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遠隔授業における動画教材の作成と効果的な活用のポイントとは? デジタルハリウッドの教員が語る

「eラーニング教材作成のためのTipsと授業での効果的な活用方法」レポート

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2020/06/26 07:00

 新型コロナウイルスの影響もあり、さまざまな教育の場面で遠隔授業が広く行われるようになってきた。しかし、特に大学など専門性が高い教育機関においては、独自性の高い授業が行われる傾向があり、その難しさが大きな課題となっている。そこでデジタルハリウッドでは、15年以上にわたる遠隔授業の教材開発と運用に基づく知見やノウハウを還元する場として、5月20日にウェビナーを開催。同社で教材の開発責任者を務め、専任助教として授業運営にも携わる石川大樹氏が、教材づくりの工夫や授業での活用のコツなどについて紹介した。

デジタルハリウッド株式会社 まなびメディア事業部 まなびメディアグループチーフ 教材開発責任者 インストラクショナルデザイナー/デジタルハリウッド大学大学院 専任助教 石川大樹氏
デジタルハリウッド株式会社 まなびメディア事業部 まなびメディアグループチーフ 教材開発責任者 インストラクショナルデザイナー/デジタルハリウッド大学大学院 専任助教 石川大樹氏

学生が集中して学べる動画教材制作の「3つのコツ+α」

 新型コロナウイルスの影響により、多くの教育機関が急速な変化を求められ、戸惑いの中にあるといっても過言ではないだろう。大きな負担を感じている教育関係者も多いと思われるが、石川氏は「今回のことをその場しのぎではなく、遠隔授業が終わったあと、リアルな授業でも活用できるような動画教材を作るための好機と捉えてほしい」と述べる。そして、「基本的に動画教材は『準備』『作成』『活用』の3ステップで構成されるが、いずれもちょっとしたコツや工夫をすることで、大きな成果につながる」と語った。

 まず「準備」については、動画の流れや仕立てを考えるのが重要だ。授業そのものをただ撮影するだけでも動画教材になりうるが、動画には動画の教え方があり、そのためには「授業を再構成する必要がある」という。その際のポイントとして石川氏は次の3点を挙げた。

その1:【話し方】動画には動画の話し方がある。

 空気感が伝わるリアルでの講義では理解できても、平面の動画を通すとわかりにくくなる。これを解決するのに重要なのは、「伝わったかどうか」のコンセンサスの醸成だ。聞き手が理解する前に話が進んでしまうと、聞き手に置き去り感が生じてしまう。この「置き去り感」を生まないためには、「7割程度のスピードでゆっくり話す」ことが大切だ。そして、時々「間」を置いて、相手の様子を窺うようにするといい。また重要な部分は強めに話したり、繰り返したりして強調する。ラジオでの話し方が参考になる。

その2:【動画の長さ】1コマ15分にまとめる。

 だらだらと長い動画を見せられると、受講者も集中力が続かずに飽きてしまう。そこで、1つの動画は15分以内にまとめることが重要だ。実際、テレビも15分ごとにCMが入り、学校の授業も1コマが15分を3~4回繰り返す考え方で成り立っている。集中力を15分間持続させたあとに少し休憩を入れると集中力が復活し、何回か繰り返すことができる。たとえば、長い授業でも一気に撮影するのではなく、15分刻みにすると、視聴者の集中力を損ねずに見せることが可能だという。

その3【要点の入れ方】要点は1本につき4つまで。

 15分単位の動画に「要点」を入れる場合は4つまでとする。長い動画に多くの要点が点在しているよりも、4点ずつ要点を盛り込んだ短い動画を何本か視聴するほうが、理解が進み、記憶にも残りやすい。たとえば電話番号なども一気に11桁の数字を覚えるよりも、3・4・4つの数字のブロックで区切ったほうが覚えやすい。各ブロックと全体でどのようなことを伝えるか、箇条書きにして「カンペ」としてまとめておくといいだろう。

