目的や手法など、多様化が進む「動画による遠隔授業」
一般に動画による遠隔授業には、大別して、基本的な知識やスキルを繰り返しで漏れなく学べる「オンデマンド型」と、直接参加者と双方向でやり取りしながらスキルや知識を共有・深める「ライブ配信型」の2つが存在する。そして、それぞれの特徴を活かした手法にはさまざまなものがあるという。
栗谷氏は、「デジハリ・オンラインスクール」で「オンデマンド型」に課題提出を組み合わせた授業を担当するほか、「オンデマンド型」と教室の講義を「ライブ配信型」で組み合わせたり、デジハリ専門スクールの反転授業で「オンデマンド型」の動画を活用したり、「オンデマンド型」と教室での講義のメリットをそれぞれ組み合わせてブレンディッド・ラーニングの授業を実施したりしてきた。また、別の通信制大学においても、「オンデマンド型」授業での非常勤講師を務めている。
さらに、デジタルハリウッドの講義系の授業では、日ごろから事例の紹介や作品の共有・評価などに「ライブ配信型」を活用しており、トークセッションやイベントなどを「ライブ配信型」で行うこともあったという。
「動画による遠隔授業」といっても多彩であり、目的も異なれば、手法や使用する機器なども異なるというわけだ。
「オンデマンド型」授業のコツはシラバスと質問対応
デジタルハリウッドの「オンデマンド型」授業は、受講生に対して「ANY(エニー)」と呼ばれる学習管理システム(LMS:Learning Management System)を公開し、その中で実施している。受講コースごとに動画が格納されており、学生は自主的にそれらを閲覧して、ひも付けられたレポートを提出することで受講が完了する仕組みだ。
こうした動画閲覧による自主的な学習について、栗谷氏は「事前に学習回ごとの目的や狙いをまとめ、シラバスとして履修者に周知することが重要」と語る。また、学習における留意点や視点・観点などをドキュメント化して配布することもあるという。自発的な学びを継続させるために、ゴールを提示し、完走をイメージできるよう情報を提供しておく必要があるというわけだ。
そして、さらにもう1つのポイントとなるのが、「質問対応」だ。栗谷氏は「受講者側からの質問があって答える形のほうが学びの定着につながることが多い。そこで、最低限のFAQは「ANY」に掲載しておくが、基本的には学生から質問されたら回答するようにしている。特に『出そうな質問』に関してはあらかじめドキュメントを準備しておくことで、テンポを崩すことなく授業を行える」と語る。
リアルな場所での授業の場合、質問はその場で即時に解決できることが多い。しかし遠隔授業では、文字ベースで回答するため時間がかかり、テンポを崩したり、ほかの学生を待たせたりすることもある。そこで、準備しておいたドキュメントを提示することで、スムーズに回答するというわけだ。
さらに栗谷氏は「ドキュメントだけでなく、動画によるフォローも一考」と話す。「技術的なことは口頭やテキストで回答するよりも、自分の手元を動画で撮影して見せるほうがわかりやすく簡単。PowerPointやKeynoteに音声を入れる形でもいいし、Zoomの録画機能を使うのもいい。想像以上に簡単に動画を作成することができるので、試してほしい」と続ける。動画はアーカイブしておき、再利用することもできる。