔授業を行う必要があったためだったという。そこで迅速な対応ができるよう、常任理事会のもとに設置された学内の危機対策本部会議に対して、教学部から秋学期以降の授業方針が示された。危機対策本部会議がハンドリングしながら、特別予算が組まれ、部門ごとでアクションを検討・実行し、部門間での連携が進んでいった。

 同大学の情報システム部で環境整備を統括している倉科健吾氏は「先生方や教学部の職員がマニュアルを作成したり、ワークショップを行ったりする傍ら、情報システム部ではインフラやシステムの構築・導入、キャンパス統括部門では消毒や空調などの環境を整えるなど、ソフトウェアとハードウェアの整備を同時に開始し、一気にプロジェクトが走り始めた」と振り返る。

立命館大学 情報システム部 情報基盤課 倉科健吾氏
立命館大学 情報システム部 情報基盤課 倉科健吾氏

 そして、夏季休暇のわずか30日間という驚異的なスピードで、600もの教室にハイブリッド環境を導入した。一気に整備を実施した理由について、倉科氏は「会議の場では、教室稼働率が平時から高く、日常授業の編成も大変だったところに、オンラインと対面での使い分けや、それに伴う時間割の変更を頻繁に行うのは現実的ではないと判断された。だからこそ、早急にハイブリッド環境を全教室に整備し、さまざまな事態に柔軟に対応できるようにしたかった。法人の事業計画に、ICTを活用した次世代の教育基盤整備が重要な課題として盛り込まれており、これを前倒しするものとして決定した」と語る。

 そしてハイブリッド授業環境の要件として、音声は「90分聞いても疲れない音」「エコーバックやノイズを抑制して聞き取りやすくする」、映像は「任意の場所を映せる」など、多彩な形態の授業に対応しながら、教員が1人で簡単に使えることを必須とし、特に機器選定や実装においては「教室機器とクラウドの橋渡し」を意識したという。

ハイブリッド授業で音響面の課題が表出──未来を見据えた快適な環境づくり

 立命館大学におけるハイブリッド授業環境の具体的な設備として、まず小教室はさまざまな目的で使われることから汎用性を重視し、以前から使用されていた教員の声を伝える仕組みに加えて、教員側・学生側・教材などを自由に遠隔側の学生に伝えられるよう、マイク・カメラ・スピーカーを三脚に乗せた可動式の機器を導入し、約500教室に展開した。

小教室の設備は自在性を重視
小教室の設備は自在性を重視(画像クリックで拡大)

 そして大教室については、対面講義と同様の臨場感を得るため、マイクの声やデッキ類の音を送信でき、また遠隔側の学生の声も教室内で拡声できるよう、音響システムを大きく改修した。さらに、板書カメラやOHCの一部は取り回しがしやすいよう1本のUSBで接続し、Zoomでキャプチャーできる環境を整えた。

大教室は対面の授業に近い使用感を重視
大教室は対面の授業に近い使用感を重視(画像クリックで拡大)

 なお音響システムには、エコーバックやノイズを抑制し、発言音量を均一に整えるなどの整音性能に非常に優れたDSP(デジタル・シグナル・プロセッサー)として、「Shure Intellimix P300」を導入。よりクリアで聞き取りやすい音声を実現させている。

大教室の音響システムの構成図
大教室の音響システムの構成図(画像クリックで拡大)

 このようにハイブリッド授業をいち早くスタートさせた同大学だったが、2020年度秋学期の後半からは教室内の学生の数も増え、換気を重視するために騒音が入りやすくなるなど、新たな課題も見えてきた。さらに語学の授業においては、オンラインで一人ひとり拾えていた声が広い教室では拾いにくくなるなど、ハイブリッド授業ならではの音響面の課題が目につくようになった。

 これらの課題は授業の品質へクリティカルに影響することが明らかになり、改善策を模索することとなった。しかし、学生一人ひとりにマイクを用意することはコスト的・管理的にも現実的ではないため、2020年冬には天井設置型のアレイマイク(離れた位置から複数の発言者をカバーできる集音型マイク)「Shure MXA910」を設置し、実証を行った。倉科氏は「部屋のレイアウトを保ちつつ、対面授業における臨場感あふれる音をきれいに届けるための、ひとつの理想形ではないか」と語った。

 こうした新技術を採用した音響システムを教室の基本機能とするには「邪魔にならないこと」「簡単に使えること」、そして「低コスト」で供給や耐久性に優れていることが求められる。実証を踏まえて2021年春には複数の教室でこれらの環境を導入し、2022年5月時点ではMXA910のほか、バータイプや卓上タイプのマイクを含め27教室へ導入されている。

 さらに2023年には立命館アジア太平洋大学(APU)で新学部設置とともに、教学理念を体現することを狙った新棟をオープンさせることになっている。現在はオンラインと対面を組み合わせてグループワークを行う前提で、AV設備をデザインしているところだという。

