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EdTechZineオンラインセミナーは、ICTで変わりつつある教育のさまざまな課題や動向にフォーカスし、最新情報をお届けしているWebメディア「EdTechZine(エドテックジン)」が主催する読者向けイベントです。現場の最前線で活躍されているゲストの方をお招きし、日々の教育実践のヒントとなるような内容を、講演とディスカッションを通してお伝えしていきます。

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イベントレポート(クリエイティブ教育)(AD)

AI時代に「トランスファラブルスキル」がなぜ必要なのか? 北海道大学などの好事例から育成手法を探る

「Adobe Education Forum 2025」レポート

北海道大学における新たな学びの拠点「Digital Creative Grids」

 北海道大学は、アドビ製品の包括ライセンス契約を2014年に日本の国立大学で初めて締結するなど、デジタル教育に長年取り組んでいる。そして2024年10月には、世界的なコンソーシアムであり、学生のクリエイティブなデジタルスキルの育成に注力する大学で構成される「Adobe Creative Campus」に加盟し、Adobe Expressを全学で導入した。

 さらに2025年5月8日には、構内の北図書館内に新たな学びの拠点「Digital Creative Grids(デジタル・クリエイティブ・グリッズ、以下Grids)」を開設。Gridsは、北海道大学オープンエデュケーションセンターの教育研究から生まれた、デジタルツールを活用した創造的な学びのための知識共有プラットフォームであり、創造性を育み、デジタルリテラシーを育成することを目的としている。重田氏は「教員同士が教育実践を共有し、新しい学びの形が試行錯誤を経て発明されることを期待するオープンアトリエ」でもあると話す。

Digital Creative Grids
Digital Creative Grids

 Gridsは、世界の大学の事例を収集・分析し、北海道大学に適した教育方法を開発する「研究開発」、セミナーやワークショップをはじめとした「教育実践」、ここから生まれた教材や教育手法の普及や、国内・国外の教育機関との協働を通じて教育開発を行う「社会的実装」の3本の柱で活動を展開していく。

 そしてオープンアトリエとして学生が自由に創作し、失敗を恐れずに挑戦できる場であり、「つくることと学ぶことが交差する開かれた場」を目指す。学生・教職員を対象としたセミナーやワークショップでは、アドビのクリエイティブツールや生成AIを用いた最新技術を取り入れた内容を提供するほか、「Adobe Creative Cloud」を利用できる専用端末やBYOD対応の無線LANが整備されており、スタッフがサポートも行う。

Digital Creative Gridsの目的
Digital Creative Gridsの目的

 Gridsは開設から約2カ月で、部活動などでアドビのツールを使用している学生を中心に「わからないときに教えてもらえる場」として好評を得ているという。「これまでなんとなくツールを使っていた状態から、『もっと知りたい』という学生の潜在的な学習意欲が引き出されている」と重田氏。将来的には、国内の高等教育におけるデジタルリテラシー教育のハブとなることを目指しているという。

事例紹介からハンズオンワークショップまで! 大学発デジタル教育の実践と成果

 本フォーラムでは半日にわたって、講演からワークショップ、パネルディスカッション、参加者による交流会までと、充実した内容が展開された。その一部を紹介する。

【講演】立命館大学「デジタルツールを活用したマルチモーダルな学びと創発性人材育成」

 立命館大学の副学長である三宅雅人氏は、「デジタルツールを活用したマルチモーダルな学びと創発性人材育成」と題し、同大学の多角的なアプローチを紹介した。

立命館大学 副学長/社会共創推進本部 本部長/OIC総合研究機構 教授 三宅雅人氏
立命館大学 副学長/社会共創推進本部 本部長/OIC総合研究機構 教授 三宅雅人氏

 立命館大学は2024年4月、日本の教育機関として初めてAdobe Creative Campusへ加盟し、学生だけでなく、教職員、卒業生、さらには小中高生までがアドビのツールをさまざまな形で活用する「全方位的な活動」を展開している。具体的には、企業の課題解決においてAdobe Expressでアイデアを具現化する事例や、小学生がAdobe Expressで動画編集を行い、教える側の大学生のコミュニケーション能力も向上した事例などが紹介された。三宅氏は、このような多様な挑戦の場を大学が提供することで学びが加速し、「創発性人材」の育成につながることを強調した。

立命館小学校で行われた、大学生によるAdobe Expressの特別授業
立命館小学校で行われた、大学生によるAdobe Expressの特別授業

東京電機大学と筑波大学に見る大学の実践事例

 大学における実践事例として、東京電機大学と筑波大学の取り組みも紹介された。

 東京電機大学 システムデザイン工学部 教授の宍戸真氏は、理工系学生向けの英語教育におけるAdobe Expressの活用事例を報告した。

東京電機大学 システムデザイン工学部 教授 宍戸真氏
東京電機大学 システムデザイン工学部 教授 宍戸真氏

 理工系学生の多くは英語学習へのモチベーションが必ずしも高くなく、提出課題の文章量が極端に少ないことや、AIや自動翻訳の利用による表現力の狭まりが課題であった。そこで、Adobe Expressを活用し、発想、構成、表現、視覚化といったプロセスを重視するアプローチを導入。学生が生成AIで画像をつくり、そこに解説となる英文をつけるという課題にすることで、約80%の学生が「英語の理解に役立った」と評価し、90%が「クリエイティブである」と回答。その有用性が認められたという。

