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コロナ禍で、必修化されたプログラミング教育はどうなったのか? 実情と実践をふり返る

「2020年コロナ禍、小学校で始まったプログラミング教育の実際」レポート

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2021/02/04 07:00

 2020年の「コンピュータサイエンス教育週間」の最終日にあたる12月13日、みんなのコードと、プログラミング教育の充実に向け活動を行う先生の任意団体Type_Tが、オンラインイベント「2020年コロナ禍、小学校で始まったプログラミング教育の実際」を開催した。イベントには学校現場と支援団体、研究機関それぞれの立場から、プログラミング教育に携わる関係者が登壇。2020年におけるプログラミング教育の実情や授業事例をふり返り、今後に向けての展望を話し合った。

プログラミング教育必修化が決定する以前から活動

 イベントの第1部では、みんなのコードの代表理事である利根川裕太氏が、「小学校におけるプログラミング教育の現在地」と題して、小学校における必修化までのプログラミング教育の歩みをふり返り、2020年度のプログラミング教育の実態について語った。

 まず利根川氏は、2014年から始めた自身の活動を説明した。これまで、日本全国の先生に向けた「プログラミング教育明日会議」「プログラミング指導教員養成塾」の開催や、プログラミング教材「プログル」の提供など、幅広く活動してきたみんなのコード。その前身は、2014年に東京都内のコワーキングスペースで実施したプログラミングワークショップだったという。

2014年に開催したイベントの参加者は18名。当時エンジニアだった利根川氏はボランティアとして、プログラミング学習サイト「Code.org」の「Hour of code」を使用してワークショップを行った。
2014年に開催したイベントの参加者は18名。当時エンジニアだった利根川氏はボランティアとして、プログラミング学習サイト「Code.org」の「Hour of code」を使用してワークショップを行った。

 そこでの子どもたちの反応がとても良く、「もっとしっかりプログラミング教育に取り組みたい」との思いから、2015年にみんなのコードを設立した。「当時は必修化の方針が出る前だったので、ご縁のあった先生に相談して授業を行うなど、草の根レベルの活動をしていた」と利根川氏はふり返る。

 翌2016年、小学校でプログラミング教育を行うことが決定する。「プログラミング的思考」という言葉が初めて使われるなど、必修化に向けて国が大きく動き出した。それを受けて、みんなのコードも2017年より先生向けのシンポジウム「プログラミング教育明日会議」の開催や、小学校向けプログラミング教材「プログル」の提供をスタートし、必修化に向けた支援を行ってきた。

 そして迎えた2020年。必修化がスタートする4月に向けて準備されていたものは、全国一斉休校により大幅な変更を強いられた。利根川氏は研修会や勉強会の半数をオンラインに切り替え、「学校現場に対して、新しい形でどのように支援できるか」と考えながら取り組みを続けている。

 こうしたみんなのコードの歴史を踏まえ、利根川氏は「プログラミング教育の必修化が決まった2016年時点では何もないに等しかったが、今や多くの先生方が前向きに取り組んでいる。私も、この先の4年間でさらに何ができるのかを考えていきたい」と語った。

5つの小学校における授業事例を紹介(1)

 第2部「プログラミング授業実践事例」では、みんなのコードの竹谷正明氏が進行役を務め、5人の小学校の先生による授業実践事例が紹介された。

事例1:学校生活でコンピュータを使おう~児童の主体的なPC活用の実践~

栃木県・小山市立東城南小学校 小島寛義教諭
小山市立東城南小学校の小島教諭。Type_Tのメンバーでもある。
小山市立東城南小学校の小島教諭。Type_Tのメンバーでもある。

 小山市立東城南小学校は、2020年度より5~6年生に対して1人1台環境を整備し、8月からはMicrosoft Officeのアカウントを1人ずつ貸与して「コンピュータを教具から文具にしていこう」と実践を行ってきた。

 小島教諭は総合的な学習の時間の授業事例として、キャリア教育と関連させた「コロナ禍で行事がなくなっているから、自分たちで起業して仕事をつくろう」という個人探究活動「マイプラン」を紹介した。授業では「OneNote」で作成した企画書を「Teams」で共有したり、「Forms」を使ってアンケートを作成したりするなど、Officeのソフトウェアが大いに活用された。

Formsでアンケートを募る、Teamsでお知らせをするなど、コンピュータを効果的に活用している様子がうかがえる。
Formsでアンケートを募る、Teamsでお知らせをするなど、コンピュータを効果的に活用している様子がうかがえる。

 特筆すべき点は、児童らが自主的にプログラミングを使って課題を解決していたことだ。あるグループは仕事の1つとしてプログラミング教室を企画したところ、参加者が殺到したため、「Scratch」で抽選プログラムをつくって解決した。体育館でゲーム展を行ったグループは、初日は手書きで人数整理をしていたが、翌日は人数をカウントするプログラムを制作し対応していた。「子どもたちのこうした活動に驚愕した」と小島教諭は語り、その後、委員会活動でもTeamsやFormsを活用するなど、児童がコンピュータを普段使いするようになった様子を紹介した。

児童は自主的にプログラミングで課題を解決していくようになった。
児童は自主的にプログラミングで課題を解決していくようになった。

 これらの実践を通して、小島教諭は「コンピュータは目的達成のための手段となっていった。特性の理解も進み、場面によって紙とコンピュータを効果的に使い分けていた」と、気づきを紹介した。

 一方で小島教諭が難しく感じたというのが、「今までの学校教育の考え方をどう転換していくか」だ。また、「ナイフと同様に正しい使い方を指導しないと、危険な使い方をしてしまうため、コンピュータサイエンスなどをしっかりと教えていかなければならない。私自身とても苦労したので、いずれは教科として教えたほうがいいのかもしれない」と話した。


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著者プロフィール

  • 相川 いずみ(アイカワ イズミ)

     教育ライター/編集者。パソコン週刊誌の編集を経て、現在はフリーランスとして、プログラミング教育やICT教育、中学受験、スマートトイ、育児などの分野を中心に、取材・執筆を行っている。また、渋谷区こどもテーブル「みらい区」を発足し、地域の子ども達に向けたプログラミング体験教室などを開催している。一児の...

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