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特集記事(海外動向)

いま、日本で国際バカロレア(IB)が注目される理由とは――生徒の「思考力」を鍛え、一流の社会人を育むプロセスを経験者が解説(前編)

 今後の国際社会で通用する人間を育てる教育プログラムとして、日本でも国際バカロレア(IB)への注目が急速に高まっています。本連載では、英語塾キャタルのバイリンガル教師として活躍するIB経験者2名が、「IBとは具体的にどのようなプログラムなのか」「IBの授業を通してどういったスキルが身につくのか」という内容を前編・後編に分けて解説します。

 1人目のIB経験者Mさんは、イギリス在住時に国際的なディプロマ(高等教育機関が発行する特定の課程を修了したことを証明する書類)である国際バカロレア(IB)と出会い、海外の大学への進学にも役立つとのことで、履修を決めました。その選択は今でも自信を持って正解だったと考えており、世界を目指す若者たちへ受講を勧めています。

国際バカロレアの成績評価は6つの科目群と3つの必修要件

 Mです。単刀直入に申し上げます。生徒を海外の大学へ進学させたいのなら、一流の社会人に育てたいのなら、国際バカロレアを受けさせるべきでしょう。

 上記の大胆とも思われるコメントにはれっきとした根拠があります。それは、国際バカロレアが価値を置いている下記10個の人間性が、一流の社会人に必要となる素質と同じだからです。

  • 学習し続ける人
  • 知識のある人
  • 考える人
  • コミュニケーションができる人
  • 信念を持つ人
  • さまざまな価値観を受け止められる人
  • 思いやりのある人
  • 挑戦する人
  • 人生のバランスが取れている人
  • 振り返りができる人

 国際バカロレアを修了することで、これらの素質が身につくようにカリキュラムを組んでいるので、世界中どこへ行っても通用するような、一流の社会人を育成する準備段階としての価値があるといえるのです。

 そのことを理解し、50年前から教育の理想像として掲げてきた国際バカロレアは、素晴らしいディプロマだといわざるを得ません。

日本でのIB認定、200校を目指すものの72校止まり

 国際バカロレア(International Baccalaureate、通称IB)は1968年、スイスのジュネーブで設立されたIB機構が提供する国際的なプログラムです。当初はスイスのインターナショナル・スクールにおいてのみ導入されていました。文部科学省によると、「チャレンジに満ちた総合的な教育プログラムとして、世界の複雑さを理解して、そのことに対処できる生徒を育成し、生徒に対し、未来へ責任ある行動をとるための態度とスキルを身につけさせるとともに、国際的に通用する大学入学資格(国際バカロレア資格)を与え、大学進学へのルートを確保することを目的」としています。現在、世界の4500校以上でディプロマプログラムが実施され、1800以上の大学でIBを使用した入学審査システムが導入されており、今後も導入校は増える傾向にあります(IBを審査システムに取り入れている海外の大学リスト)。

 さらに、取得が難儀とされていることもあり、ディプロマ取得者は海外でも上位の大学に進学する傾向があります。例えば、2014年度の国際バカロレア日本アドバイザリー委員会報告書によると、イギリスでは、大学入学資格として認められているA level取得者に比べてIB取得者が国内トップ20校に進学する割合が多くなっています。また、米国学生2000人をサンプルとした調査では、IB取得者のSATスコアの平均点は米国学生全体の平均点を約500点上回り、米国主要大学への合格率も最大で43%高くなっています。このように、海外の大学、特に主要校への進学を考える際にはIBを取得することが大きな近道になります。

 さて、日本でのIBの導入状況はどうなっているのでしょうか。2018年までには認定校を200校に増やすことが2013年に発表されましたが、2019年3月の時点で日本の認定校は72校に留まっています。導入が難しい要因の一つとして授業、試験がすべて英語、スペイン語またはフランス語で行われるという点がありますが、その難易度を緩和するために、一部の授業を除き多くの授業を日本語で行う日本語DPという特別プログラムが2015年から発足しています。このように、日本政府もIBプログラムの普及と推進を行っているため、今後IBを用いて海外の大学へ進学する学生も増えていくと考えられます(Find an IB World School)。

候補校や複数プログラムの実施校などを加味した日本のIB導入校は138校(2019年4月時点、文部科学省IB教育推進コンソーシアムのサイトより)
候補校や複数プログラムの実施校などを加味した日本のIB導入校は138校
(2019年3月時点、文部科学省IB教育推進コンソーシアムのサイトより)

6つのIB履修科目と採点方法

 IBディプロマは45点満点で採点されますが、その内訳として7点満点の教科が6科目(標準レベル(SL)と上級レベル (HL)を3科目ずつ)と、カリキュラムの中核となる3つの必修要件を並行して履修することになります。以下は、文部科学省のWebサイト「国際バカロレアのプログラム」から抜粋した履修プログラムの概要を記した表です。

表1 国際バカロレア履修科目リスト
グループ名 科目例
1.言語と文学(母国語) 言語A:文学、言語A:言語と文化、文学と演劇(※)
2.言語習得(外国語) 言語B、初級語学
3.個人と社会 ビジネス、経済、地理、グローバル政治、歴史、心理学、環境システム社会(※)、情報テクノロジーとグローバル社会、哲学、社会・文化人類学、世界の宗教
4.理科 生物、化学、物理、デザインテクノロジー、環境システムと社会(※)、コンピュータ科学、スポーツ・運動・健康科学
5.数学 数学スタディーズ、数学SL、数学HL、数学FHL
6.芸術※ 音楽、美術、ダンス、フィルム、文学と演劇(※)

(※) なお、「文学と演劇」はグループ1と6の横断科目。「環境システムと社会」はグループ3と4の横断科目。また、「世界の宗教」および「スポーツ・運動・健康科学」はSLのみ。

必修要件:

・課題論文(EE: Extended Essay)
履修科目に関連した研究分野について個人研究に取り組み、研究成果を4,000語(日本語の場合は8,000字)の論文にまとめる。

・知の理論(TOK: Theory of Knowledge)
「知識の本質」について考え、「知識に関する主張」を分析し、知識の構築に関する問いを探求する。批判的思考を培い、生徒が自分なりのものの見方や、他人との違いを自覚できるよう促す。最低100時間の学習。

・創造性・活動・奉仕(CAS: Creativity/Action/Service)
創造的思考を伴う芸術などの活動、身体的活動、無報酬での自発的な交流活動といった体験的な学習に取り組む。

 必修要件に関して、CASは評価項目に含まず、TOKとEEの評価結果の組み合わせで最大3点が付与されます。これらの科目をすべて落第せずに履修し、合格することで初めてIBディプロマが与えられるのです。

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なぜ?を繰り返し、深く分析する力が求められる授業

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この記事の著者

英語塾キャタル(エイゴジュクキャタル)

 小学3年生~高校3年生のための4技能型英語塾。慶應義塾ニューヨーク学院への合格者実績日本一など、これまでに多くの子どもたちがバイリンガルの学習法で英語4技能を身につけた。有名大学のバイリンガル教師にはIB資格取得者も多数在籍する。  代表取締役社長 三石郷史氏は、英語に苦労した経験から「小中高生...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です


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