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特集記事(海外動向)

学生自身も気づいていない「驚くべき才能」を引き出す――フィンランド発、学生と企業の協業プログラム「Demola」とは?

 昨今ではアントレプレナーシップ教育や、ビジネス課題解決コンテストなど、学生が実際の企業での課題解決に近い体験から学ぶ取り組みが注目を浴びつつある。そんな中、ノキアなどの大手企業から中国のスタートアップまで、世界中の企業と50以上の大学の学生たちがつながり、事業をイノベートするプロジェクトがある。フィンランドのDemola Global社がデザインし運営するプロジェクト「Demola」だ。日本では北海道大学が参画している。企業の担当者も「一緒に」チームとしてプロジェクトに参画し、Demolaのファシリテーターが場を促進する。一般的な学生向けビジコン等とは一味違う。学生がDemolaに参加する意義や、チームでイノベーションを生むファシリテーション、同社が考える学びの在り方について、COOのJanne Eskola氏に伺った。

※本インタビューは2019年10月に敢行しました。コロナ禍での変化を踏まえたインタビューは後編で公開します。

学生と企業が"一緒に"イノベーションを生み出す「Demola」とは?

――まず、「Demola」とは何か、概要を教えていいただけますか。

Janne Eskola氏(以下、JanneさんDemolaは2008年にフィンランドでスタートしました。企業側のニーズによって誕生したんです。企業は将来を見据えて、今世界で何が起きているのか新たな文脈で捉えられる、外部の視点を必要としていました。多様な学問領域にわたる知識や、若くてフレッシュな視点や挑戦などです。

 現在Demolaはフィンランドを飛び出し、17の国で取り組みを行っています。私たちはこの広がりを「Demola Alliance(デモラ同盟)」と呼んでいて、企業の要望によってその国に進出することもあれば、大学側の希望の場合もあります。

 例えば、「将来起こりうるトレンドや事業の可能性を、中国の若者の視点を通してよりよく理解したい」という北欧企業の希望があり、パートナーにふさわしい上海の有名大学、復旦大学と協力に至りました。また、ネパールがよい例ですが、地域の共創を活性化したいという動機で実現することもあります。

 企業が世界の変化に合わせて新しいことを始めようとするとき、そのアイデアについて理解を深めなければなりません。そのために学生とチームとして協力し、調査やテストを繰り返しながら、新しいアイデアの実現を目指すのがこのDemolaのプロジェクトです。

Demola Global COO Janne Eskola氏
Demola Global COO Janne Eskola氏

――学生がアイデアだけを提出して評価されたり、指示されたものを作るだけの作業者になったりはしないということですね。学生はDemolaの中でどういった役割を果たすのでしょうか。

Janneさん:そうです。学生が得意としているのは、新しいことへのチャレンジです。ですから、企業が将来を見据えるための「窓」になってくれます。

 例えば、金融業は大きな変化の中にいます。独自の決済システムを開発したGoogleやAppleが業界に参入し、アリババはもはや中国で巨大なエコシステムを持っています。そんな中で、こんな疑問がわいてきます。「将来においても銀行が必要な理由とはなんだろうか」「銀行や保険会社の存在意義とは」――。そんなとき、Demolaに参加した学生たちを通して、未来の顧客が実際にどうふるまうのか、より深く理解することができるでしょう。

 もちろん扱うのは特定の業界だけでなく、さまざまな試みにおいて学生の参加を募集しています。

 Demolaは、強制的な学びの場ではありません。学生は彼ら自身のモチベーションによって、Demolaに参加します。私たちは学生に、自分が本当に情熱や興味を持てるプロジェクトのトピックを見つけるようにと言っています。

――では、Demolaプロジェクトのチーム構成や役割について、特徴を教えてください。

Janneさん:Demolaでは、4~6人のチームを組んでプロジェクトに取り組みますが、多様な領域の学生で構成されます。例えば、エンジニアリングを学んでいる学生、医療系の学生、ビジネス専攻の学生、メディア専攻の学生などです。プロジェクトのトピックの種類にかかわらず、多様です。参加の可不可は、どの学問を専攻しているかではなく適正能力やモチベーションで判断します。

 そして、他の似たような取り組み(学生のビジネスプロジェクト参加)と大きく異なる特徴は、企業側から非常に積極的な参加が必要なことです。学生と同じ立場のチームメンバーとして、1~3名の企業社員が必ず参加します。これは本当に重要なポイントです。

 なぜなら、Demolaは企業がそのトピックを深く理解できるようにすることを目的としているからです。その場に実際に参加して、プロセスや議論を見て体験し、そこで何が起きているのか観察しなければ、その目的は達成できません。

 一方で、学生側に対しても「あなたたちはDemolaに『学生』として参加しているのではなく、その領域の『エキスパート』として参加しているんだよ」と、いつも言っています

 多くの学生にとっては、初めて責任を負ってプロジェクトを遂行し決断する経験をします。学生ではなくエキスパートとして、自分が持っている理論上の知識を実践に移してほしいのです。

 また、私たちDemolaのメンバーの主な役割は「ファシリテーション」です。チームビルディングやプロジェクトの推進、プロトタイプの作成などの細かい実践において「ファシリテーション」は重要です。Demolaのすべての拠点にファシリテーターがおり、チームのイノベーションプロセスや相互理解を促進しているのです。

――ファシリテーターが学生と企業をつなぐ役割を果たすということでしょうか?

Janneさん:そうですね。プロジェクトで「何をやるのか」に責任を負うのはプロジェクトチーム(学生と企業の社員)自身ですが、ファシリテーターは、「なぜやるのか」「どうやってやるのか」の部分をサポートします。

 もちろん、社員と学生の間で小さなコミュニケーションの溝も多々あります。社員たちは、学生の知らない企業のコミュニケーションスタイルで話し、逆に、社員は学生が慣れ親しんでいるテクノロジーやコミュニケーションの仕方がわからないこともあります。最初は、こういったギャップに対してもファシリテーターが手を差し伸べるのです。

 私たちのDemolaファシリテーターは、チームへのファシリテーションに50%、企業社員へのファシリテーションに50%の割合で注力します。学生に干渉しすぎないようにするのは、学生たちはプロジェクトにおいて挑戦の役割を果たすからです。

――Demolaと類似のプロジェクトというのはあるのでしょうか。

Janneさん:多くの人は「学生イノベーションプロジェクト」と比較しますが、私たちは全く違うものだと考えています。私たちは学生を「エキスパート」として扱う環境で、あくまで「企業」の将来のための取り組みをしているのです。

 いうなれば、アクセンチュアやマッケンジーのような戦略コンサルティングや調査を行う企業に近いことを行っていると思います。私たちも企業に対して戦略的に重要な知見を生み出しているからです。これを私たちDemolaの社員ではなく、学生が行う点が、そういった企業とは明確に異なるところです。

次のページ
学生と企業の密接なコミュニケーションで進むDemolaのプロジェクト

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この記事の著者

岡田 果子(編集部)(オカダカコ)

2017年7月よりEdTechZine編集部所属。慶応義塾大学文学部英米文学専攻卒。前職は書籍編集で、趣味・実用書を中心にスポーツや医療関連の書籍を多く担当した。最近は英語学習のアプリやオンライン講座に興味がある。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です


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