はじめに
こんにちは。中村俊介です。今回から2回に分けて山内佑輔先生へのインタビューをお届けします。山内先生は東京都にある新渡戸文化小学校で教鞭をとられる傍ら、東京を中心とした「ICT」「Creative」「Education」をキーワードに活動する先生方の研究会コミュニティ、「SOZO.Ed」の活動に副代表として携わっておられ、SOZO.Edの活動としてSpringin’を使ったワークショップなどを開催してくださっています。ワークショップの参加者は、子どもたちはもちろん、学校の先生や一般の社会人の方まで非常に幅が広く、そのワークショップのアイデアにいつも驚かされています。
この連載の目的はSpringin’を使ったプログラミング教育の手法をみなさんにシェアすること。ですから、これまでに書いてきたような使い方の具体的な解説だけでなく、Springin’を使ってくださっている先生にお話をお伺いし、その経験や具体的なアイデアもお伝えできたらとずっと考えていました。そこで、今回対談をお願いしたのが山内先生というわけです。先生方がプログラミング教育を楽しみながら取り組めるようになるような、元気が出てくるお話をたくさん聞けたので、ぜひ最後まで読んでみてください。
授業では「みんなでやるから楽しい」をやろう!
中村:まずは山内先生とSpringin’の出会いを聞かせてください。
山内:中村さんと初めてお会いしたのは2018年の3月でした。僕からしくみデザインさんに連絡をとって、ワークショップへの協力をお願いしたんです。そうしたら福岡から僕の当時の勤務校まで中村さんが打ち合わせに来てくれたんですよ。ただ、そのときにお話したのはSpringin’のことじゃなかったんですよね。しくみデザインさんのつくっているAR楽器「KAGURA」についてだったんです。
中村:そうでしたね。SOZO.Edさんの「未来の先生展2019」でのワークショップでは、KAGURAのワークショップも実施していただきましたね。
山内:当時の勤務校にはiPadがなくて。学校にあったのはWindowsタブレットだったんです。なのでWindowsタブレットで何かおもしろいことができないかな、と考えていました。その中で体の動きで音楽を演奏できるKAGURAを知って、これはおもしろそうと思ったんです。そしてその打ち合わせで、中村さんがデモを見せてくれたのがSpringin’だったんです。
中村:僕には山内先生はもう長くSpringin’を使ってくださっているイメージがあるんですが、まだ2年も経っていないんですね。それなのに、もう僕らから見ても完璧なSpringin’ワークショップを実施してくださっています。なぜSpringin’に継続的に取り組んでいただけているのかを聞かせてください。
山内:これはSpringin’に限ったことではないんですが、僕は授業やワークショップで「みんなでやるから楽しい」と思えることをやろうと常に考えています。そしてそういう場の設計をしたいんです。家で個人で没入できることであれば、それをあえて学校でやる意味ってあまりないと思っています。
そして「みんなでやるから楽しい」の「みんな」には、僕も含まれているんです。先生やファシリテーターも楽しく参加したいじゃないですか。そして先生やファシリテーターが燃えるのって、やっぱり参加者からいい反応が返ってきたときなんです。そしてSpringin’は、この参加者からの反応がすごくいい。
中村:具体的に聞かせてください。
山内:Springin’の導入として、しくみデザインさんは「コロコロゲーム」をつくるじゃないですか。あれがすごく好きなんです。マルくんを描いて、それに重力をかけて落としたり、マルくんが転がるようにしたりするんですけど、それを実行させたときの子どもたちの反応がすごくかわいいんですよ。あの顔を見るためにやっている感じがします。
導入で子どもたちの「つくりたい!」に火をつけることができれば、深めるところはそれぞれが前のめりで取り組んでくれる。そして参加者同士の関わりから、アイデアはどんどん広がっていきます。だから導入部分をどうするかをすごく考えていますね。そしてこの部分が僕自身が一番燃えるところでもあります。
そしてこの導入の部分を可能な限り短くすることにもこだわっています。初めて触る子どもたちに対しては、どうしても使い方の説明が必要になるんですね。ただそこで全部を説明するのではなく、子どもたちの関わり合いの中で、自分たちの力で消化していくような形をつくりたいと思っているんです。Springin’が好きな理由のひとつに、導入での説明部分を簡潔に終わらせられることがあります。熱量が溜まっている状況で子どもたちに手渡せるのはすごくいいですね。