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大規模授業のアクティブラーニングをオンラインで実現した同志社大学

未来の先生フォーラム2020「大学の大規模授業でオンラインツールを駆使しまくったら、学生の授業満足度が爆上がりした話。」レポート

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2021/01/13 07:00

 さまざまな領域・分野の教育の実践家が集い、未来の教育を共創する場をめざす教育イベント「未来の先生展」。2020年度は「未来の先生フォーラム2020」となり、完全オンラインで開催された。メインテーマを「問い直し」とし、with/afterコロナの時代における実践や学びについて、2日間で103のプログラムが用意された。今年のプログラムの傾向としては、昨年よりもオンラインをテーマにしたセッションが増えたことが挙げられる。その1つ、同志社大学政策学部の准教授である佐野淳也氏による「大学の大規模授業でオンラインツールを駆使しまくったら、学生の授業満足度が爆上がりした話。」の興味深いセッションを紹介する。

オンラインでアクティブラーニングを行う3つの工夫

 佐野氏は同志社大学の政策学部で、NGO・NPO論などの講義を行っている。本年度の春学期は、384名の履修生に対して大規模なオンライン授業を実施。SA・TAを含むチームで取り組み、さまざまなツールを使い分けるなどの工夫を凝らした結果、受講生授業満足度99%の成果を得たという。本セッションでは授業実践を紹介するとともに、どのようにして学生の満足度を上げていったかを解説した。

セッションを行った同志社大学政策学部の准教授の佐野淳也氏。
セッションを行った同志社大学政策学部の准教授の佐野淳也氏。

 佐野氏はまず、「毎回学生に確認してもらっている」という「Zoom」を使ったオンライン授業での基本的なルールを紹介。授業中の質問はチャット機能を活用し、音声とビデオはオフにするなど、使い方はいたってシンプルだ。

Zoom授業時は、毎回基本的な操作方法もあわせて学生に説明を行ったという。
Zoom授業時は、毎回基本的な操作方法もあわせて学生に説明を行ったという。

 続いて、同志社大学で行った授業事例をもとに、オンラインの取り組みを紹介した。コロナ禍以前のNGO・NPO論の授業では、授業開始時にくじ引きでその日の席を決め、3~5名の小グループで課題図書のレポートをシェアする「ワールドカフェ」形式でアクティブラーニングを実践し、受講生からは高い満足度を得ていた。

佐野氏がオンライン授業を導入した授業の概要。NGO・NPO論は毎年200~380名が受講する大規模授業だ。2019年までは、写真のようにくじ引きで作ったグループでディスカッションを行っていた。 佐野氏がオンライン授業を導入した授業の概要。NGO・NPO論は毎年200~380名が受講する大規模授業だ。2019年までは、写真のようにくじ引きで作ったグループでディスカッションを行っていた。
佐野氏がオンライン授業を導入した授業の概要。NGO・NPO論は毎年200~380名が受講する大規模授業だ。2019年までは、写真のようにくじ引きで作ったグループでディスカッションを行っていた。

 佐野氏は「積み重ねてきたアクティブラーニング形式を維持し、その効果を高めたい」として、多様なオンラインツールを組み合わせ、3つの工夫を行ったという。

 1つ目の工夫が、受講生が学習スタイルや状況に合わせて毎回授業形式を選べるようにしたこと。具体的には、Zoomを使った「リアルタイム双方向性型」、YouTube Liveの「リアルタイム動画配信型」、YouTubeによる「オンデマンド動画配信型」の3種類だ。

 佐野氏は「オンライン授業を開始するにあたりWebアンケートを行ったところ、スマホのみの学生もいれば自宅に光回線がある学生もいるなどネット環境も異なり、希望するオンライン授業の形式もさまざまだった。アンケートではオンデマンドを希望する声が多かったが、本来、アクティブラーニングでは対話型のリアルタイム形式が望ましかったため、リアルタイム双方向型と配信型、オンデマンド配信型の3種類を用意して好きなものに参加してもらう方式にした」と、その経緯を話した。

