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大学のDX事例紹介

統合により誕生した、東京科学大学が公開する「デザインシステム」とは? ブランディングへの効果を聞く

 プロダクト開発に関するルールや資産を、体系的に整理・共有する仕組みとして注目される「デザインシステム」。テクノロジー業界を中心に浸透し、企業・団体の活用が広がる中、東京科学大学(Science Tokyo)は「Science Tokyoデザインシステム」を策定し、一般公開した。国内の大学として、こうした取り組みを行うのは珍しい。本稿では、プロジェクトの中心メンバーで、同学で広報を担当する尾崎有美氏と星野英一郎氏に、Science Tokyoデザインシステムの目的や背景、方針や活用方法について伺った。また、デザインやWeb領域のエキスパートとして策定を支援した、株式会社コンセントの足立大輔氏と山﨑貴史氏にも、取り組みの意義やプロセスについて伺った。

「これまでになかった大学を創る」ため、ゼロからブランドを再設計

──まずは「Science Tokyoデザインシステム」(以下、デザインシステム)が誕生した経緯を教えてください。

尾崎有美氏(以下、尾崎):2024年10月、東京医科歯科大学と東京工業大学を統合し、新しい大学、東京科学大学(Science Tokyo)が設立されました。完全に対等な形での統合は、これまでに例を見ない、非常にユニークな取り組みです。医歯学系と理工学系、両者の強みをさらに発展させて「これまでどこにもなかった新しい大学を創る」というのが、Science Tokyo設立の最大の動機であり、目的となっています。

 この方向性を受けて、私たちは新しい大学にふさわしいブランドを構築しなければならないと考えました。東京医科歯科大学と東京工業大学は、それぞれすでに社会的な知名度や高い実績を持っています。それらを丁寧に継承しつつ、新たな価値として再構築するにはどうすればいいのか。その議論の中で、両大学には「まだ十分に伝えられていない価値や課題があるのではないか」と考えました。そこで、改めて「大学のブランドとは何か」「社会にどう伝えていくべきか」といった根本的な問いについて話し合い、双方のブランドを単に組み合わせるのではなく、Science Tokyoとして「ゼロ」から再設計していく方針を定めたのです。

 そして、そのゼロから立ち上げたブランドを、どうすれば学内外の多くの方々に正しく伝えて効果的に活用してもらえるのかを考えた結果、「デザインシステム」の形でルールや資産を体系化するという結論に至りました。こうして、ブランド構築とともにデザインシステムの開発を一体的に進めることになりました。

国立大学法人東京科学大学 総務企画部 広報課 ブランディンググループ長 尾崎有美氏
国立大学法人東京科学大学 総務企画部 広報課 ブランディンググループ長 尾崎有美氏

星野英一郎氏(以下、星野):ブランド訴求に加えて、現場における広報業務の観点からも、デザインシステムを構築する必要性を感じていました。というのも、両大学の担当者は「広報に関する業務知識を得るまでには非常に時間がかかる」という共通の課題を抱えていたのです。例えば、他部門から異動してきた人が広報の観点やルールになかなか慣れず、すぐに活動できないということがありました。その原因は、広報業務に関するナレッジが散在・属人化し、体系化できていないからではないかと考えました。

 そこで、私たちは「Science Tokyoらしさを的確に伝えるためにはどうしたらいいのか」と議論を重ね、「広報の業務を一元的に整理・集約できる場が必要」という仮説を立てました。そのための手法として「散在するナレッジを集約した形として『デザインシステム』を策定する」といったアイデアが生まれ、尾崎の担当領域であるブランド構築と連動する形で、デザインシステムも含めた新しい広報体制づくりに取り組むことにしたのです。

国立大学法人東京科学大学 総務企画部 広報課 専門職(広報ファシリテート担当)・Webグループ長 星野英一郎氏
国立大学法人東京科学大学 総務企画部 広報課 専門職(広報ファシリテート担当)・Webグループ長 星野英一郎氏