 倉科氏は「オンラインの利便性に負けない、学生や教員が新しい発見ができるような教室をつくっていきたい。そのためにも対面とオンラインの混合チームでブレイクアウトルームの議論ができるような仕組みを構築したいと考えている」と意欲を見せる。そして「多くの音響・映像機器は1人で使うことを前提に最適化されていることが多いため、Shureなど老舗音響メーカーとのパートナーシップのもとで、多人数でのコミュニケーションが行いやすい環境づくりについて挑戦していきたい」と語った。

衣笠キャンパスでのデモンストレーション

 第27回FDフォーラムでは、立命館大学衣笠キャンパス敬学館の教室に設置された実機による、ハイブリッド授業のデモンストレーションが行われた。

 幅・奥行10メートルの定員45名の教室には、カメラ一体型のスピーカーフォンが設置され、そこで収録された音声および映像が授業配信システムに取り込まれる仕組みだ。広角カメラを使用し、映像は教室の隅々まで見えるものの、ハイブリッド授業の開始当初、音声に関してはマイクから遠くなると不明瞭となり「聞き取りにくい」との声が上がっていた。

 そこで天井に集音マイク(Shure MXA910)を設置し、加えて「ノイズリデューサー」と呼ばれる、不要なノイズを抑制する機能を用いることで、空調やプロジェクターなどが稼働する環境ながら、室内で均一・明瞭に音が聞こえるように改善された。さらに発表者用に有線マイクを設置し、発言と同時に天井マイクから自動的に切り替わり、より発表者の声が前面に出て聞こえるよう工夫も施した。教室にいる学生と教員の両方の声が、どの場所からもクリアに聞こえるようになり、快適な音声環境を実現できた。

倉科氏によるデモンストレーション動画

「快適なハイブリッド授業」実現に向けた音声設備のポイント

 立命館大学におけるハイブリッド授業対応インフラ整備の音響システムにおいて大きく貢献したのが、米国の創業から約100年となる老舗音響メーカーのShure(シュア)だ。これまで多くの企業リーダーや政治家などの演説・声明を伝え、歴史的な瞬間をマイクや音響システムによって支えてきた。音楽シーンでも講演でも欠かせない存在となっている「Shure SM58」は60年以上のベストセラーとしてブランドを象徴するマイクロホン。現在はさまざまな領域のビジネスへ展開している。ライブやコンサート、動画・音楽制作、放送などはもとより、近年は企業や官公庁、教育関係にも長年培った技術とエンジニアリングを使いやすく高性能な製品として提供している。

 立命館大学のように、よりよい音声設備の整備に積極的に取り組む大学も登場し、ハイブリッド授業の環境整備が徐々に進みつつあるとは言え、全国の大学全体で見ると、取り組みはこれからというケースが多いという。

 2021年5月に文部科学省から発表された「新型コロナウイルス感染症の影響による学生等の学生生活に関する調査」では、オンライン授業について学生の6割以上が「満足」または「ある程度満足」と回答しており、その理由を「自分で選んだ場所で受けられた」「自分のペースで学習できた」としているが、一方で「友人と一緒に授業を受けられず寂しい」「レポートの課題が多かった」などをデメリットとしている。そしてさらに注目すべきは、「身体的疲労を感じた」「質問等、相互のやり取りの機会がない・少ない」「対面授業よりも理解しにくい」「通信環境が不十分」といった、授業の内容そのものというよりも「環境」がデメリットとして大きく影響していると思われる点だ。

文部科学省「新型コロナウイルス感染症の影響による学生等の学生生活に関する調査」(2021年5月)より 文部科学省「新型コロナウイルス感染症の影響による学生等の学生生活に関する調査」(2021年5月)より
文部科学省「新型コロナウイルス感染症の影響による学生等の学生生活に関する調査」(2021年5月)より(画像クリックで拡大)

 シュア・ジャパンのインテグレーテッドシステムズ・シニアディレクターの大友裕己氏は「オンライン・ハイブリッド授業をもっと受講しやすくするために、適切な環境整備が必須であることは間違いない。しかしその中で『音声設備』は、意外な盲点となっている。意識的に音声部分を改善することで、環境の快適性を大きく向上させることができる」と指摘し、改善ポイントとして次の5点を挙げた。

シュア・ジャパン株式会社 インテグレーテッド・システムズ事業本部長/シニアディレクター 大友裕己氏
シュア・ジャパン株式会社 インテグレーテッド・システムズ事業本部長/シニアディレクター 大友裕己氏

