大学入試改革を見据え、iPadを生徒1人に1台導入
宝仙学園の歴史は古く、1927年に感応幼稚園(現・宝仙学園幼稚園)が創設されたことから始まる。その翌年の1928年に中野高等女学校(現・宝仙学園中学・高等学校)が設立された。女子校だった宝仙学園に共学部(理数インター)ができたのは2007年。2014年より共学部は中高一貫校として教育が行われている。
宝仙学園中学校では、昨年から生徒1人に1台のiPadを導入し、授業が行われている。
「1、2年生にはiPadを3年間のレンタルという形で学校から支給しています。今の3年生はまだその仕組みがなかったので、学校の備品として1人1台のiPadを用意し、授業で必要に応じて使用する方法を採用しています」
對馬先生が宝仙学園に赴任したのは、今から3年前の2016年。当時から、教員へのiPadの導入は決まっていたという。だが、学校には使い方に詳しい人が決して多くなく、用途、目的が定まっていなかった。せっかく教員にiPadを導入するのであれば、これを機に「自分が授業を受け持つクラスの生徒全員にも導入することを提案した」と對馬先生は明かす。その背景には大学入試改革がある。英語では4技能(読む・聞く・話す・書く)を総合的に評価することが謳われていた。
「大学入学者選抜試験は約50万人もの人が受験します。スピーキング技能を評価する試験を実施するのであれば、タブレットやコンピューターを使う試験しかあり得ません。そこで生徒にいち早く、機械に話しかける練習をさせることが得策だろうと考えました」
では、実際にどのような形でiPadが活用されているのだろうか。今回は中学2年生の授業を見学させてもらった。
生徒が主役のスタイル、グループワーク中心の授業も
授業が始まると、紙の小テストが配られる。見学したクラスは特進クラスだったので、小テストといっても高校生レベルの問題が出題されているという。配られるとみんな黙々と取りかかる。テスト時間は10分弱。終了後は生徒自身が採点するのだが、ここに對馬先生の授業のポイントが盛り込まれている。
テストが終わると生徒は4~6人の班を作る。そして、グループのメンバー同士で答え合わせをする。對馬先生はその間、各グループを回り、間違いが多そうなところをチェックした上で、iPadと教室のモニターを用いながら解説する授業スタイルだ。
「授業の主役は生徒であるはずです。生徒にスポットライトを当てる授業をするにはどうすればいいか。教員はあまり話さない方がいいと考えるようになりました。私の授業は子どもたちに考えさせる授業。生徒同士で教え合って『あっ、そっか』という声を聞くときが一番好きですね」
その後はいよいよ生徒のiPadが登場。スタディサプリENGLISHの「日常英会話コース」を使い、それぞれ自主学習的に取り組む。
スタディサプリENGLISHを授業中に使用するのは月1回ほど。「授業ではあくまで補助的に使用し、主に自宅で宿題として取り組んでもらうことが多いです」と對馬先生は話す。なお、大学受験により近い中学3年生のクラスではスタディサプリENGLISHの「英語4技能コース」を受講しているとのことだ。
このようにスタディサプリENGLISHは違和感なく生徒の学習に組み込まれているように見える。それでも「工夫なしで浸透させるのは難しい」のだという。
「スタディサプリENGLISHは主に自宅での学習に用いられているため、『今週はここまでやりましょう』と、週に1回アナウンスしています。そうしなければ、英語が好きな生徒以外はなかなかやる気になりません。また、進捗ランキングを廊下に掲示しています。ランキングで上位に入ると、やはりモチベーションアップになりますね」