 2つ目の工夫として、「LINE OpenChat(オープンチャット)」「Facebookページ」「Dropbox」などの多様なツールを使い分け、授業時間以外にも情報共有とコミュニケーションの手段を用意した。

 まず、受講生との日常的なコミュニケーションを行う場として設けたのがLINEオープンチャットだ。参加は任意だったものの、LINEのアカウントさえあれば匿名で気軽に参加できることもあり、受講生の大半が参加したという。

 佐野氏は「レポートや成績評価については個別メールで対応していたが、同じような質問が多数届いたことから、オープンチャットに切り替えた。結果として、学生も聞きやすくなり、双方にとって良い結果になった。さらに、授業に関係のないキャリアについての質問などに答えたことがほかの学生にも参考になるなど、有効なツールだった」と、その利点を解説した。

Facebookページでは、学生に参加してほしいオンラインイベントなどの告知にも活用した。
Facebookページでは、学生に参加してほしいオンラインイベントなどの告知にも活用した。

 3つ目が、毎回授業後に感想フォームを設けたことだ。回答した受講生へ平常点を付与し、毎回の満足度や意見を収集することで、学生からの意見を迅速に取り入れ授業改善に役立てたという。このアンケートでは「Google フォーム」を活用した。

オンラインのメリットを活かした4つの工夫

 さらに、佐野氏はオンライン授業の工夫点について4つのポイントを挙げた。先に解説した「リアルタイム・オンデマンド併用の授業スタイル」「ツールを活用したコミュニケーション」に加えて、「ゲスト講義の公開オンライン授業」と「グラフィックファシリテーションの活用」を紹介した。

 NGO・NPO論では毎年多様なゲストによる講義を行っており、そのうちの一部は公開授業形式にし、学外の社会人なども受講できるようにしていた。本年度はオンラインで公開授業を実施し、「その強みを活かして、デンマークやアメリカからのゲストにも現地からオンラインで出演していただいた。さらに、Zoomのブレイクアウトルーム機能を使い、全国および海外からの一般参加者と、授業受講生が共に感想をシェアする場作りも行った」という。

2020年に実施したオンラインでのゲスト講義のプログラム。終了後、希望者はゲスト講師と交流する機会も設けた。
2020年に実施したオンラインでのゲスト講義のプログラム。終了後、希望者はゲスト講師と交流する機会も設けた。

 その際、質問ツールには「slido(スライド)」を使用した。slidoではスマホやパソコンからチャットのように質問を送り、参加者はほかの人の質問に「いいね」をつけることができる。そのため、講義に参加している人の関心の高い質問がどれか一目でわかり、参加者・講義者ともに使いやすいツールだ。

 次に、佐野氏は「グラフィックファシリテーション」を紹介。グラフィックファシリテーションは、対話を可視化することで場の活性化や相互理解を促す技術であり、従来は黒板に模造紙を貼るなどのアナログな手法で行っていた。2020年度はオンライン化にともない「Google Jamboard」を活用し、オンラインでも引き続き実施した。またグラフィックファシリテーションの技術を持つ大学院生やフリーランスの方に協力をお願いした。

ゲスト講義でもグラフィックファシリテーションを活用(作成:有廣悠乃氏)。「長い講義内容も、コンパクトに要点がまとめられていて良かった」と佐野氏。
ゲスト講義でもグラフィックファシリテーションを活用(作成:有廣悠乃氏)。「長い講義内容も、コンパクトに要点がまとめられていて良かった」と佐野氏。

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著者プロフィール

  • 相川 いずみ(アイカワ イズミ)

     教育ライター/編集者。パソコン週刊誌の編集を経て、現在はフリーランスとして、プログラミング教育やICT教育、中学受験、スマートトイ、育児などの分野を中心に、取材・執筆を行っている。また、渋谷区こどもテーブル「みらい区」を発足し、地域の子ども達に向けたプログラミング体験教室などを開催している。一児の...

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