チームの多様性を広げたオンライン化
2019年秋にフィンランドのタンペレ市にあるDemola GlobalでJanne氏にインタビューを敢行してから約1年半。当時伺ったDemolaの取り組みは、大学生と企業が直接会って議論を重ね、企業の課題解決や、将来を見据えた新しい事業価値の探索を行う、学生と企業の社員が主体のプロジェクトだった。コロナ禍でもプロジェクトを続けていた同社は、どのような影響を受け、対応したのか。再びJanne氏に伺った。
――前回のインタビューはパンデミック前の2019年秋でした。コロナ禍でDemolaにはどのような影響がありましたか?
Janne Eskola氏(以下、Jannさん):2020年の初めに新型コロナウイルスの感染拡大が始まった時、私たちはDemolaの活動をすべてオンラインに切り替えるという、明確で、必要な戦略的決断をしました。幸運にもわれわれは2年ほど前からオンライン導入の準備をしていました。まさかこんなに早く実施することになるとはだれも思っていませんでしたが……。
Demolaにとってオンライン化とは、単にプロセスをデジタル上に実装するということではありません。オンラインに切り替わることによって、これまでにない多様性をもったチームを構築できるようになりました。今や世界中からさまざまな才能を結集できるのです。
こうして真にグローバルなチームに参加できるというのは、学生にとってももちろん素晴らしい経験になります。しかし同時に挑戦でもあります。時差のある地域で協業し、リモートでチームを構築するのは、お互いにより多くのコミュニケーションが必要になります。しかし、意志あるところに道はあるのです!
――オンライン化の過程で起きた課題に対して、学生たちはどのように対応されたんでしょうか?
Janneさん:Demolaのプロジェクトの進行や、コミュニティマネジメント、ファシリテーションのデジタル化にあたっては、いまだに多くの設計の見直しが必要です。たいていの課題は共通していて、直接顔を合わせることができないというのが非常に大きな影響でした。その分、ドキュメントでの記録やそのほかのコミュニケーションが止まると、プロジェクトの進行がすぐに止まってしまいます。
しかしここでも学生たちは、彼らの柔軟性とオープンマインドを発揮してくれました。学生たちは粉骨砕身しながらDemolaのチームに参加し、すべてのことをうまくいくように対応してくれました。
典型的だった例は、日本、ヨーロッパ、カナダの学生が参加していたチームの取り組みです。チームが機能するためには、一同が集まれる時間を見つける必要がありますが、時差があるため、誰かがかなり早く起きるか、遅くまで活動しなければなりません。これは、9時5時の大学の授業とは違って、彼ら自身が情熱を持って取り組むプロジェクトなのです。
ドキュメント化についても、プロジェクトをスタートして2~3週間で、たくさんの情報が飛び交うようになると、学生たち自身がその重要性に気付き始めて行動していたと思います。
――グローバルに展開し、事業の将来を見据えた仮説検証を行うDemolaプロジェクトにとって、世界の状況が一変したことも、影響があったのではないかと想像します。
Janneさん:はい。多くのグローバル展開企業にとって、パンデミック初期の打撃は相当大きかったと思います。しかし2020年末になると、事態はゆっくりと動き始めました。
最も興味深い現象の1つは、世界中の多くの企業や組織が、従来とは全く異なる視点で未来を考えざるを得なかったことです。新型コロナウイルスは、Demolaのような未来を見据えた活動や探索がなぜ重要なのかを、われわれに改めて思い知らせてくれました。既知の脅威に備えるだけでなく、未知の脅威と可能性を粘り強く偵察する必要があるのです。