(1)【利用者視点】音の聞き取りにくさ

 マスクやアクリル板があり、物理的に離れて座るソーシャルディスタンスの徹底によって、聞き取りにくさが発生している。

(2)【利用者視点】気になる雑音

 教室内のプロジェクターや空調などのノイズがマイクを通じて送られることにより音声が聞き取りづらくなり、集中力の低下や身体的疲労につながっている。

(3)【管理者視点】ミニマルタッチの要求

 感染症対策の観点からも「マイクの使いまわしを避けたい」というニーズが高まっている。さらに消毒を含めた準備や片づけに負担が生じている。

(4)【管理者視点】柔軟な運用

 教室内での柔軟なレイアウト変更や他教室でのAVシステムの転用など、柔軟な運用が求められている。

(5)【管理者視点】部屋に応じた機器選定

 教室の広さや集音・拡声範囲に対して音響機器の規模が不十分で、結果として聞き取りづらさにつながっている。

シュア・ジャパンに寄せられた「音声設備5つの課題」
シュア・ジャパンに寄せられた「音声設備5つの課題」(画像クリックで拡大)

 特に(1)の「音の聞き取りにくさ」は、ハイブリッド授業にとっては致命的な課題と言える。極端な話、音声が聞こえれば、映像が乱れていてもオンライン授業は辛うじて成り立つ。現場は映像の品質向上に比重をおいてコストを投入しがちだが、音声も授業の品質に大きな影響を与えているのは間違いない。

 これらの課題を解決するため、シュア・ジャパンは外資系企業でありながら、日本の現場をよく知る担当者が丁寧なヒアリングやサポートを行い、立命館大学のほかにも多くの学校へ、環境・状況に適したサービスや製品を提供している。

自校の環境やニーズに最適な機材・配置を見いだすために

 大友氏は「音響環境についてはどの学校も共通の課題を抱えているものの、だからと言って単純に高額な製品、高性能の製品を選べばよいというものではない。どのような環境でも使える万能な集音マイクというものは存在しないため、各校の状況によって導入すべきシステムや機材は異なる」と語る。つまり、部屋の大きさやレイアウトなどの「使用環境」に加えて、講義やグループワークなど「その教室で何をやりたいか」、そして「いつまでに運用を開始したいか」「将来的にどのような授業を実現したいか」といった要望の洗い出しをしっかりと行い、シュア・ジャパンのような音響のエキスパートの知見をもって、要件に応じた最適な機材や組み合わせを見いだすことが重要というわけだ。

ハイブリッド授業に向けた教室の環境整備プロジェクトの手順
ハイブリッド授業に向けた教室の環境整備プロジェクトの手順(画像クリックで拡大)

 例えば立命館大学の場合、幅・奥行10mの定員45名という広さの教室で、講義・ワークショップ共に、学生と教員の両者が集中できる、没入感・臨場感のあるハイブリッド授業が望まれていた。それゆえ、教え手である教員だけでなく、学び手である学生の双方向のコミュニケーションを必要としており、両方の発言がクリアに聞こえることが必要だった。さらに授業に集中したい教員はもとより、教室数が多いこともあって設備管理者もできるだけ負荷を軽減したいという希望があった。

 そこで、選定された機材のひとつが先ほど紹介した天井設置型のShureシーリングアレイマイクロホンMXA910だ。こちらは他大学においても採用されている人気製品だという。グループワークやアクティブラーニングなどでは、教員は教室内を巡回しながら講義を行い、学生も一人ひとり発言する機会が多い。その模様をオンラインでも配信し、対面授業での臨場感を担保しながら、発言内容についてもクリアに聞き取れるようにしていくには、1人1本マイクを持たせることが理想的かもしれない。

 とは言え、それは管理面や費用面でも現実的でないのは明らか。こうしたシーリングアレイマイクなら、マイクの存在が気にならない天井に設置するだけで、広い範囲の発言エリアをカバーし、気軽に明瞭な音で双方向の発言が可能になる。教室内の全員にマイクを配ることに比べれば費用を抑えられるのはもちろん、露出したケーブルがなく設置したままでよいので、管理が簡単で空間を邪魔しないことも大きなメリットだ。またShureはノイズやエコーバックを抑える音声信号処理の性能も高く、このことも大きく貢献し、非常にクリアな音声が得られるという。

 大友氏は「目に見える場所にマイクがないため、自分の声がブロードキャストされているというプレッシャーから解放され、自然なコミュニケーションが実現する。さらに、学生一人ひとりにマイクを手渡す必要がなく、先生自身も自由に動き回りながら講義を行い、教室のレイアウト変更にも影響を与えない」と語り、「未来の大学として、グローバルな交流など、オンラインと対面の融合が進んだ際にも、十分に耐えうる環境である点が人気の理由ではないか」と分析した。

 ハイブリッド授業に耐えうる教室環境を構築するにはそれなりの時間とコストがかかるものの、状況は待ったなしのはずだ。立命館大学のような先進的な例を十分に参考にして、自校の要件を丁寧に洗い出してみることをおすすめしたい。

 シュア・ジャパンでは、前述のようなニーズ評価から設計、設置までを一気通貫でサポートしている。さらに、MXA910などの製品を含む「Microflex Ecosystem」として、拡張性・柔軟性の高い標準化システム構成が用意されており、導入したいスペースがあればスピーディーに現場で実機デモを行い、具体的な提案まで可能だ。ぜひ、興味のある方は問い合わせてみてはいかがだろうか。

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【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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