【ポイント その1】「ふりかえりのたまご」を使ってみる
オンライン授業を行ったあと、どのようにふりかえりを行えばいいのか。
井庭教授が今年実践したのは「ふりかえりのたまご」という方法だ。授業後、コメントシートなどを使ってふりかえりの文章を書く代わりに、卵型の円を使って「今日の授業で面白かったところ」を描く。井庭教授が考案した図法で、「部分の組み合わせ」ではない「全体からの本質思考を促す」ものだという。
「ふりかえりのたまご」で用意するものは、紙と筆記用具だけだ。A4サイズぐらいの白い紙と太いペンが望ましい。
まず紙に、卵のような縦長の楕円を描く。これが授業全体を表す。次に、授業の中で「一番面白かったことや発見的だったこと」を、大きな円の内側に黄身のような形で記入する。さらに、ほかのことについても、まわりの白身の部分に小さめの円をいくつか描いて付け足してもいい。
このとき注意したいのが、「最初から、同じようなサイズの円を複数描くことがないようにする」こと。「必ず1つ『自分はこれが最も良かったと思うもの』を決めること」が大切だという。
「ふりかえりのたまご」のメリット
- 授業全体をふりかえって、自分にとって重要なことをつかみ、表現することができる。
- 描いた「ふりかえりのたまご」の写真を撮って提出するだけなので簡単。
- 授業の内容を踏まえて描く(出ていないと描けない)ため、この提出が出席を取る代わりになる。
- 教員側にとっても、文章のレポートに比べて、パッと見ただけで要点がつかみやすい。
- 次回の授業で、提出された「ふりかえりのたまご」を使って、みんながどこに面白さを感じたのかを共有することができる。
- 授業のふりかえりだけでなく、文献を読む課題などでも応用できる。
「私たちはつい、『これとこれが良かった』といったように『特定の部分を寄せ集めた思考』になりがちだ。しかし『ふりかえりのたまご』は、自分が全体の中で感じたメインを1つだけ書くのがポイント。文献を読んでレポートなどを書く際も同様に、自分が面白いと感じながら読むことになり、そのあとに、自分にとって大切なことや面白かったところを内省して捉えることができる」(井庭教授)
井庭教授の場合は、授業の出席代わりの提出物として「ふりかえりのたまご」を、授業終了後1時間以内に出すことを課している。
「ふりかえりのたまご」は、小学校などでも使われ始めている。なお「ふりかえりのたまご」は、部分の積み重ねではなく、全体の中で「これがメインである」ということを特定し、それらをデザインしてつくっていくデザイン手法「全体性のたまご」から派生したものだ。
この「全体性のたまご」の方法は、もともとはワークショップのデザイン手法として井庭教授が考案したもの。ほかのバリエーションとしては、これからの未来(たとえば今週)における自分にとっての幸せを考えて描く「幸せのたまご」や、「自分らしさのたまご」や「成長のたまご」などがあり、子どもから大人まで親しまれ、実践されている。興味のある方は、詳しくは「わくわく博士とたまごちゃんの『幸せのたまご』note」や、「幸せたまご」の活用・実践を報告・紹介し合うFacebookグループなども、参考にしてみるといいだろう。