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音楽と数学、コンピューターサイエンスの関係性とは? プログラミング学習ツール「Music Blocks」の開発者インタビュー

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2019/05/29 07:00

 「Music Blocks(ミュージック・ブロックス)」は、音楽と数学(算数)の要素を併せ持つアメリカ生まれのプログラミングツールだ。ドラッグ&ドロップの操作と数値入力で、音楽やキャラクターの軌跡をプログラミングできる。MITメディアラボの元所長であるワルター・ベンダー(Walter Bender)氏とギタリストでニューイングランド音楽院ギター科長のデビン・ウリバリ(Devin Ulibarri)氏によって開発された。2018年度、経済産業省による「未来の教室」実証事業に採択され、株式会社学研プラスによって日本語版のブラッシュアップやカリキュラムの検討、教育効果の検証などが進められた。本稿では開発者お2人へのインタビューの模様をお送りする。

はじめに

 2019年1月初旬、ワークショップのために来日した開発者のベンダー氏とウリバリ氏。Music Blocksの設計思想や、学びの本質にまで話が及んだインタビューの内容をお届けしたい。

音楽と数学が結びつくことはごく自然なこと

――Music Blocksには、音楽と数学(算数)の要素があるということですが、なぜこれらが結びついたのでしょうか?

Music Blocks開発者 元MITメディアラボ所長 ワルター・ベンダー氏
Music Blocks開発者 元MITメディアラボ所長 ワルター・ベンダー氏

ベンダー氏:音楽と数学を関連づけることは、特に新しい発想ではありません。有名なアメリカのジャズピアニスト、セロニアス・モンク(Thelonious Monk)は、「全てのミュージシャンは無意識のうちに数学者でもある」(All musicians are subconsciously mathematicians.)と言っています。実は音楽と数学の関連性はピタゴラスの時代までさかのぼれるんですよ。

Music Blocks開発者 ニューイングランド音楽院ギター科長 デビン・ウリバリ氏
Music Blocks開発者 ニューイングランド音楽院ギター科長 デビン・ウリバリ氏

ウリバリ氏:私が師事したニューイングランド音楽院のラリー・スクリップ(Larry Scripp)は、音楽を一方向から学ぶのではなく、言語や数学、歴史などと結びつけて学ぶ手法をとっていました。ですから、私にとってもMusic Blocksのアプローチはごく自然なことに思えます。

ベンダー氏:私の師であるマービン・ミンスキー(Marvin Minsky)は、「2つ以上の方法で学ばなければ何かを理解することはできない」(You don't understand anything until you learn it more than one way.)と言っています。音楽と数学の関係の素晴らしいところは、同じコンセプトを別の方法で表現できる共通点がいくつもあることです。音楽の考え方を数学的な図形で表現することもできるし、逆に、数学の考え方をリズムや音で表現することもできます。

 音楽や数学のように専門性が高い分野は、それぞれが難しいボキャブラリーと形式を持っていますよね。Music Blocksがやろうとしていることのひとつは、音楽のボキャブラリーを使って数学を形にしたり、数学のボキャブラリーを使って音楽を形にしたりすることです。同じコンセプトを異なる視点で表現すると、より深く理解することができる効果があります。

 例えば、この部屋の中にもビジュアライズされたリズムがありますよね。ほら、この窓にかかるブラインドは、リズムを表現しているように見えませんか? Music Blocksを使えば、子どもたちは楽譜が書けなくても音楽が作れるし、数学のコンセプトを使いながら独自の発想で音楽をビジュアライズすることができます。

――では、Music Blocksは楽譜を書けない人が、音楽を簡単な操作で作れることを目指しているのでしょうか?

ベンダー氏:たしかに楽譜を書かなくても音楽が作れますが、簡単に音楽作りをするためのツールというわけではありません。

 Music Blocksはプログラミング言語です。音楽教育の理論をプログラミング言語で表現しているのであって、音楽教育の代替手段ではありません。これは数学に関しても同様です。音楽や数学を最初から最後まできちんと学ぶためのものではなくて、学びの長い道のりの通過点です。正式な表現を代替するものではなく、そこを橋渡しするツールだと考えています。

ウリバリ氏:音楽を耳で覚えることも大切ですが、理論がわかっていなければ音を自在に操ることができません。ところが、その音楽理論を子どもたちに説明するのはひどく難しいというのが、音楽教師としての私の実感です。楽譜を読めなければならないことが壁のひとつだと考えています。

 Music Blocksの素晴らしいところは、その壁を越え、楽譜の読み方や音楽理論を学ぶ前に、そのコンセプトを使って表現ができることです。例えばMusic Blocksでは音を数字で指定することができるので、音符の表記ルールがわからなくても曲を作ることができます。

 十二平均律において音は「ド、ド#、レ、レ#、ミ、ファ、ファ#、ソ、ソ#、ラ、ラ#、シ」の12音から成り立っている。Music Blocksでは音の高さを0~12の数字ブロックで表示でき、何もしなければ「0=ド(キーはCメジャー)」で「12=オクターブ上のド」となる。

  • ド:0
  • ド#:1
  • レ:2
  • レ#:3
  • ミ:4
  • ファ:5
  • ファ#:6
  • ソ:7
  • ソ#:8
  • ラ:9
  • ラ#:10
  • シ:11
  • オクターブ上のド:12

 例えば、Cメジャーで「ドレミ」の音を出すときは「0→2→4」となる。

「ドレミ」をMusic Blocksで表現した場合。画像の赤枠部分が「ド」にあたる。
Music Blocksで「ドレミ」を数字で表現した場合。画像の赤枠部分が「ド」にあたる。
なお、数字ではなく「ド」「レ」「ミ」の音の名前で指定することもできる。

ベンダー氏:Music Blocksなら、プログラミングによる作品づくりを通して、まだ学んだことのない高度で複雑なコンセプトを使って音楽や数学の表現をすることができます。例えば、作曲は通常、音楽の上級者が取り組むものですし、今回のワークショップで子どもたちが取り組んでいる図形描画は、高校でやるような幾何学のコンセプトですよね。それらの高度で複雑なコンセプトに手が届くようにしているのです。


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修正履歴

  • 2019/06/04 12:02 記事初出時、「未来の教室」実証事業での実施時期に関する表記に誤りがありました。大変失礼いたしました。

著者プロフィール

  • 狩野 さやか(カノウ サヤカ)

     株式会社Studio947のデザイナー、ライター。ウェブサイトやアプリのデザイン・制作、技術書籍の執筆に携わる。自社で「知りたい!プログラミングツール図鑑」「ICT toolbox」を運営し、子ども向けプログラミングやICT教育について情報発信している。著書に『見た目にこだわる Jimdo入門』(...

  • 森山 咲(編集部)(モリヤマ サキ)

    2016年10月に翔泳社へ入社し、CodeZine編集部へ配属。2017年4月からはEdTechZineの編集も兼任。前職は組み込み系ソフトウェアエンジニア。

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