講義後の復習ツールに「シンプラZ」を導入、手軽に取り組めて実施率100%に
一般的に、大学では講義後の復習は学生の自主性に委ねられていることが多い。さらに大教室で行われる講義の場合、人数が多く、教諭側が学生の復習状況を個別に把握することは難しい。九州大学では、eラーニングプラットフォームの「Moodle(ムードル)」を始め、教育分野でのICT活用が盛んであったが、九州大学の岡村耕二教授は「より効果的・効率的に復習を行う機会を創出し、状況を把握したい」という課題感を持ち、解決するための学習ツールを探していたという。
「2016年夏ごろに、某ICTコミュニティで『シンプラZ』の存在を知りました。テストユーザーを探していると言われていたので、手を挙げてまずは試験的に導入することを決めました」と、その出会いを語る。
「シンプラZ」は、ゲーム感覚で取り組めるクラウド型教育サービスだ。キャラクターが登場して4択から選ぶという仕様のため、手軽で親しみやすい。PCはもちろん、モバイル端末からでも実行できる。より多くの学生に活用してもらう効果を期待して試験運用を開始した。
まず、2016年にテスト導入した際の利用者は約200名。初めのころは授業直後の小テストとして「シンプラZ」に取り組んでもらい、さまざまなフィードバックを受けた。ほとんどの学生が、「問題そのものは変わらないにも関わらず、キャラクターが出てきて楽しい気分でテストを受けられた」と評価したそうだ。
そして、コンテンツの調整を行った後、2017年から必須になったサイバーセキュリティ基礎の講義で2600人の学生に対して実施した。8週のうち、「個人情報保護」と「研究倫理」を学ぶ2週について、復習ということで、授業後17時から翌朝8時までの間に「シンプラZ」の小テストをパソコンまたはモバイル端末から受けられるようにした。スマホを利用した学生が多く、「気軽にできた」「やりやすい」と評価しており、2016年のテスト導入時と同様、「キャラクターが出てきて親しみやすく、気分が変わってよい」とする学生がほとんどだったという。
「学生との親和性が高いスマホに対応しているということで、バスを待つ間や起きる直前のベッドの中など、ちょっとした隙間時間に手を動かして勉強することができると好評でした。そのため、導入後は復習課題に対する学生側のハードルが下がり、ほぼ全員が忘れることなく復習課題に取り組むようになりました。また、その進捗をリアルタイムで把握できるので大変実感がありました」(岡村教授)
Moodle ICT プラットフォームとの連携で、実施状況をシームレスにデータベースに統合
「シンプラZ」導入に際しては、ゲームといえども教材ということで既設のeラーニングシステムと特に学生の評点管理を統一する必要があり、九州大学に既存で導入されているMoodle ICTプラットフォームとの連携が必要だった。そこで、NANAROQは、Moodleの開発・管理を手がけるこだまリサーチと共同でMoodleと「シンプラZ」を連携させるためのMoodle用プラグインを開発し「シンプラZ」の導入を行ったという。
「もっとも面倒なのは認証の部分でした。Moodle上の九州大学固有のアカウント管理と連携させる必要がありながら、たとえ第三者機関であっても企業のシステムにその情報を取り込むことは認められていません。そこで、UIDをあるルールで符号化して個別で識別し、それをMoodle上で連携させて学籍番号へと変換するという機能を実装させて、IDの共有化を図りました」(岡村教授)
さらに2016年まではエンコードした評点テーブルを手動で扱う必要があったが、2017年にはデータベースに直接点数を記入するところまでがMoodle用プラグインにより自動化され、スムーズなデータ連携が可能になった。学生はMoodleにログインすれば「シンプラZ」のコンテンツが利用できるが、そこで入力したデータは「シンプラZ」内で処理され、すべての結果がMoodleの成績データベースに格納される。前述のとおり、シンプラZ側では学生の識別情報が符号化されているため、Moodleからのみ学生の成績を照合できるというわけだ。
今回開発されたMoodle用プラグインは、Moodleの基本的なフレームワークについては一切の変更を行っていないので、通常のMoodle環境を有している多数の大学で、そのまま採用することが可能である。次の目算としては、大学をはじめとした高度教育機関でのフェデレーション認証のスタンダードである「学認(Shibbboleth)」に対応させることも計画されている。
「学習管理システムとの連携は、教育の現場での業務効率化に大きな意味があります。これまで煩雑だった作業を効率化することで、もっと分かりやすい授業の組み立てを考えたり、コンテンツを考えたり、教育の本質の部分に注力できるでしょう。さらに、そうしたデータベースを活用することで、授業の見直しや個人対応など、新しい価値を生み出す起点にもなりうると感じています」(岡村教授)