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EdTechZineオンラインセミナーは、ICTで変わりつつある教育のさまざまな課題や動向にフォーカスし、最新情報をお届けしているWebメディア「EdTechZine(エドテックジン)」が主催する読者向けイベントです。現場の最前線で活躍されているゲストの方をお招きし、日々の教育実践のヒントとなるような内容を、講演とディスカッションを通してお伝えしていきます。

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実践してわかった! オンライン授業のポイント【九州大学ビジネス・スクールでの事例】

教室とオンライン、いずれの場所でも学生が快適に受講できる「ハイフレックス型授業」のポイントとは?

実践してわかった! オンライン授業のポイント【九州大学ビジネス・スクールでの事例】第4回

 本連載では、筆者が所属する九州大学ビジネス・スクール(以下、QBS)および九州大学経済学研究院でのオンライン授業の実践をもとに、遠隔授業のポイントやコツを紹介します。第4回では、教室での対面参加と遠隔オンライン参加を同時進行させるハイフレックス(ハイブリッド)型の授業について、実施方法と使用機材といったQBSでの実践事例を紹介します。

ハイフレックス型授業、何から手をつければいい?

 QBSでは、2020年の秋からハイフレックス型の授業を実践してきました(ただし、現在は全面オンラインに変更しています)。その中では、事前の準備も含め、試行錯誤と数々の失敗を重ねてきましたが、それゆえに全国の教育関係者の方々にとっても参考となる知見を多く発見することもできました。

 QBSがハイフレックス型授業を行うことを決定した時点では、学生が教室での対面と遠隔オンライン、どちらの形式でも参加できるように環境を整備することと、遠隔オンライン参加のためのツールには「Zoom」を用いること、そして以下の前提条件くらいしか決まっていることはありませんでした。

  • 教員のPCに、Zoom以外のソフトウェアやドライバソフトをインストールする必要がないこと(教員ごとに使用するPCの仕様が異なり、トラブル発生のリスクが高いため)
  • 授業開始前と終了後の各10分間で機材のセットアップと撤収ができること(QBSの授業はJR博多駅の駅ビル内にある会議室を教室として使用しており、授業後は原状復帰が必須のため)
  • 機材の収納にできる限りスペースをとらないこと(備えつけのロッカーに機材を収めなければならないため)
  • パワーポイントのスライドのみならず、板書での授業にも対応できること(企業の事例について、板書で学生の意見を書きとめて議論をしながら行うケースディスカッション形式の授業などがあるため)

 2020年春からの約半年間で、学生も教員もZoomにログインして行うオンライン授業についてはかなり経験値がたまっていました。しかし、そこから教員と一部の学生が教室で対面授業を行いつつ、同時にその他の学生は遠隔オンライン参加をするハイフレックス形式への移行は、どのような変化を伴うのか具体的なイメージがほぼ湧かず、QBSでは何度もリハーサルと教員研修(FD)を行いました。

ストレスのない音声を届けるため、機材に工夫を

 特に検討を重ねたのが、「音声」と「映像」の2点でした。音声については、ハウリングの発生を抑えつつ、教員がオンライン参加の学生からの発言を聞く、あるいは自分の音声をオンライン参加者に伝えるにはどうしたらいいかに関してトライアル&エラーを繰り返しました。要件は、「教室内にいる学生と対話するのと同等のスムーズさで、遠隔オンライン参加者ともコミュニケーションがとれること」です。実際に授業を行う教室にさまざまな機材を持ち込んで試行錯誤を重ねた結果、最終的には「会議用スピーカーフォンを教員用PCに接続して使う」または「マイク付きイヤホンないしヘッドセットを教員が使用する」のいずれかに落ち着きました。

同僚の平野琢QBS専任講師(左)とハイフレックス型授業用機材のセットアップについて、リハーサルをしながら議論する筆者(右)
同僚の平野琢QBS専任講師(左)とハイフレックス型授業用機材のセットアップについて、リハーサルをしながら議論する筆者(右)

 スピーカーフォンについては、YAMAHAのユニファイドコミュニケーションマイクスピーカーを使用しています。決して安い機材ではありませんが、付属のUSB-AケーブルでPCに接続するだけで使えて、1台でマイクとスピーカー兼用の2in1デバイスとして使用できるので大変重宝しています。現在QBSでは、各教室にこのスピーカーフォンを1台、加えてWebカメラとUSBハブをそれぞれ1台ずつ用意しており、授業開始前にTAがそれらを組み合わせた状態でセットアップしてくれます。教員は教室に到着したら自分のPCを立ち上げてUSBハブをつなぎ、Zoomのマイクとスピーカーの設定がどちらもスピーカーフォンになっていることを確認するだけでハイフレックス型授業の準備は完了、となるようにしています(下図参照)。

ハイフレックス型授業を実施する教室のイメージ
ハイフレックス型授業を実施する教室のイメージ

 こうすることで、教員が教室内で対面参加する学生に向けて講義や説明をする声はスピーカーフォンを介してオンライン参加者にも伝わりますし、逆にオンラインで参加している学生が発言した際にもスピーカーフォンから再生される音声が教室内に響きます。QBSが授業で使用している部屋は床面積114~135平方メートル、本来であれば70~80名超を収容できる大きさですが、問題なくオンライン参加者の声を聞き取ることができます。

 この場合、注意点が2つあります。まず、教員がスピーカーフォンを背にする形でしゃべると収音がうまくできず、オンラインで音声が聞こえづらくなります。ただし、上図の通り、スピーカーフォンを背にしてスクリーンやホワイトボードに向かってしゃべるということは、教室内の学生にも背を向けてしまうことを意味します。そうならないように注意することは、結果として教員にとって良い意識付けになった面もありました。

 そしてもう1点、スピーカーフォンで教員の声を拾い、それがZoomを経由し再生されるまでには1秒弱の遅延が生じます。その結果、教室内で対面参加する学生には、教員の肉声にやや遅れてZoomからの音声が聞こえる「やまびこ現象」が発生してしまいます。これを防ぐため、対面参加者は教員が話している際にヘッドセットをはずす必要があります。これが2つ目の注意点です。

 スピーカーフォンによって教室内での立ち位置や身体の向きを制限されることを好まない教員は、代替策としてマイク付きのイヤホンまたはヘッドセットを使用します。アップルの「AirPods Pro」を使用している教員が多いですが、僕はAfterShokzの「OPENCOMM」という骨伝導型のヘッドセットを使っています。

「OPENCOMM」を装着した様子
「OPENCOMM」を装着した様子

 「OPENCOMM」の場合、イヤホンと違って物理的に耳をふさがないので、教室で対面参加する学生とはヘッドセットなしの状態と同じように会話できる一方で、オンライン参加者の声もクリアに聞こえますし、僕の音声もオンライン上で全く問題なく聞こえます。PCとの接続はBluetoothで行い、10m近く離れても接続が途切れたことはありません。また、急速充電にも対応しており、授業前に1時間程度、PCに専用ケーブルでつないでおけばフル充電されるところも含め、個人的には大変気に入っています。授業中にスクリーンとホワイトボードを行き来するなど、立ち歩く必要がある方にとっては、スピーカーフォンよりもマイク付きイヤホンが向いているかと思います。

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ハイフレックス型授業における映像のカギは「構図と解像度」

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この記事の著者

松永 正樹(九州大学ビジネス・スクール准教授)(マツナガ マサキ)

 Ph.D. in Communication Arts & sciences(Pennsylvania State University, U.S.A.)。早稲田大学、立教大学で助教を務めた後、Institution for a Global Society株式会社シニアコンサルタント、九州大学ロ...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です


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