東京電機大学での課題例
東京電機大学での課題例

 筑波大学医学医療系 特任助教の吉原雅大氏は、医学類学生を対象とした社会課題解決ワークショップでの活用実践を紹介した。

筑波大学医学医療系 特任助教 吉原雅大(まさはる)氏
筑波大学医学医療系 特任助教 吉原雅大(まさはる)氏

 慢性腎臓病の認知アップや早期啓発をテーマに、Adobe Expressを用いてスライドや動画を作成した課題では、「課題解決に向けた考え方を学べた」といった声が上がり、学生から高い満足度が得られたという。吉原氏は「Adobe Expressは学習者の自己効力感を高め、学生間のコミュニケーションを円滑にし、フィードバックを促進する」と実践の効果を伝えた。さらに、「対象となる学習内容の深化だけでなく、コミュニケーションを通じてトランスファラブルスキルの育成にもつながる」とした。

筑波大学の実践事例
筑波大学の実践事例

グローバルな視点から見るアドビの教育ソリューション

 アドビのグローバル担当者からは、AI時代の教育における同社の取り組みとツールの可能性が語られた。アドビ グローバル教育ストラテジー部門ディレクターのセバスチャン・ディステファーノ氏は、世界で約100の高等教育機関が加盟するAdobe Creative Campusについて、現在までに日本でも3つの大学(立命館大学・北海道大学・東京電機大学)が加わっていることを紹介。このコンソーシアムは、学生の学習エンゲージメントを高め、デジタルリテラシーと創造性を統合することで、卒業後の実社会で活躍するために必要な、スキル育成に向けて教育カリキュラムの革新を続ける大学の集団であり、アドビはその支援に引き続き力を入れていくと語った。

アドビ セバスチャン・ディステファーノ氏
アドビ セバスチャン・ディステファーノ氏

 同部門の所属で、ジャーナリストや大学教員としての経歴を持つマニュエラ・フランチェスキーニ氏は、アドビの「教育における創造性とAIについての調査レポート」を紹介するとともに、創造性や批判的思考、共感、倫理的推論といった人間独自の「ヒューマニクス」の重要性を挙げた。諸外国におけるAdobe Expressを活用した授業実践での学生の変化を例に、創造性やコラボレーションなどのスキルとデジタルツールを組み合わせた「デジタルストーリーテリング」が、「転移可能なスキル」の育成に有効な手段であると説明した。

アドビ マニュエラ・フランチェスキーニ氏
アドビ マニュエラ・フランチェスキーニ氏

 さらに、アドビ 教育プロダクト部門 ディレクターのチトゥラ・ミッタ氏は「Adobe Acrobat AIアシスタント」の活用事例を紹介した。情報過多の課題に直面する学生に対し、Acrobat AIアシスタントが文書の要約や複雑な語彙の簡素化、質問応答を通じて理解を深め、学修効率を高めることができると説明。また特に、アドビのAIモデルの学習データの安全性と信頼性について、AIアシスタントの利用に用いたユーザーのドキュメントが、AIモデルの学習データに利用されることはないこと、要約などのドキュメント内での出典元が明確に示されることなどを強調し、教育現場での安心安全な利用に勧める理由を述べた。

アドビ チトゥラ・ミッタ氏
アドビ チトゥラ・ミッタ氏

【ハンズオンワークショップ】画像生成AI&Acrobat AIアシスタント

 本フォーラムではAdobe Expressと、「Adobe Firefly」を活用した画像生成AI、Adobe Acrobat AIアシスタントを体験するハンズオンワークショップも開催された。参加者はAdobe Expressのテンプレートを活用し、Adobe Fireflyを用いて自身の自己紹介カードを作成した。また、Acrobat AIアシスタントを使ったデモンストレーションでは、スピーディーな文章要約や小テストの作成などが披露された。ワークショップに参加した大学教員は「Acrobat AIアシスタントの要約機能に感動した。膨大な資料を読む際の読み飛ばしを防止できるほか、学生の指導において正解を確かめる上でも非常に役立つ」と期待を語った。

ハンズオンワークショップの様子 ハンズオンワークショップの様子
ハンズオンワークショップの様子

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【パネルディスカッション】多様なアプローチで挑むAI時代の人材育成と実践

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この記事の著者

相川 いずみ(アイカワ イズミ)

 教育ライター/編集者。パソコン週刊誌の編集を経て、現在はフリーランスとして、教育におけるデジタル活用を中心に、全国の学校を取材・執筆を行っている。渋谷区こどもテーブル「みらい区」を発足しプログラミング体験教室などを開催したほか、シニア向けサポートを行う渋谷区デジタル活用支援員としても活動中。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です


関口 達朗(セキグチ タツロウ)

 フリーカメラマン 1985年生まれ。  東京工芸大学卒業後、2009年に小学館スクウェア写真事業部入社。2011年に朝日新聞出版写真部入社。  2014から独立し、政治家やアーティストなどのポートレート、物イメージカットなどジャンルを問わず撮影。  2児の父。旧姓結束。趣味アウト...

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提供:アドビ株式会社

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