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EdTechZineオンラインセミナーは、ICTで変わりつつある教育のさまざまな課題や動向にフォーカスし、最新情報をお届けしているWebメディア「EdTechZine(エドテックジン)」が主催する読者向けイベントです。現場の最前線で活躍されているゲストの方をお招きし、日々の教育実践のヒントとなるような内容を、講演とディスカッションを通してお伝えしていきます。

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高度人材育成事例(プログラミング教育)

実生活とIT教育の理想との乖離、プログラミングの前に育むべき道徳心

生き生きとテクノロジーを学ぶ放課後――テックパーク運営の佐々木久美子氏インタビュー(後編)


 子どもたちが、それぞれの個性に合わせてテクノロジーを楽しむ場――。そんなキャッチコピーを掲げるのは、福岡市天神にあるITに特化したアフタースクール、TECH PARK(テックパーク)だ。2016年にこれを事業として立ち上げ、今後も拡大と進化を目指すグルーヴノーツの会長 佐々木久美子氏に話を伺った。後編の今回は、設立の経緯や今後のIT教育について詳しく語っていただいた部分を紹介する。

前編はこちら

母親の「申し訳ない」をなくしたかった

――テックパーク設立に至った経緯やきっかけを教えていただけますか。

 佐々木久美子氏(以下、佐々木):自分が子どもを預けたいと思える場所がなかったのが一番のきっかけです。私はずっとエンジニアとして働いていましたが、自分の上の子が小さかったときから、下の子が小学校3年生になった今まで、この15~20年近く状況は何も変わらなかった。国や行政の動きを待つより、自分で作った方が早いと思いました。

 それから、保護者の抱く「預けている罪悪感」を取りたい気持ちが強かった。「預ける」って、仕事を休んだり早退したりして子どもを迎えに行くと会社に申し訳ないし、子どもにも申し訳ないんですよ。それで、放課後にぼーっとゲームをするだけの場所、居場所の確保のための場所というのではなくて、将来につながることを楽しみながらやってもらえる場所だったら、預けている罪悪感がなくなるかなと思いました。親が安心するためには、子どもが楽しく学んでいるか、子どもがちゃんと成長しているかが重要なので。そんな環境づくりを、せめてうちの会社ではやれたらいいなぁっていうのが、最初の発想です。

――具体的に事業として考え始めたのはいつごろですか。

 佐々木:具体的な構想を抱いたのは、5年前ですね。それ以前には、グーグルとかアップルが学校を持っているように、会社の中で預かって……といったぼんやりとしたイメージだけがありました。最初は、「社員のために」っていう発想だったので。

 具体的に動こうと思ったときに、昔から知り合いだった西鉄さんに、場所を貸してくださいと頼みました。空いているスペースあるでしょ、と。ですが逆に「空いている場所はないけど、このビルを建てるからそこでやって」と言われてしまったんです。テックパークを作ることを条件に、グルーヴノーツごとビルに入りませんか、と。最初は、うちはベンチャーでそんなに大きな規模でもないので、と断りましたが、前のオフィスがちょっと手狭になるのが2年後の予定だったんですよ。そうなると、どっちみち引っ越さなきゃいけない。いいタイミングだと思って、思い切って会社ごと移転、事業化してスタートする形になりました。

――ビジネスとしては回っているんでしょうか?

 佐々木:いや、そんなに回っていないです。黒字が出ているかというとそんなに出てはいないです。ただし、事業としてやるから回る、という感じですね。家賃と人件費だけなので。トントンにするためには人を増やさなきゃいけないんでしょうけれども、それでクオリティーが下がることを私は懸念していて。やっぱり、コンピュータが好きな子に来てもらって、一人ひとりにちゃんと学んでほしいんです。

「あいさつ」か「コンピュータ」か? 両親たちの理想の乖離(かいり)

――運営して初めて分かったことや意外な発見はありますか?

 佐々木:最初のころは、ご家庭のお父さんとお母さんの持っている理想の違いに戸惑うこともありました。例えば、母親は基本的な生活の話……コンピュータじゃなくて、人間として基礎的なことをできるようになってほしいと考えている。あいさつができる、「ごめんなさい」や「ありがとう」を言える、といったことが大事だと。コンピュータの前にやることやれ、みたいな。一方で、父親としてはコンピュータのスキルをもっと上げてほしいと思っている。そんな、生活の部分と ITとの理想の乖離(かいり)っていうんですかね。その間に挟まれていると感じることはありました。

 それともう1つは、1年生から6年生までお預かりしている中で、私たちはこれが当たり前にできると思っていたことが、実は低学年の子たちには難しすぎてできない、といった、学力のレベルを把握できていないことがありました。例えば、そもそも漢字を習ってない、そもそも足し算、掛け算を習っていないとか。私たちは知っていて当たり前のことが、学年によって知らない。だからこれも当たり前なんですが、ローマ字を知らないんです。つまりタイピングもできない。「あ、そこから」っていう発見はかなり多かったです。

 それから、子どものコンピュータにおける一定の動きを制御するペアレントモード。ある作業をしようとすると、必ずセキュリティーがかかることもしょっちゅうでした。家庭とこちらとで、そういったリテラシーに対する考え方の違いは、すごく感じます。最初はそれに気付けずに、「えっ!」と思っていました。今は、コンピュータの作業上必要なことを、最初に必ず親御さんに伝えるようにしています。

子どもが楽しく学んでいることが、親の安心につながると佐々木氏は話す
子どもが楽しく学んでいることが、親の安心につながると佐々木氏は話す

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プログラミングの前に教えるべき道徳心

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この記事の著者

斉木 崇(編集部)(サイキ タカシ)

株式会社翔泳社 ProductZine編集長。 1978年生まれ。早稲田大学大学院理工学研究科(建築学専門分野)を卒業後、IT入門書系の出版社を経て、2005年に翔泳社へ入社。ソフトウェア開発専門のオンラインメディア「CodeZine(コードジン)」の企画・運営を2005年6月の正式オープン以...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です


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