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ゼロから始めてここまでできる! 公立高校でのICT教育実践

生徒が社会で活躍するため、学校はどう変わるべきか? 高校教員と企業のCEOが語り合う

公立高校 教員 浅見和寿氏&株式会社Relic 代表取締役CEO 北嶋貴朗氏 対談


 予測不能な時代に突入する中、社会や企業が求める人材が変わり、学校教育もまた変わる必要があると言われる一方で、企業と学校では認識に齟齬があることを指摘する声も多い。なぜ、そのような齟齬が起きるのか、学校現場にはどのような課題があるのか。本稿では学生時代より旧知の仲である、現場の教員と会社経営者の対談をお送りする。公立高校で国語科の教員を務めながら、ICT活用研究を積極的に行う浅見和寿氏と、企業の新規事業開発やイノベーション創出に取り組む株式会社Relic 代表取締役CEOの北嶋貴朗氏に、学校側・企業側からそれぞれ見た教育のあり方や課題などについて伺った。

(左)公立高校 教員 浅見和寿氏、(右)株式会社Relic 代表取締役CEO 北嶋貴朗氏
(左)公立高校 教員 浅見和寿氏、(右)株式会社Relic 代表取締役CEO 北嶋貴朗氏

浅見和寿氏

 国語科教員(行政職も含)として、公立高校に11年間勤務。元・東京成徳大学非常勤講師。学事出版教育文化賞 優秀賞、旺文社 学びを変える!未来の「学参」企画大賞 敢闘賞等多数受賞。積極的にICT機器を活用し、効果的な授業方法、教員の働き方について研究している。著書に『ゼロから始めてここまでできる!公立高校でのICT教育実践』(翔泳社)がある。

北嶋貴朗氏

 埼玉県立川越高等学校、慶應義塾大学を卒業後、コンサルティングファームを経て、ITメガベンチャーのDeNAに入社。新規事業開発やオープンイノベーションの責任者を歴任した後、株式会社Relicを創業し、現職。著書に『イノベーションの再現性を高める新規事業開発マネジメント』(日本経済新聞出版)『失敗しない新規事業開発の進め方』(翔泳社)がある。

とにかく忙しい学校現場――デジタルネイティブ世代の生徒に何ができるか

――教育の目的のひとつは、社会・経済活動に参画し、幸福に生きていくための能力・スキルの育成にあると思います。その点において、それぞれのお立場から現在感じていらっしゃる課題についてお聞かせいただけますか。

浅見氏(以下敬称略):現在の学校現場では、生徒も教員も日々与えられるタスクに追われ、将来のことや必要な学びについて考える余裕がないように思われます。以前は自分がやりたいことに向かって突っ走る意欲的な生徒も多かったのですが、現在はそのような生徒をなかなか見つけられない、と言うよりわかりにくい環境になってしまったと感じます。是非はともかく、SNSなどのコミュニティの中でつながることで、学校では自分を出す必要がなくなったのかもしれません。学校教育は「みんなと同じ」ことを良しとする横並び体質が強いですから。

北嶋氏(以下敬称略):「夢に向かって進んでいこう」とする意欲が見えにくくなっているのは由々しきことだと思います。ただ、あくまで一経営者としての視点ですが、まだ高校生の段階では、自分たちが学んでいることが「社会に出たとき、夢をかなえるためにきっと役立つだろう」と、ふわっとした認識でもいいと思うんですよね。

 例えばICTについては、エンジニアになってバリバリ活躍したい人であればコンピュータサイエンスの基礎が必要でしょう。しかしそうでない場合、ベースとなる構造や思想を含めた最低限のリテラシーを持ってもらえれば、まずは十分だと思っています。社会生活や仕事の場面でどのように使われていているのか、生み出す価値は何か、いかにして社会の仕組みを変化させるのか……。こうした、ICTのベーシックな知識や実感を育んでもらうことが重要なのではないかと考えています。

浅見:その意味では、今の高校生はいわゆる「デジタルネイティブ世代」で、スマホやSNSといった、ツールとしてのICTにはかなり慣れています。しかし、あくまでLINEで仲間とおしゃべりしたり、オンラインゲームで遊んだりするユーザー側であり、それを使って「社会を変える」「仕事に活かす」「自分のスキルや強みにする」といった発想までにはなかなか至らないのが現状です。学校で促すことができればいいのですが、この分野の教員のスキルや経験は不足しているように思います。

北嶋:相手は生まれたときからインターネットが存在したり、多感な時期にスマートフォンなどをフル活用したりするわけで、太刀打ちできないですよ(笑)。Relicでも、やはり若い人のほうがICTには慣れていて、言語化はうまくできなくても、使い方や可能性については肌感覚として持っているように思います。恐らく、ICTの利活用やリテラシーの素養についても、若い人ほど身に付けやすいのではないかと。実際に、学生時代からそれらを活用して何らかの活動や事業に取り組んでいる学生も増えてきているように思います。ですから、私はそこまで悲観的に考えてはいません。

浅見:そうおっしゃっていただけると少しホッとする部分はあります、ただ、その次の段階として、先ほどお伝えしたように、学んだことをどう社会に活かすか、いかに自分の生きる力にするかといった発想にはなかなか至らなくて……。知識や装備を得られる環境がそろったら、次は、将来壁に突き当たった際に何が課題かを考え、「これが使えるじゃないか」と気づき解決しようとする能力を育まなくてはいけないと感じています。

北嶋:確かに、これまではすでに課題や目標が決まっていて、そこへ効率的かつ早く正確に到達できる人が求められていました。しかし、今後は予測が難しいVUCAの時代となる中で「なぜ、何が必要か」「何が課題や問題なのか」が見えにくくなるのは明白です。だからこそ、社会や人類がどうあるべきかというビジョンや構想を描き、意義や課題を見つけ出せる人が活躍できる世の中になるでしょう。ICTのリテラシーはもちろんのこと、それをベースとして新しい課題発見や発想ができる人材が重要視されると考えています。

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コロナ禍で「新しい学び」を模索、仕組みには大きな課題も

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この記事の著者

伊藤 真美(イトウ マミ)

エディター&ライター。児童書、雑誌や書籍、企業出版物、PRやプロモーションツールの制作などを経て独立。ライティング、コンテンツディレクションの他、広報PR・マーケティングのプランニングも行なう。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です


森山 咲(編集部)(モリヤマ サキ)

EdTechZine編集部所属。好きな言葉は「愚公移山」。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です


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