「Science Tokyoらしさ」を創り上げるためのデザインシステム

──プロジェクトにおいて、皆さまはそれぞれどのような役割を担っていらっしゃるのでしょうか。

星野:私は広報ファシリテートとWeb領域を兼務する形で広報活動全般を担っており、ブランディングを担当する尾崎とともにプロジェクトを主管しました。具体的には、Web関連のプロダクトマネージャーとしてCMSやインフラの整備、コンテンツの設計・方針まで含めた企画・設計・運用を担当し、デザインシステムにも盛り込まれているWebガバナンスや情報設計といった領域についても、大学としての方針づくりや実行を支援する立場で関わりました。

尾崎:私はブランディンググループ長として、Science Tokyoの新しいブランドづくりに関する調査・企画を担当しました。長期的な視点で検討を重ね、大学統合という大きな節目に向けて、ブランディングの基盤を築いてきた形です。理念などの策定にはじまり、それらを体現するロゴマークやブランドカラー、タグラインといったブランドのビジュアル関連にも関わり、デザインシステムとして体系化するところまで携わっています。

足立大輔氏(以下、足立):私は、デザイン会社であるコンセントで、デジタル・Web領域を専門に活動しており、組織が抱える構造的な課題に対して、さまざまな知見や経験を活かしながら課題解決に向けた支援を行っています。Science Tokyoのプロジェクトには、大学側の要件定義が固まった2024年1月からスーパーバイザーとして参画し、Webサイトの実装や基盤となる仕組みの設計に携わってきました。

株式会社コンセント M&Eグループマネージャー プロデューサー 足立大輔氏
株式会社コンセント M&Eグループマネージャー プロデューサー 足立大輔氏

山﨑貴史氏(以下、山﨑):私もコンセントで足立と同じチームに所属し、プロジェクトマネージャーとしてWebサイトの構築の推進役を担っています。

株式会社コンセント プロジェクトマネージャー 山﨑貴史氏
株式会社コンセント プロジェクトマネージャー 山﨑貴史氏

星野:Science Tokyoの広報体制を構築するにあたり、Web領域の整備は非常に重要なテーマでした。特に、大学統合という大きな変化の中で、情報発信の基盤をどう整えるかは、広報部門としての大きな課題でした。

 大学という複雑な組織において、関係者が共通の理解を持ち、効率的に情報発信できる仕組みをつくるには、専門的な視点と経験が不可欠です。コンセントさんには、2024年初頭から本格的にWebプロジェクトに参画いただき、Webサイトの構築だけでなく、情報設計や運用体制の整備、そしてデザインシステムの策定に至るまで、幅広く支援いただきました。

──デザインシステムはどのような方針のもとでつくられたのでしょうか。

尾崎:新大学であるScience Tokyoのブランド構築にあたっては、理念として「『科学の進歩』と『人々の幸せ』を探求し、社会とともに新たな価値を創造する」を掲げ、その精神を具体的なデザインや表現に落とし込むために、「デザイン原則」を設定しました。

 その中で、Science Tokyoらしさをデザインを通じて伝えていくという指針を示しているのですが、実はその「らしさ」について明確には定義していません。なぜなら、大学という存在は非常に幅広く多様な役割を担っています。教育・研究の場として、産業界との連携拠点として、あるいは地域とのつながりの中で活動する場として、教職員や学生、企業、地域社会など、関わる人によっても「Science Tokyoらしさ」の解釈も異なるはずです。だからこそ、その「らしさ」は一方的に規定するものではなく、関係者一人ひとりが主体的に考え、共に創り上げていくべきだと考えています。

 デザインシステムの中には「らしさ」を形にするためのヒントや手がかりとなる情報が含まれており、関係者が自らの視点でブランドを育てられるようにしています。Science Tokyoという新しい大学の価値を伝えるデザインは、見た目だけの整理にとどまらず、理念と多様性を土台として、共創によって育まれるものです。その姿勢こそが、私たちのデザイン原則の中心にあると考えています。

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デザインシステムが知の循環を促す新しいモデルに

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この記事の著者

伊藤 真美(イトウ マミ)

エディター&ライター。児童書、雑誌や書籍、企業出版物、PRやプロモーションツールの制作などを経て独立。ライティング、コンテンツディレクションの他、広報PR・マーケティングのプランニングも行なう。

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丸毛 透(マルモ トオル)

インタビュー(人物)、ポートレート、商品撮影、料理写真をWeb雑誌中心に活動。

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森山 咲(編集部)(モリヤマ サキ)

EdTechZine編集長。好きな言葉は「愚公移山」。

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