創造的復興と社会の宝である「人財」育成の拠点に
来賓祝辞として、まず石川県副知事の浅野大介氏(石川県知事 馳浩氏の代理)が登壇。浅野氏は「若者の流出防止や地域の課題解決に取り組む人材の育成において、地域の高等教育機関の役割はこれまで以上に重要になっている。石川県としても、高等教育機関の学生が地域に入って課題解決に取り組む活動を支援しており、今回のAI Career Tech Centerの開所が、創造的復興を後押しし、石川県をさらに発展させるものと大いに期待している」と述べた。
さらに「石川県庁でDXビジョンを策定し、県内市町村のデジタル行財政改革を進める中で、AIが不完全な人間の予測能力を補う重要なパートナーとなると考えており、このセンターから多くのAI技術を磨く学生が生まれ、石川県のDXを推進する人材が育つことに期待を寄せている」と語った。

続いて登壇した、文部科学省 高等教育局 専門教育課長 松本英登氏は「産業界からの強い要請に応えて創立された石川高専が60周年を迎える節目の年に、AI Career Tech Centerが開所することは、まさに新しい時代の幕開けである」と期待を込めた。
松本氏は「最新のAI学習環境が整備されたこのセンターで、AI教材を活用した授業やインテルの知見を活用した研修が実施されることで、これまでも教育の最前線にあった石川高専の取り組みが一層加速し、AI時代を切り開く学生がここから羽ばたいていく」と述べた。その上で「高等専門学校制度が国内外から高く評価される一方、AIやロボットなどの先端技術が日常に実装される社会変化を受け、高専教育も不断の見直しと高度化が急務である」と指摘し、文部科学省としても高専のさらなる発展に必要な支援に努め、実践的・創造的技術者の育成に一層力を注ぐことを伝えた。

最後に主催者を代表して、国立高等専門学校機構 理事長の谷口功氏が登壇。「1年ぶりに石川高専を訪れたが、復興が進み、学生の顔も明るくなった」ことを伝え、高等専門学校設立の意義と概要を語った。

さらに「石川高専は、地元産業界や地域の力添えにより、社会の宝である『人財』を育成する高等教育機関へと成長してきた」とし、2024年3月にインテルと石川高専が「石川県から世界に通用する生成AI人財育成」という目標のもとで連携協定を締結したことを紹介した。
谷口氏は「AI Career Tech Centerが日本のDX人材育成の核となり、全国の高専に広がることを期待している。国立高等専門学校機構としても、石川高専が人財育成に取り組み、拠点として情報を発信していくことを確信している」と述べた。

インテルのカリキュラムを使った「AIを創る授業」
開所式の後はAI Career Tech Centerにおいて、電子情報工学科の2年生41名を対象とした特別授業「電子情報工学基礎Ⅱ」が実施された。授業は、AIに関する講義と「Intel Distribution of OpenVINO」ツールキットを用いた、ディープラーニング推論プログラムの体験という二部構成で行われた。
授業の最初に「Intel Digital Readiness Program」が紹介された。このプログラムは、デジタル技術の世界で多様な人材が活躍できる環境づくりと、デジタルビジネスの発展を目的としており、「AI for Future Workforce」もそのひとつとなっている。今回の授業で体験した、AI for Future Workforceは16歳以上を対象としたプログラムで、5時間コースと15時間コースがあり、OpenVINOやPythonなどのプログラミング技術も学ぶことができる。

今回は、AI for Future Workforceを1時間に凝縮した形で、OpenVINOのデモ体験が行われた。講師を務めたのは、全国の高専などで講義を行っている、JellyWare株式会社 最高技術責任者(CTO)の上田浩氏。

上田氏は「AIの種類を大別するとルールベースと機械学習の2種類があり、中でも画像や自然言語の処理を得意とするディープラーニングが注目されている」と話し、人間の顔を認識して年齢を推測するAIを例に挙げ、学習データの作成、学習、推論というディープラーニングのフェーズを解説した。さらにAIの分野として、強化学習画像生成、自然言語書類、音声合成、音声認識、画像認識の6つを挙げた。
次に、今回授業で使用したOpenVINOについて解説。現在、C言語を学んでいる学生に向けて、Pythonの基本的な概要を説明するとともに、簡単な文字表示からの実践デモを行った。電子情報工学科の学生たちは、普段からプログラミングを行っていることもあり、慣れた手つきでコードを打ち込みデモを進めていた。
「猫の顔だけ画像表示」のデモでは、「NumPy」というPythonの数値計算ライブラリを用いて、画像の一部分を切り出す処理を行った。また「画像回転表示」のデモでは、行列演算で画像を回転させる様子を紹介し、画像処理の数学的な側面を解説した。

授業のクライマックスとして行われたのが「ハンドジェスチャー認識」のデモだ。パソコンに搭載されているWebカメラの前で学生たちが手を動かすと、ジェスチャーがリアルタイムに認識され、画面に表示された。これはOpenVINOを活用した推論処理によるもので、非常に迅速に認識されていることを体験できた。さらに、ジェスチャーに応じて画面に表示される画像を切り替えるデモや、ジェスチャーに応じて音声を出力するデモも行われ、AIのインタラクティブな応用例が示された。
