3人に1台のタブレット端末を整備してきた経緯
熊本市では2018年からICT環境の充実に取り組み、セルラーモデルのiPadを各学校3人に1台分の割合で整備してきた。2019年度には全小学校92校で活用を開始し、この2020年度には全中学校42校での活用がスタートするところまできていた。
導入にあたっては教育委員会だけでなく地域の大学、企業と産官学の協力体制を作り、教員や管理職対象の研修を何段階も行い、各校が情報化推進チームを編成している。その過程で当初から明確にしていたのは、「ICT導入の目的は、『主体的・対話的で深い学び』のための授業改善」であるということだ。ICTを使い子ども自身が授業の主役になるよう、授業の形自体を変化させる必要があることが繰り返し伝えられてきた。これがICT活用の大切な原則となっている。
突然の休校にどう対応したか
全国一斉休校の要請が出たのは2月27日の夕刻だったが、熊本市ではそれ以前からいずれ休校への対応もありうると考え準備を進めていた。折しもその前日の2月26日に、一部の学校で授業支援アプリの「ロイロノート・スクール」とビデオ会議システムの「Zoom」を使った授業方法の検証を行っている。要請を受け、熊本市では3月2日より一斉休校が開始したが、それから間もなく3月9日には、全小学校の5年生と、8校の中学校の2年生が学校のiPadを持ち帰り、学年末までオンライン授業に活用した。
新年度を迎えても休校の継続が決定し、ここで全ての学校と学年でのオンライン授業の実施に舵を切る。家庭のデバイスと通信環境を活用してもらうことを前提にアンケート調査を行ったところ、おおむね3分の1の家庭に必要な環境がなかったため、学校のiPadを貸し出して対応した。実際には全ての学年に行き渡ったわけではなかったが、それでも活用度の高い学年からできる限り体制を整えた。
教員への研修をすぐに実施し、児童生徒には登校日を使って練習を行い、4月15日には全市立小中学校でオンライン授業をスタートさせる。ここまでのスピードが非常に速く、かつ、研修や練習を省かずに実施できたことに驚かされる。