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コロナ禍で変わる学びの場――子どもたちが自主的に学び始めたオンライン朝の会

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2020/08/17 11:00

 今年3月2日から始まった突然の休校は、子どものいる多くの家庭に衝撃を与えた。そんな中生まれたのが、オンライン会議ツールの「Zoom」などを使って、全国の保護者有志が始めた「朝の会」や「ランチ会」だ。仲のいい友だち同士やクラスメイトなどを集めた小さな草の根の活動だが、オンラインで友だちと話せることに喜びを感じた子どもも多かった。そして、保護者が始めた朝の会から、子どもたちが自主的に学んだり、自ら先生となって友だちと教え合ったりするシーンも生まれたという。実際にどんな学びがあったのか、そしてどのようなファシリテーションがあったのか。全国で広がっていった保護者のオンラインの会から、子どもたちが自発的に学びを始めた2つの活動を紹介する。

パパママ先生や、子ども先生が誕生した「ランチ会」

 最初に紹介するのは、渋谷区の公立小学校に通う子どもがいる神薗まちこさん。ベネッセでICT教育サービスの「Classi」の立ち上げに携わり、2019年からは渋谷区議として活動している。区議になる以前から、一児の母として0~3歳の子どもがいる家庭向けのイベント「渋谷papamamaマルシェ」を開催するなど、子どもたちの教育や子育てをテーマに活動を続けてきた。

神薗まちこさん。子育てと教育を考える区議として、渋谷区の多くの保護者から支持されている。
神薗まちこさん。子育てと教育を考える区議として、渋谷区の多くの保護者から支持されている。

 そんな神薗さんだが、今回オンラインの会を企画したのは、仕事とは関係なく「いち保護者」としての行動だった。

 「休校で、子どもは保護者以外とほとんどコミュニケーションをとれない状態に置かれてしまいました。特に、一人っ子である小学2年生の娘は自分から連絡するツールもない状況でした。親も在宅ワークをしていたため、家族だけで過ごすことに限界を感じました。そこで、娘の友だち家族の皆さんにも相談して、オンラインでつなげてみようと企画を考えました」(神薗さん)

 比較的気軽に参加できるランチ時間に、友だちみんなと画面でつながったオンラインの「ランチルーム」を始めた。参加したのは、子どもの保育園時代からの友だち家族など15組ほど。遠方へ転校した友だちや、違う学校へ通っている友だちとも、オンラインだからこそつながることができた。

通常であれば、平日は毎日友だちといっしょに給食を食べている子どもたちにとって、オンラインのランチルームは楽しみの時間になった。
通常であれば、平日は毎日友だちといっしょに給食を食べている子どもたちにとって、オンラインのランチルームは楽しみの時間になった。

 ランチルームの開催には、もうひとつ「生活リズムをつくる」という大事な目的もあった。

 「午前中に学校の宿題や、やるべきことを終わらせて、その後ランチルームで楽しむ流れをつくりました。ルームは大人が基本的に関与せず、トラブル対応以外は放置。会話もなく食べるだけのときもあるし、子どもたちがクイズ大会やしりとりを提案し楽しんでいることもありました」(神薗さん)

 さらに神薗さんは、ランチルームとは別の午後の時間に「オンライン・ワークショップ」を4月からスタートした。週に2回、60分から90分ほどで、保護者または子どもが企画者となって、自分の得意なことや興味のあることを教え合うものだ。

 「自分たちができる範囲のものをやる」ということで、生物を研究しているお父さんの「煮干しを解体してスケッチしてみよう」といった企画から、子どもによる「チョコバナナスコーンをつくろう」などの料理や工作の企画まで、さまざまなワークショップが開催された。

子どもたちの兄弟も参加。小学5年生のお兄ちゃんが、空手教室を開催してくれた。
子どもたちの兄弟も参加。小学5年生のお兄ちゃんが、空手教室を開催してくれた。

 「ランチルームについては場を用意するだけで内容はノープラン。その分、ワークショップはしっかりと設計しました。自分たちが楽しくなるような内容で、いわば探究入門編とでも言うべきものを目指しました」と神薗さん。その際、大切にしたことは「『主催者と参加者』という立場ではなく、アイデアや企画をみんなで持ち寄り、全員が主催者という意識を持つ」ことだ。今回集まった15家族全員がそのことを認識し共感していたことも、活気のある会になった一因だろう。

 ワークショップについては、コミュニケーションのとりやすさを重視したため、1回を最大でも5人ほどの少人数制にし、希望者が多ければ複数回行った。ランチルームのメンバーでLINEグループを作成し、ここでワークショップの講座を告知したり、報告を行ったりした。

チョコバナナスコーンのワークショップの講師を務めた、小学2年生の神薗さんの娘さん。
チョコバナナスコーンのワークショップの講師を務めた、小学2年生の神薗さんの娘さん。

 ほかにも、皿まわしを自分でつくって実際にまわしてみたり、うどんを打ったりといった実技系のほか、クリエイティブ思考のフレームワーク体験、デザインの言語化、インタビュー記事の書き方など、大人による講座が11、子ども講師は9の講座が開催された。子どもの講師については、親がサポートしつつ行ったが、同じ講座を複数回開催した際は、2回目を1人で全部やってみた子もいたという。

 こうして、ランチタイムをオンラインでつなげることから始まった活動は、子どもだけでなく大人をも巻き込んだ、家族での学び合いに発展した。「人に何かを伝えたり教えたりすることの難しさ、オンラインならではのメリットやデメリットを、講師を体験した子どもたちは実感することができました。また、大人たちも自分自身の職業に関することや趣味を小学2年生に伝えるため、内容を分かりやすくしたり、かみ砕いて伝えたりする必要がありました。そのため、大人自身にとっても大きな学びになりましたし、その姿を見た子どもたちも『大人って面白いな! スゴイな!』と思ってくれたのではないかと感じています」と、神薗さんはその成果を話している。

神薗さんのご主人も、ワークショップの講師として参加。子どもにとっても、お父さんの違う一面を見ることができる機会となった。
神薗さんのご主人も、ワークショップの講師として参加。子どもにとっても、お父さんの違う一面を見ることができる機会となった。

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著者プロフィール

  • 相川 いずみ(アイカワ イズミ)

     教育ライター/編集者。パソコン週刊誌の編集を経て、現在はフリーランスとして、プログラミング教育やICT教育、中学受験、スマートトイ、育児などの分野を中心に、取材・執筆を行っている。また、渋谷区こどもテーブル「みらい区」を発足し、地域の子ども達に向けたプログラミング体験教室などを開催している。一児の...

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