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ゲームや家電だけじゃない! 「都市」を支えるプログラミングを知ろう

これから始まるプログラミング教育に対して保護者が出来ること 第4回

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2018/01/25 14:00

 プログラミング教育必修化にあたって、保護者が出来ることを考える本連載。第3回となった前回は、身近にある家電がどのような仕組みで制御されているかを紹介しました。今回はもっと規模の大きい、都市を制御する(動かす)仕組みについて紹介します。「都市を制御する」と聞くと、とてつもなく大きな仕組みを思い浮かべてしまうかと思います。ですが、これらもプログラムで制御されています。このように大きな仕組みでも、たった3つの制御構造しか持たないプログラム(前回参照)で制御することができるのは驚きですね。

都市を制御するスマートシティ

 みなさまは「スマートシティ」という言葉を聞いたことがありますか? スマートシティとは、ITを活用して、人々の生活を効率よく、便利にしていく都市のことです。そこでは、再生可能エネルギーを必要な場所に効率よく供給するための仕組み「スマートグリッド」を中核に、省エネルギー化による環境への配慮や、工場の自動化、医療での活用、交通システムの制御などを進めています。日本でも、千葉県柏市の「柏の葉スマートシティ」などで推進されています。

 身近にある家電やコンピュータとは違い、スマートシティでは、手にとることのできない大きなものや、広い範囲を制御する仕組みも自動化していきます。これらもプログラムによって制御されていて、根本的な考え方・仕組みは第3回で解説したものと変わりません。

 では、実際にどういったものがスマートシティで制御されていて、どこにプログラムが活用されているかを紹介していきます。プログラムを学んでも、ゲームや家電にしか生かせないわけではなく、さまざまな分野で活用できます。プログラミングの持つ重要性と、将来性についてご理解いただければ幸いです。

環境に配慮した都市をつくるスマートグリッド

 地球温暖化への対策として、CO2の排出量を抑える取り組みを世界各国で進めています。日本では、火力発電から原子力発電へと移行を進めていたことを、みなさまもよくご存知であろうと思います。しかし、2011年3月11日の原発事故を発端に、原子力発電所の多くは運用を停止しています。このため、現在の日本では主に火力発電による電力生成に立ち戻っています。

 こういった問題の解決策として、「再生可能エネルギー」の見直しと「スマートグリッド」の推進があります。

 まず、「再生可能エネルギー」は、地球環境に配慮したクリーンエネルギーですから、地球温暖化問題への対策として注目されています。「再生可能エネルギー」とは、太陽光や風力といった自然界に常に存在するエネルギーのことです。「太陽電池」などがよく知られているでしょう。太陽光だけで電力を生成し、機械を動かすもので、電卓や腕時計などで多く利用されています。今では、家庭やオフィスのビルでも屋根や屋上に太陽光パネルを設置して、家庭・オフィス用の電力として利用する動きがあります。

 この「再生可能エネルギー」を主として、電力を生成する電力会社も出てきました。さらにこれは日本だけではなく、海外でも進められていて、ドイツでは2050年までに発電比率の80%を自然エネルギーに引き上げることを目標にしています(平成28年度低炭素社会の実現に向けた中長期的再生可能エネルギー導入拡大方策検討調査委託業務報告書参考資料1 ドイツのエネルギー変革に関する動向調査 より)。

 これを受けて、消費者も、再生エネルギーを生成する会社からのエネルギー供給を期待する動きがあります。今までの大手電力会社ではなく、新たな小売電力供給会社が生成した電力を、必要な家庭に適切に供給する仕組みが必要になってきました。「各家庭で必要な電力を新しい電力会社から正しく供給」し、「料金を正しく回収」する新たな仕組みが求められます。これらを実現するのが「スマートグリッド」です。

 スマートグリッドは、必要な場所に必要な量を送電する仕組みで、通信機能付きの電力量を計測する機械である「スマートメーター」との組み合わせで実現されます。スマートメーターは、消費者側の電力の使用量をリアルタイムで計測します。電力を送り届ける側は、スマートメーターの結果を元に必要な場所に必要な分だけの電気を供給します。

 供給側は、スマートメーターで計測された情報を、すぐプログラムによって計算します。例えば、Aさんの家での使用量が1000Wで、Bさんの家では500Wだったとします。このとき、Aさんの家へ1000W以上、Bさんの家へは500W以上の電力が確実に供給されなければ、各家庭の電気は止まってしまいます。このための計算を瞬時に行い、送電を制御しているものが、プログラムです。

 また、各家庭の使用量がリアルタイムにわかるとすれば、電力会社の検針員が各家庭を回らずとも、電気料金を計算することができます。電気料金の計算も、プログラムによって実現できます。

 家庭の数だけ電気料金を計算することは、とても膨大な数量になって大変だと思われるかもしれません。ですが、プログラムは同じ処理を何度も、正確に実行することが得意です。あつかう規模が大きくなったとしても、正しく計算するためのプログラムを1つ記述することさえできれば、あとは同じものを使って、必要な家庭の数だけ繰り返し計算させれば十分なのです。


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著者プロフィール

  • 阿部 崇(アベ タカシ)

     外資系IT企業で、コンピュータシステムのアーキテクチャをデザインする仕事に従事。2017年度より区立中学校のPTA会長に就任。教育委員会や教師の方々と接する機会も多く、これまでの経験を活かして、プログラミング教育を広げていく活動をすすめている。

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