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直感的に作品をつくれる「Springin’」でプログラミング教育

小学校プログラミング教育は、のちのちの気づきのための種まき――「SOZO.Ed」山内佑輔先生インタビュー

直感的に作品をつくれる「Springin’」でプログラミング教育 第5回

 学校の先生や指導者の方に向けて、無料のビジュアルプログラミングアプリ「Springin’(スプリンギン)」を使ったプログラミング教育のアイデアやテーマを考える連載。前回に引き続き、今回もSpringin'を使ったプログラミングワークショップに取り組まれている「SOZO.Ed(ソウゾウエド)」副代表 山内佑輔先生のインタビューをお届けします。今回は教科横断型のプログラミング教育について伺いました。聞き手はSpringin’を開発する株式会社しくみデザインの中村俊介代表です。(編集部)

山内佑輔先生(左)と私、中村俊介(右)
山内佑輔先生(左)と私、中村俊介(右)

ツールでできることから教科に落とし込む

中村:前回は「図工にどうやってプログラミングを取り入れるか」といったお話を伺いました。創造的な表現のスキルとして、既存の画材に加えてプログラミングを取り入れること、そしてその題材には教科書に掲載されているテーマを用いれば良いという、すぐに実現できそうなアイデアに勇気づけられた先生方も多いと思います。そしてその中で、プログラミングを表現のスキルとして身につけることで、ほかの教科でも活かせるようになるお話も魅力的でした。

山内:クロスカリキュラムの指導案ってまだあまりないはずなんですよね。それってやっぱり「教科の単元を組み合わせる」視点が阻んでいるものが大きいと思っていて。だけど視点を変えて、Springin’のようなツールの視点に立って「こんなこともできる」「じゃあこれも一緒に学べるようにできるよね」といった感じで開けていくものもあるはずなんです。

 最近あるところで先生方向けのプログラミングに関する研修をしたんですけど、「教科から入る考え方をいったんやめましょう」って話をしたんですよ。先生方が楽しくならないと、おもしろいアイデアも浮かばないと思っているからです。その研修では「キュベット」を使いました。

 キュベットは木製のブロックを使ってロボットの動きをプログラミングするおもちゃなのですが、これがすごく成功したんですよね。タブレットもいらないし、すごくシンプルにロボットを動かすことができて、先生方がとても楽しんでくれたんですよ。そして先生方が楽しいものって絶対子どもたちにもやらせたくなる。そこから「じゃあこれを使ってどんなことを教えられるだろうか」となる流れが一番自然だと思うんです。教科は後付けでいいんじゃないかとすら考えていますね。

中村:なんでSpringin’を使ってくれなかったんですか(笑)?

山内:そのときはiPadが使えなかったからです(笑)。

遊び道具を自分でつくる

Springin’ワークショップの様子
Springin’ワークショップの様子

中村:前回はSpringin’で広がった表現のスキルを使って、調べ学習のまとめやお話づくりなどの展開例を示してくださいました。ほかに考えられる、クロスカリキュラムの題材ってありますか?

山内:「普段使える道具づくり」というのもおもしろいと思います。

中村:2019年の夏、福岡で開催していただいたSpringin’のワークショップを思い出します。ワークショップ会場の中に段差や画用紙、ビニールテープなど使った障害物コースをつくって、そのコースをiPadを持ちながらバランスをとって歩くことをしました。そしてバランスがとれているかを判定するアプリをSpringin’でプログラミングしたんですよね。

 Springin’ではiPadの加速度センサーが使えるので、iPadの傾きを用いたセンサーアプリを簡単につくれます。あれはまさに会場に集まった子どもたちが一緒に取り組むことによって成り立つ内容でしたね。

山内:参加者を4チームに分けて、みんなで取り組めるようにしたんです。会場のひな壇なども活用して、すごく楽しいワークショップになりました。あれは見ている自分も楽しかったですね。

ラインの上をバランス良く歩けているか判定中
ラインの上をバランス良く歩けているか判定中

 そしてこうした遊び道具はもちろんですが、普段使いできるツールを子どもたちにつくらせるのもいいですね。例えば当番決めをするときなどに使えるルーレットとか。今はじゃんけんやあみだくじを使っていると思うんですけど、それを「プログラミングで自分たちでつくった道具にしてみよう」というのは先生も子どもたちにとってもおもしろいはずです。

中村:ルーレットくらいならすぐにでもつくれますね。

山内大事なのは「すべてをプログラミングでやろう」としないことかもしれません。例えば授業ですごろくをつくるとき、それを全部Springin’でやろうとすると時間がかかってしまうこともあると思うんですよ。でもそういうときでも、「じゃあすごろくは模造紙の上に描いて、サイコロの代わりにSpringin’でつくったルーレットを使ってみよう」というのだったらできる。音を吹き込んだり、コマの指令に合わせて出る目を変えたり、デジタルならではの良さを活かすこともできますよね。

中村「誰かが使える道具をつくる」というのは、まさに学校で取り組むのに最適な課題ですね。前回先生がおっしゃっていた「みんなでやるから楽しいこと」そのものだし、近くに使ってくれる人がいることはモチベーションにもつながります。

山内:そうですね。学校でプログラミングに取り組む課題としてはすごく良い事例だと思うんですけど、教科の縦割りで考えてしまうとこういうアイデアって浮かばないと思うんです。そうではなくて「ルーレットづくりは楽しい」といったところから、学びに落とし込んでいくことが大事なんじゃないかなぁと考えています。

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先生も子どもも楽しくないとプログラミング教育じゃない!

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この記事の著者

中村 俊介(株式会社しくみデザイン 代表)(ナカムラ シュンスケ)

 株式会社しくみデザイン代表、クリエイティブ教育ラボ所長。  名古屋大学建築学科卒業後、九州芸術工科大学(現九州大学)にて博士号(芸術工学)を取得。AR楽器アプリKAGURAをはじめ、参加型サイネージや、ライブコンサートのリアルタイム映像演出等、数々の日本初を手がけており、アメリカ、スペイン、中国...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です


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