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野球の課題をアプリで解決、学生たちのアイデアが集結!「パ・リーグ 学生ベースボールアプリ選手権」レポート

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2019/10/25 07:00

 9月28日、パシフィックリーグマーケティング株式会社(以下、PLM)は、中学生から大学生を対象にしたアプリコンペティション「パ・リーグ 学生ベースボールアプリ選手権」を開催した。テーマは「野球の課題解決」とし、開発に与えられた期間は約1カ月。具体的な課題設定は学生たちに任されており、課題の発見・解決へのアプローチ・開発まで、アプリ開発に関わる総合的な能力が試される。当日は、事前選考を突破した11人(個人・チーム混合9組)の学生たちが、開発したアプリを披露し、競い合った。

パシフィックリーグマーケティングがアプリ選手権を開催したわけ

 PLMは、「プロ野球界、スポーツ界の発展を通して、日本の社会全体を明るく元気にしていくこと」をミッションに、パ・リーグ6球団の共同出資で設立された会社。PLMは「スポーツビジネス業界の人材不足」を課題と捉えており、2028年までに「小学生のなりたい職業ランキング」で「スポーツビジネスパーソン」を9位にすることを目標としている。

 PLMの事業開発本部 事業開発部 シニアディレクターである森田鉄兵氏は、冒頭の開会あいさつで、「今は常にスマートフォンを携帯し、すぐに興味がある情報にアクセスできる時代。スマートフォンを通じて、さまざまなサービスを受けることができる一方で、プロ野球をはじめとするスポーツ界は時代の流れに追いついておらず、特にサービス開発を担えるIT人材が不足している状況にある。今回のアプリ選手権を通じて、スポーツ界をビジネスフィールドと認識し、将来活躍してくれる若い『人材』と、スマートフォンを仕事ではなく遊びの道具として触れ合ってきた世代の、新しい『アイデア』に出会いたい」と話した。

学生たちが野球の課題を提言、その解決策とは?

 発表は、持ち時間7分で学生たち自身が設定した野球の課題と開発したアプリを簡潔にプレゼンするピッチ形式で行われ、増原大輔氏(海城中学高等学校 非常勤講師/株式会社Z会 アドバイザー/GeekSalon 監修)、尾形太陽氏(株式会社ookami 代表取締役)、馬場保仁氏(株式会社ファリアー 代表取締役)、平山太朗氏(PLM CTO)、上妻裕史(パーソルキャリア株式会社 プラットフォーム事業本部 プロダクト本部 プロダクト開発統括部 プロダクト推進部)の5人が審査員を務めた。

誰でも簡単に野球の審判ができるように「野球審判HojoLens」

 最も会場の注目を集めたのは、安黒翔さん(東京理科大学 4年)が発表した野球の審判補助アプリ。安黒さんは、本格的な野球経験はないものの、小・中学生のころ、野球をする時に感じていた「ストライクゾーンの判定が難しい」という課題に着目。少年野球や草野球で審判を頼まれる一般の人向けに、ストライク判定を補助するツールが必要と考え、メガネ型VR機器の「HoloLens」を活用したアプリを開発した。

 審判の立ち位置で「HoloLens」を装着すると、仮想空間上にストライクゾーンが出現し、ホームベースが画像認識され、ゾーンの奥行きが決まる。さらに、仮想空間上で打者の肩から膝にゾーンの高さを調整することで、打者に合わせたストライクゾーンが完成する。投げられたボールが、ゾーンを通過するかどうかを判定する仕組みで、実際のデモンストレーションでは、見事ストライクとボールを判定した。

投球デモンストレーションではストライクとボールを判別
投球デモンストレーションではストライクとボールを判別
自由観覧時間に「野球審判HojoLens」を体験する参加者
自由観覧時間に「野球審判HojoLens」を体験する参加者

下積みアマチュア選手を応援するアプリ「SPOT!」

 大学を休学し起業を目指すチーム「Rain」の尾上寿明さん(法政大学 3年)と矢花俊晴さん(明治大学 2年)。尾上さんは中学まで野球をしていたが、治療のミスで握力をなくし、選手を諦めた過去を持つ。「その経験が大学でスポーツビジネスを学ぶきっかけになった」と話す。

 「Rain」が課題としてあげたのは、独立リーグ(※注1)で活躍する選手たちの待遇向上だ。彼らの平均月給は15万円ほど(シーズン中のみ支給、シーズン中のアルバイトは禁止)であり、遠征費・トレーニング費を自費で捻出する場合がある。