 ほかにも、「学生を寝させない動画づくり」を意識し、次の工夫を行うといい。

  • 定期的に問いかけ、考えさせる。特に「あなたに」呼びかける雰囲気を作る。
  • あえて動画で完結せず、中途半端で終わらせる「ツァイガルニク効果」を取り入れる。
  • スライドはスマホで見ることを想定し、文字を少なく大きめに、画像を多く入れる。音声による解説に、適切なイメージ画像が付くと理解度が上がる。

撮影・配信環境の工夫とオススメ

 こうした動画作成のコツを意識しつつ、石川氏が実際の撮影で最も重視してるのが「手軽さ」だという。撮影の機材としては、カメラとマイクの機能が付いたノートパソコンを使う。デスクトップPCであれば外付けのカメラとマイクをセットする必要があるが、ノートパソコンに内蔵されたものでも十分に品質が担保できるという。できれば照明を用意して、逆光にならないように前から当てるとよいだろう。

 そして、映像の撮影ソフトについて石川氏は「OBS Studio」を勧める。無料ながら講義やツール演習など、あらゆる動画撮影に使える。画面を重ねられるため、スライドの上に教員の姿を登場させることもできる。しかし、ソフトのダウンロードなどが面倒な人は、スマートフォンのカメラでも十分だ。スライド資料を作れないのであれば、黒板への板書でも構わない。「一番大切なのは学生に届けること。撮影に凝る必要もなければ、一発撮りでも構わないし、編集する必要もない。気負わずお金をかけず、今持っている機材でまずは作成してみてほしい」と石川氏は強調した。

 撮影した動画を配信するには「やはり『YouTube』へのアップロードがいい」と石川氏。Webブラウザさえあれば、誰もがどこからでも閲覧できる。ただし重要なのは、クローズな環境で公開することだ。YouTubeにアップロードする際に「限定公開」を選定し、URLを公開したい学生にメールなどで伝えるいい。

YouTubeで授業の動画を配信するには「限定公開」とする
YouTubeで授業の動画を配信するには「限定公開」とする

 ここまでさまざまな動画教材の工夫について紹介されたが、「それでも全員を飽きさせないような動画を作るのは困難」と石川氏は語る。「いい動画を作る」ことにばかり注力するのではなく、どうすれば自発的な学びを獲得できるのか、想像し、設計することが重要だ。たとえば「動画で全部教えることを止めてみる」というのも手だという。問題とヒントだけにとどめ、あとは自由に学生自身で調べさせるということだ。

 そして、当然ながら「動画だけ」では難しいのが、理解レベルごとの対応だ。石川氏は、「基礎の動画は、ペースがゆっくりしている学生に合わせる。理解が早く、深い学生には別の課題を用意するべき」と語る。また、発表資料や教材動画を学生自身が作成するのも1つの手だ。教える学生側はさらに理解が深まり、視聴する学生側も、教員が作成した動画よりも熱心に見るという。

 石川氏は、「学生が自発的に学ぶためには『学びを自分ごとにすること』が大切。そのためには動画の品質や内容以上に、動画を授業でどう使うかを考える必要がある」と語る。たとえば、デッサンの授業をオンラインで教える際には、動画教材では基本的な描き方を教えるのみにとどめる。あとは実習の様子をカメラで撮影してもらい、画面を見ながら一人ひとりへの指導を行う。リアルの授業では、その指導の内容は周囲には聞こえないが、オンラインならば受講者全員で共有できる。そうしたリアルとは異なる要件を考えながら授業を組み立てるというわけだ。


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著者プロフィール

  • 伊藤 真美(イトウ マミ)

    エディター&ライター。児童書、雑誌や書籍、企業出版物、PRやプロモーションツールの制作などを経て独立。ライティング、コンテンツディレクションの他、広報PR・マーケティングのプランニングも行なう。

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