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EdTechZineオンラインセミナーは、ICTで変わりつつある教育のさまざまな課題や動向にフォーカスし、最新情報をお届けしているWebメディア「EdTechZine(エドテックジン)」が主催する読者向けイベントです。現場の最前線で活躍されているゲストの方をお招きし、日々の教育実践のヒントとなるような内容を、講演とディスカッションを通してお伝えしていきます。

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EdTechZine読者イベントレポート

GIGAスクール構想の1人1台端末を「普段使い」へ進めるためのポイントとは? 有識者3名が語る

第12回 EdTezhZineオンラインセミナー「小・中学校 1人1台端末環境のつくり方~『GIGAスクール構想[取り組み事例]ガイドブック』刊行記念セミナー」

 GIGAスクール構想による「1人1台」の端末配備から約1年。学校現場での混乱はいまだ続いているものの、主な課題は今後、端末や通信環境が整った教室でどのようにICT機器を使っていくかに移りつつある。12回目の開催となるEdTechZineオンラインセミナーは、GIGAスクール構想を受けて全国の学校が取り組んだ、ICT活用の事例を集めた書籍『GIGAスクール構想[取り組み事例]ガイドブック』の刊行記念セミナーとして開催された。本書の編著者である放送大学教授の中川一史氏、北陸学院大学人間総合学部教授の村井万寿夫氏、茨城大学教育学部准教授の小林祐紀氏の3人に、GIGAスクール構想における現場の課題から、これからの活用のポイントまでを伺った。

「使わなければ」から「使い倒していく」へ

 セミナーは、中川氏の「GIGAスクール構想の開始から約1年が経過して『とにかく使わなければ』といったフェーズは一段落した。いかに『使い慣らしていくか』『使い倒していくか』へと移行している」という話からスタートし、村井氏と小林氏との3人による鼎談形式で進められた。

左から、放送大学 教授 中川一史氏、北陸学院大学 人間総合学部 教授 村井万寿夫氏、茨城大学教育学部 准教授 小林祐紀氏
左から、放送大学 教授 中川一史氏、北陸学院大学 人間総合学部 教授 村井万寿夫氏、茨城大学教育学部 准教授 小林祐紀氏

 中川氏は、今後のGIGAスクール構想のポイントとして「『使ってみた』の段階から、いよいよ『教科の本質にどう迫れるか』という点に戻ってくる」こと、そして「いかにして文房具のように『普段使い』ができるのか」の2点を挙げた。

 次いで村井氏は「これまで紙のノートに書いていたことを、端末へ移行すること自体は授業のねらいに迫る大きなポイントではないものの、これにより一人ひとりの考えをきちんと端末で残すことができる。端末に書くとクラスメイトに伝えたくなる」と、協働学習につながっていく流れを解説した。さらにねらいに迫るためには、子どもたちが「ほかの人たちの考えを知りたい」と考えるタイミングで協働学習支援ツールを活用するなど「教員による味付けが重要だ」と述べた。

 これを受けて、小林氏も「1人1台端末は、多くの学校で若手教員が率先して使い始めているが、ある程度落ち着いてくると、授業の中で本当に効果的な活用を行っているのは、ミドルリーダーの教員になってくる。これまでの各教科での実践や、授業の知見の蓄積があってこそ、その中にICTを位置づけることができる」と分析した。

 一方で「授業力は高いものの、これまで目立つ実践がなかった」という教員の中に、ICTとの親和性が高く効果的に活用できている例が表に出てきたことを挙げ、これまで評価されにくかった教員が適切に評価されるといったメリットも示した。

「普段使い」の肝は授業時間外の活用にある

 中川氏は普段使いの話題に戻り、「文部科学省の手引きには『文房具と同様に』と明記してあるものの、実際に行うことはなかなか難しい。教科学習以外での活用なくして普段使いはなく、結果として授業での効果的な活用に迫ることもできないだろう」と考えを述べた。

 これを受けて小林氏は「普段使いは、授業時間外の活用が肝」と発言。多くの自治体や学校で議論になっている「休み時間に端末をどう使わせるか」という問題に触れた。

 小林氏は一例として、札幌市立幌北小学校の事例を紹介。同校では児童に「何のために、このアプリを使うのか」と問いかけ、低学年であっても子どもたち自身に考えさせる機会を設けている。「目的意識を持たせることが、遊びではなく学習のツールとして普段使いする際のひとつのポイント」だと解説した。さらに別の例として、那珂市立芳野小学校の「とにかく自由に使わせる」というスタイルも紹介し、「トラブルが起きることも想定した教員の覚悟も必要」と伝えた。

授業時間外の端末の使い方の事例
授業時間外の端末の使い方の事例

 村井氏は「これまでICTを活用していたのは、研究校として端末を導入したり、校内にすごくできる推進役の教員がいたりする学校だったが、現在は全国どの学校もほぼ同じ環境にある」とし、「教員や子どもたちがICTを使う度合いが高まることを想定して、バックアップ体制が整いつつある」と解説した。

 その上で、中川氏は「普段使いのポイントは『慣れる』こと」だと述べ、「慣れるには、意識せずどんどん使っていく一方で『紙とアプリどちらがよいか』と立ち止まってその場で考え、意識することも大事」と語った。

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この記事の著者

相川 いずみ(アイカワ イズミ)

 教育ライター/編集者。パソコン週刊誌の編集を経て、現在はフリーランスとして、プログラミング教育やICT教育、中学受験、スマートトイ、育児などの分野を中心に、取材・執筆を行っている。また、渋谷区こどもテーブル「みらい区」を発足し、地域の子ども達に向けたプログラミング体験教室などを開催している。一児の...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です


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