教育委員会が学んでくれない……どうすればいい?
本セッションでは、イベントの総括も含めて登壇者がこの日の流れを振り返り、「NEXT GIGAに向けて」というテーマのもと、これから重要になりそうな「鍵」を見つける構成で進められた。その中では視聴者から寄せられたいくつかの「質問」を、ソフトバンク株式会社の田中氏が紹介する形で進める一幕があった。
最初に紹介されたのは学校の教職員から寄せられたと思われる質問で、「教育委員会の担当者がGIGAスクール構想のことを学んでおらず、現場から働きかけても改善が進まない」という辛辣な意見だ。
この質問には司会の新保氏も「これは……どうしましょうか」と悩みつつ、この3月まで奈良県教育委員会に17年勤めていた小﨑氏に、すかさずバトンタッチ。これに対して小﨑氏は「17年間の経験から言わせてもらうと、4年以上教育委員会に在籍している担当者は学校現場でGIGAスクール構想(端末の活用)を経験していない。しかも、端末や学習環境が教育委員会に配備されていない中で、教育委員会の管理職や指導主事が学ぶ機会はほとんどなかった。一方で、教育委員会側から見ると配備した端末が学校現場で十分に活用されていない側面もある。この対立構造の中では何も改善されない」と指摘する。不満を言うだけでは何も変わらないからこそ、問題解決に向けて互いに「一緒にがんばろう」と呼びかけることの重要性を訴えた。そのうえで「黒板は100年経っても板書計画でさまざまな議論があるが、ICTはせいぜいまだ3、4年の世界。いろいろな議論や意見があって当然」と相互理解を求めた。
これを受けて、司会の新保氏は「いきなりまとめるような意見で恐縮だが」と断りつつ、GIGAスクール構想について「本来は5年をかけてやるはずだったものが、コロナ禍の影響により一気に1年で動いた。この質問を投稿した先生も学校現場で大変な思いをしたと思うが、教育委員会も同じくらい大変だったのではないか」と双方をねぎらった。
そうした教育委員会の立場について、小﨑氏は「教育委員会はGIGAスクール構想を動かすために必要な、膨大な事務処理に追われていた部分もある」と指摘。また、東北学院大学の稲垣氏は「私の知人である教育委員会の担当者は学んでいる人がたくさんいるが」と断りつつ、「(1st GIGAにおいては)小規模自治体かつ指導主事が少数しかいないところは、本当に大変だったと思う。だからこそNEXT GIGAでは共同調達を前提にして、県域で行っていく方針になったのではないか」と述べた。
これらの意見を踏まえて新保氏は、学校と教育委員会で対立するのではなく「みんなで力を合わせてやっていくしかない」と、この質問を総括した。