コロナ禍で、悩みながらも前に進む学校と教員
この連載ではICT教育について、さまざまな実践やサービス、製品を紹介してきました。教育に活用できるICT機器やソフトウェア等の開発が進んでいます。私も、まだまだ活用しきれていないものがたくさんあります。日々、試行錯誤しながら授業を行っています。
新型コロナウイルス感染症のため、オンライン教育が一気に加速したと言われています。学校は、その対応に追われ混乱していた部分も多くあります。加えて、生徒の体調管理やメンタルケア、机や椅子などのアルコール消毒の徹底等、さまざまな仕事が増加しました。現場の先生からは「仕事量が格段に増えた」「オンラインに移行するための機材がそろわない」「先生たちのコンセンサスが取れない」といった悩みが私の所にも多く寄せられました。それでも「生徒のために」前に進んだ学校も多くあります。
生徒が自宅にいながら授業を受けられるようにしたり、授業の復習動画を作成したりと学校が取った対応はさまざまです。私は、それで良いと考えています。各学校が各学校の生徒のために、必要な学習環境を整えることは当たり前のことですし、その対応が異なっていることもまた当たり前なのです。いつの時代も「生徒のために」教員は必死になっているのです。
ICTはあくまでも「ツール」
「国語の教員なのにプロジェクターで授業するなんて」「若いうちに楽を覚えてしまっては駄目だ」などは、今から10年ほど前、私がICTを活用する授業を始めた際に、周りから聞こえてきた意見です。教育活動にはさまざまな意見があり、自分と異なったものに対して、批判的になってしまうこともわかります。しかし、予測不可能なVUCAの時代と言われている中で、今までの経験則が必ず正しい道を示すとは限りません。私たち教員もまた、新たなフェーズに入ってきたのではないかと考えます。
「結局先生がICTを使いたいだけなのでは」「ICTがなくても授業はできる」といったご意見も頂きます。まさに、現在そこが問題になっているのではないでしょうか。本来ならば、
- コロナ禍で生徒が登校できない。
- しかし、生徒の学習を止めるわけにはいかない。
- ICTの力を借りてなんとかしよう。
もしくは、
- 生徒に身につけさせたい力がある。
- そのためにはこういった授業方法が必要だ。
- このICT機器を活用すると実現できる。
この流れであるはずです。しかし現在は、
- 生徒用のタブレットが配布された。
- せっかく配布されたのだからタブレットを使用した授業を展開しなければならない。
- 何か考えなくては……。
上のような流れになっていると感じます。これであっては本末転倒です。ICTは手段であり目的ではありません。その部分を間違えてしまうことが多いのではないかと思います。
とは言うものの、実際にICT機器を活用してどのようなことができるかわからず、授業を組み立てるのは難しいというのもまた事実です。だからこそ、最初は誰かが先に実践をして、それを公表しなければいけない。それが本連載の執筆の目的でした。