 開発したアプリ「SPOT!」は、独立リーグに所属するアマチュア選手が自分のファンクラブを運営できるプラットフォーム。ユーザーは、アプリの画面から「名前」「チーム」「出身地」「ポジション」「プレースタイル」などから応援したい選手を検索・選ぶことができる。選手側はファンから月額のファンクラブ会費を受け取る代わりに、生配信で直接メッセージを伝えたり、サイン入りグッズをプレゼントしたりすることで人気の獲得を目指す。

 「SPOT!」から安定的な支援を受けることで、選手はアルバイトで生活費を稼ぐ必要がなくなり野球に集中できる上、モチベーションの維持にも効果が期待できる。このアプリで「夢を追う野球選手に新たな可能性を提示したい」と熱い気持ちを語った。

※注1

 地域で作られた組織が独自に試合を開催している野球リーグ。当初、プロを目指す若者の育成が目的だったが、現在は元プロやベテラン選手の再挑戦の場に。独立リーグで下積みを経験し、ドラフト指名された選手は過去5年で40人。

自らの経験をもとに、野球部マネージャーが抱える課題に着目――球種判別アプリ

 唯一の女性参加者である奥山理奈さん(東京大学大学院 修士2年)が開発したのは、投球動画から球種を判別するアプリ「WINNING SHOT」。アプリ開発は未経験だったが、「野球×テクノロジー」という「人生における二大好きなもの」の組み合わせを見て、迷わず参加を決めた。

開発したアプリで球種判別のデモンストレーション
開発したアプリで球種判別のデモンストレーション

 奥山さんは、野球好きが高じて大学野球部のマネージャーを経験。マネージャーの仕事で試合中にスコアブックを書く際「球種を判別することが難しかった」と話し、自らの経験をもとに野球部を支えるマネージャーの課題に着目した。このアプリを使うことで、マネージャーの負担を軽減しつつ正確な球種判別を行えるようになる。また、打者対策、投手対策にも役立つという。

 操作方法は、アプリを起動し、投手後方から動画を撮影するだけ。ボールの軌道などから自動で球種が判別される。

 アプリ開発では、「AIに学習させる教師データとして、多くの投球動画を取り込む必要があり、その動画の整理・仕分けの作業に最も時間がかかった」と開発の苦労を語った。

プロ野球観戦がもっと面白くなる機会を創出――打撃結果を予想するゲームアプリ

 鈴木雄太郎さん(筑波大学大学院 博士前期課程1年)と大倉瑠維さん(筑波大学大学院 博士前期課程1年)は、筑波大学準硬式野球部のチームメイト。アプリ選手権にはチーム「つくばエクスプレス」として参加。特に鈴木さんは、「野球とテクノロジーをつなげるために今の学部に進んだ」と、アプリ選手権への並々ならぬ意気込みを見せる。

 野球経験豊富な「つくばエクスプレス」の2人は、野球観戦における一番の面白さは「投手と打者の駆け引き」にあるとし、野球を観戦しながら打球方向と打撃結果を当てるクイズに正解することでレベルを上げていくゲームアプリ「熱狂!プロ野球」を開発した。

 投手と打者の対戦が始まる時に、実際の中継動画とともに投手の防御率、勝敗成績と打者の試合数、打率、本塁打数などの情報を表示。また、アウトカウントや走者の位置も確認できるようになっており、どこに打球を飛ばすべきかを含め、総合的に予想。打球方向と打撃結果を選択し、応援しながら結果を待つ。予想が当たるとユーザーレベルが向上していく仕組みで、アプリ上では利用者のランキングを確認することができる。

アプリを使って予想の設定方法をデモンストレーション
アプリを使って予想の設定方法をデモンストレーション

 「投手と打者の駆け引き」は、野球に詳しい人や野球経験者には理解される一方で、初めて野球観戦をする人には理解しづらい。「ゲームアプリにすることで『駆け引きの面白さ』を体験する機会を創出し、より多くの人に野球の面白さを知ってもらいたい」と語った。

 「つくばエクスプレス」は、アプリのユーザーインターフェースだけでなく、サービス提供者に必要な管理画面なども整備し、限りある開発期間の中で、1つのサービスとして成立しうる段階まで作りきった。審査員からは、アメリカやヨーロッパで人気のファンタジースポーツ(※2)につながる展望を打ち出した将来性のある発想が評価され、見事準優勝を獲得した。

※注2

 現実世界の選手の結果により、自分で選手を選んだ架空のチームのポイントが連動するゲーム。

 そのほか、ファン同士の交流を活性化するアプリや、選手・球場などのデータを用いて、観客へ見どころを提案するアプリが発表され、審査員の鋭い質問が飛んだ。


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著者プロフィール

  • EdTechZine編集部(エドテックジンヘンシュウブ)

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