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EdTechZine読者イベントレポート

なぜ今、自律的にICTを活用する「デジタル・シティズンシップ」が重要なのか? 豊福晋平氏が語る

第10回 EdTezhZineオンラインセミナー「子どもたちの自律を育てるデジタル・シティズンシップ」

 「GIGAスクール元年」と言われた2021年、1人1台端末の活用とともに「デジタル・シティズンシップ教育」に大きな注目が集まった。デジタル・シティズンシップとは「デジタル社会に生きる人々の行動規範」とも言える考え方で、デジタルを道具として活用した上で、社会の一員としての自律と課題解決を促すことを目標としている。北米や欧州の教育にも取り入れられているこの考え方は、日本で一般的だった「情報モラル教育」とはアプローチの方法が異なる。そこで今回は、日本におけるデジタル・シティズンシップ教育の第一人者である、国際大学グローバル・コミュニケーション・センター主幹研究員・准教授の豊福晋平氏に、現在の教育現場におけるICT活用の課題を踏まえた、デジタル・シティズンシップの重要性について伺った。

国際大学グローバル・コミュニケーション・センター(GLOCOM)主幹研究員 准教授の豊福晋平氏。共著に『デジタル・シディズンシップ コンピュータ1人1台時代の善き使い手を目指す学び』がある
国際大学グローバル・コミュニケーション・センター(GLOCOM)主幹研究員 准教授の豊福晋平氏。共著に『デジタル・シディズンシップ コンピュータ1人1台時代の善き使い手を目指す学び』がある

ICTを日常的に使うことで教育的効果が見えてくる

 「ここ1年ほどでデジタル・シティズンシップは非常に注目されるようになったが、『GIGAスクール構想』という大きな背景があってのもので、この2つは切り離せない」と豊福氏はセミナーの冒頭に語り、GIGAスクール構想で整備された「GIGA端末」の活用から話をスタートさせた。

 「私たちがスマートフォンを使う理由は圧倒的に便利だから。ICTも同様に、圧倒的な情報効率を稼ぐ道具として使われるはずのもの」として、子どもたちが学校や日常で使うにあたり、「利用の頻度」「時間」「用途」の3つを拡大し、道具に慣れることが必要であると豊福氏は語る。その上で、教育関係者に課せられた課題は「デジタルによって得られた膨大な情報を、どのように学びにつなげるか」であるという。

 豊福氏は、海外のICT活用の文献でよく引用される「SAMR(セイマー)モデル」を提示し「このモデルでは、ICT活用の圧倒的な頻度や情報量の増加が先にあり、そのあとに質的構造的な変化が起きる。つまり、ICTをたくさん使って日常的な利用と習熟に至らないと、その先が見えてこないことを意味する」と解説。

 SAMRモデルは、フィンランドのプエンテデューラ氏が2010年に考案したもので、教育の情報化によって教育の革新が段階的に起こることを示している。「これまでの日本の教育は、Sの『代替』の段階にとどまっていた。現在はAの頂上に上る途中で、ICT活用についてはまだ厳しい状況である」と豊福氏は指摘する。

プエンテデューラ氏のSAMRモデルに豊福氏が加筆した図
プエンテデューラ氏のSAMRモデルに豊福氏が加筆した図

日常のデジタル化は「道具立て」や「公的コミュニケーション」がカギ

 こうした背景を解説した上で、豊福氏は学校における「日常のデジタル化」を達成するための方法を2つ紹介した。

 1つ目が「学習者中心の文具的活用」だ。これまで日本ではICTを特定の授業場面でピンポイント的に使用してきたため、子どものスキル格差は埋まらず、初歩的なトラブルを避けるために教員側が逐一操作指示するような、負荷の高い使い方を強いられてきた。しかし、現在はGIGA端末が子どもの手元にあるため、登校から下校まで、家に端末を持ち帰れば帰宅後も、1日中端末を活用する状態をつくることができる。日常のデジタル化を前提にすれば、教員がすべて指示して使わせるのではなく、子ども自身が工夫して使い分けをする「道具立て」が非常に重要だという。

子どもたちが、文具的にICTを活用することが日常のデジタル化につながる
子どもたちが、文具的にICTを活用することが日常のデジタル化につながる

 2つ目が「授業よりも先に、オンラインコミュニケーションで活用すること」だ。「授業が先ではないかというツッコミを受けるが、むしろ失敗できない授業で慣れないICTを活用するのは負担が大きい。連絡帳やプリントをデジタル化することで、必然的に毎日パソコンを開くことになり、これが習熟につながる」と、豊福氏はそのメリットを話す。そして「これまで、日本の学校は児童生徒にIDを配らなかったため、授業でのICT活用に『C=コミュニケーション』の要素はほとんどなかった。しかし、今後ICTが学校の公的なコミュニケーション手段としての役割を担うようになる」と続ける。パブリックなデジタル・コミュニケーションのTPOと作法を学ぶ貴重な機会になるということだ。

学校では公的なコミュニケーションの活用部分を担う
学校では公的なコミュニケーションの活用部分を担う

 「子ども同士のLINEなどのやりとりではタメ口の関係しか構築できないが、リアルの関係においては、立場の違う人に対して言葉遣いや作法などが必要となる。デジタルの世界でもまったく同じだが、それができるためのトレーニング場面は学校でないとつくれない」と、豊福氏は学校の中で公的コミュニケーションの機会をつくる意義を語った。

 また、学校内でのコミュニケーションには、安全で見守りのある場所で発達に応じた経験が積めるという利点もある。「体育の水泳で泳げない子どもは水遊びからステップを踏むように、幼いときは身近な関係からデジタルのやりとりを始める」と豊福氏。それを教室の中から学年、学校、そして外の人へとつなぐように、小さな失敗を繰り返しつつ成長させていく形が望ましいという。

 さらに豊福氏は、GIGAスクール構想の導入や運用について「逃げ腰でやるとあとでしっぺ返しを食らう」と警告し、その背景として「学級や学校、自治体間の情報格差」と「大人世代と子ども世代の情報格差」という2つの情報格差があることを明らかにした。

ICTの活用水準によって著しい格差が出ることも
ICTの活用水準によって著しい格差が出ることも

 続けて「保護者は子どもがYouTubeばかり見ていると言うが、最近はテレビ視聴の時間が減っている。テレビからネット動画へ視聴媒体が移行していることは見逃せない」と指摘。「もう子どもたちにとってICTは、生活を支えるライフラインになっている」と明言した。

 そして「子どもたちは大人を困らせたいからLINEをやっているわけではない。デジタル環境があるからこそ、調べものをしたり趣味を深めたりできるし、社会や他者と接点を持つこともできる」としながらも、「一方でリスクにも付き合わなければいけない。これをどう考え教えるか」が重要であるとした。加えて、学校の連絡や宿題がデジタル化することで家庭でも端末を使う時間は必然的に増えるが、子どもが宿題をしていても保護者は遊んでいると勘違いして叱れば、家庭不和の原因にもなりかねない点も問題であるとした。

次のページ
子どもの自律と課題解決を促すデジタル・シティズンシップ

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この記事の著者

相川 いずみ(アイカワ イズミ)

 教育ライター/編集者。パソコン週刊誌の編集を経て、現在はフリーランスとして、プログラミング教育やICT教育、中学受験、スマートトイ、育児などの分野を中心に、取材・執筆を行っている。また、渋谷区こどもテーブル「みらい区」を発足し、地域の子ども達に向けたプログラミング体験教室などを開催している。一児の...

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