課題は高等教育と企業実務をつなぐカリキュラム
2020年、小学校におけるプログラミング教育必修化が正式にスタートする。小学生のころから、プログラミングの基本的な概念、論理的思考を身に着け、21世紀型スキルとも呼ばれる分析力や課題解決能力を高めるという狙いがある。
小学生に対する取り組みが始まったばかりだが、現在、その次のレベルの教育、つまり中学校、高等学校におけるプログラミング教育や情報系の学習をどうするかが手つかずの状態だ。せっかく小学校でプログラミングの基礎を学んで、コンピュータやITに興味を持ったとしても、それをフォローする仕組みが中学、高校にまだない。
政府がIT人材、セキュリティ人材、AI人材が不足すると騒ぎ、産業界からは高等教育で使える人材が育っていないという声があがっている。高等教育が職業訓練であることが正しいのかという議論はあるが、小学生にコンピュータサイエンスを教える機会が、正式なカリキュラムとして組み込まれるのに、その後をフォローする政策や仕組みが存在しないのは、いかにももったいない。社会的損実でもある。
間を埋める民間スクール
小学校のプログラミング教育と大学までの間を埋める取り組みについては、現状では民間のプログラミングスクールや通信講座などが選択肢となる。また、このようなニーズは、リカレント教育、キャリアアップやジョブチェンジを考えている社会人にもあり、社会人向けのスクールも増えている。
これらのスクールの特徴は、学習指導要領がいうプログラミング教育の先の受け皿として、中学生以上にニーズの高いゲーム開発やアプリ開発に特化したもの、IT系への就職、転職を考える20代、30代向けのJavaやPythonといったプログラミング言語を学ぶものが多い。
バンタンが来年開校するというVANTAN TECHFORD ACADEMYは、プログラミングの座学・演習に加え、企業と連携したプロジェクト型学習が特徴となる。課題となるプロジェクトは、実際の企業の商品企画だったり、自治体が実際に抱える問題を解決するプロジェクトだったりする。講師陣も、すべて現職のエンジニアやプロジェクトマネージャーだと言う。
企業の内製化に対応できる人材を育てる
バンタンは服飾からパティシエなど幅広くデザイナーや職人を育てているスクールだが、今回、なぜ高等プログラミング教育やプロジェクトマネージャー育成事業に乗り出すのか。その背景について、バンタン代表取締役会長 石川広己氏は次のように説明する。
石川氏によれば、日本においてIT人材の不足が叫ばれているが、そのほとんどがシステム構築企業(SIer)のSE(システムエンジニア)であると言う。そのため受託開発が多いのも特徴だと言う。しかし、グローバルに目を向けるとこれは日本特有の事情であり、海外では一般企業で、自社システムを開発・構築するエンジニアが多い。そして、社内で開発プロジェクトを動かすプロジェクトマネージャー(PM)が重要な職能となっている。
また、エンジニアを採用する企業においても、情報系のみの専門知識だけでなく、マネジメント能力を評価する傾向がある。システム部門の採用、求人だからといって理系・文系にこだわらず採用するところが少なくない。