EdTechZine(エドテックジン)

学習目的・対象者別

アマゾンが学生向けに無償提供する環境を利用して、クラウドの世界を楽しんで学べるロボコンが日本で初開催

  • ブックマーク
  • LINEで送る
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
2020/10/28 07:00

 9月15日に「AWS Robot Delivery Challenge」という高校生以上の学生を対象とした自律走行のロボットコンテスト(ロボコン)が開催された。AWS(Amazon Web Services)の名が示すとおり主催はアマゾン ウェブ サービス ジャパン。AWS Robot Delivery Challengeは、日本発の取り組みで今回が最初の開催となる。どんなイベントなのかを取材すると、ロボットプログラミングだけでなく、クラウドでのソフトウェア開発やクラウドサービス活用スキル、シミュレーション技術など、注目のクラウドエンジニアリングも身につく内容だった。

無人宅配カーをつくるコンテスト

 AWS Robot Delivery Challengeは、より実践的な車両の自律走行システムのアルゴリズムを競う競技だ。ロボットを一から自作する一般的なロボコンとは異なり、競技車両は「Turtlebot3 Burger」という主催者が用意した共通のハードウェアを利用する。制御プログラムは「AWS RoboMaker」(AWSのロボットアプリケーションソフトの開発と運用を支援するクラウドサービス)を使って各チームが開発する。

 参加者は、開発した制御プログラムをクラウド上のシミュレーターでデバッグ、調整していく。メカニカルな部分の学習・研究にはならないが、PCとネット環境があれば高価な開発環境やロボットハードウェアを購入する必要がないので、初心者でも参加しやすいのもこのコンテストの特徴だ。

 参加資格は高校・専門学校・高専・大学・大学院の学生であることと、AWS(アマゾンが提供するクラウドコンピューティングサービス)の教育プログラムである「AWS Educate」のアカウントを持つことだ。AWS Educateは学生と教員または教育機関が申し込むことが可能で、このコンテストの申し込み者には一律100ドル分のリソースが提供された。チームはこの範囲で、開発、シミュレーション、デバッグを行う。

 AWS Robot Delivery Challengeの名が示すとおり、街中の宅配ロボットの自律走行を想定している。ロボットを起動するとリモート操作は原則できない(オペレータがリモート操作したり、審判員がロボットの再起動などを行うとペナルティタイムが加算される)。ベースとなるマップは事前に与えられるが、カメラとセンサーの情報でコースをリアルタイムで認識して自律走行する。なお、マップは名古屋駅前の実際の地図を利用して作られたものだ。

競技コース

競技コース

 ミッションは、マップ上の4か所のチェックポイントで完全停止をして荷物の積み下ろしを(マーシャルが)行い、スタート地点に戻ってくること。コースは本戦前に発表され、コース上にはランダムに障害物(路上の駐車車両を想定)が設置される。壁への接触、転倒もペナルティが課せられる。競技は制限時間内の最速タイムを争う。

 予選・本選、決勝戦はすべてリモートで行われる。競技時は、遠隔地の会場とオンライン会議(Amazon Chime)でつなぎ、競技車両へのプログラムインストールや現場での調整もすべてオンラインおよびリモートとなる。

戦略とアルゴリズムのぶつかり合い

 15日に開催された本選は、全国118チームによる予選を勝ち抜いた12のチームが参加した。1チームずつ制限時間10分のタイムトライアルを行う。制限時間内なら何度でもリトライでき、その中のベストタイムが記録となる。上位5チームが決勝戦進出となり、ここでもう一度タイムトライアル(制限時間2分)を行う。決勝のベストタイムが優勝となる。

 競技コースのチェックポイントは決勝まで同じだが、障害物の位置はチーム出走ごとにランダムだ。競技中を含めてプログラムの入れ替え、パラメータの調整は任意だが、本番であまり大きな変更はリスクを伴う。チェックポイントの通過順序は決まっていないので、コース発表されたときにいかにルート設定(判断)をするかも勝敗に大きく関係する。最初にクリアしやすいチェックポイントを選ぶ、難しいところから攻める、とにかくいちばん遠いところを目指しもどりながらゴールを目指す、あるいはその逆、と戦略はさまざまで、アルゴリズムとコースの相性もかかわってくる。

決勝戦の模様(YouTube)

 10倍近い倍率を勝ち抜いただけあって、どのチームもなかなかの制御をみせてくれた。今回のコースでは、一番遠いチェックポイントから攻略するアルゴリズムが有利だったようだ。ラインどりは、直線をつなぐ動きより、先読みして曲線的にコーナーやカーブをクリアできる方が速い。タイムトライアルのため、チェックポイント間の移動で方向転換せずバックのまま進むロボットもあった。

 ロボットがフリーズしたりルートを完全にロストしたりするとタイムアウトで失格、記録が残らない可能性がある。そこで、タイムを残すため、あえて途中から遠隔操作でスタート地点に戻して再スタートさせるといった駆け引きも見ることができた。

 12チームのうち本選通過した5チームの決勝戦順位は以下のとおりだ。

  • 1位:千葉工業大学(1分34秒)
  • 2位:関西大学(1分39秒)
  • 3位:豊田工業高等専門学校(1分53秒)
  • 4位:慶應義塾大学(27分14秒)
  • 5位:宮崎大学(30分03秒)
決勝戦の結果タイム
決勝戦の結果タイム

  • ブックマーク
  • LINEで送る
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

著者プロフィール

  • 中尾 真二(ナカオ シンジ)

    フリーランスのライター、エディター。 アスキーの書籍編集から始まり、翻訳や執筆、取材などを紙、ウェブを問わずこなす。IT系が多いが、たまに自動車関連の媒体で執筆することもある。インターネット(とは当時は言わなかったが)はUUCPの頃から使っている。

おすすめ記事

All contents copyright © 2017 Shoeisha Co., Ltd. All rights reserved. ver.1.0