「GIGAスクール構想っていつ終わるんですか?」という声も……
イベントの冒頭、ファシリテーターの小﨑氏は「そもそもGIGAスクール構想の『GIGA』が何の略語なのかを、奈良県内の201名の先生に聞いた結果」を紹介。正解は「Global and Innovation Gateway for All」なのだが、これを正確に答えられた教員はわずか2名だったという。
この話を皮切りに、小中高それぞれの学校に関わる登壇者に向けて、小﨑氏は「実際の学校現場でGIGAスクール構想がどのくらい話題になっているか」と問いかけた。これに対し、登壇者3名からは以下の通り回答があった。
「小学校では端末の活用が日常化しているものの、NEXT GIGAで端末が入れ替わるという話はあまり知られていない」(奈良県教育委員会事務局(小学校籍)藤川氏)
「コロナ禍だから端末が配られた(それがGIGAスクール構想)と思われていたようで、現場からは『これ、いつなくなりますか?』と聞かれている」(奈良市立平城東中学校 永田氏)
「埼玉県の高校は、そもそも各家庭の負担で端末を購入してもらっているので、GIGAスクール構想とはかけ離れた場所にある(つまり、ほとんど話題にならない)」(埼玉県教育局 鈴木氏)
このうち、中学校に関する永田氏の回答に対しては、小﨑氏も「自分のところにも『NEXT GIGA』は端末が回収されて元通りになることだと思った、という声が届いている」と答え、そもそも何のために学校に高速ネットワークと1人1台端末が配備されたのか、その目的があまり共有されていない実態が浮き彫りとなった。
次に小﨑氏は、GIGAスクール構想自体に対する印象について「ポジティブか・ネガティブか」と聞いたところ、登壇者からは以下のような回答があった。
「ポジティブとネガティブが半々というよりは、ちょっとポジティブが多いかなとの印象」(奈良県教育委員会事務局(小学校籍)藤川氏)
「一部、先ほどのようなネガティブな声はあるが、全体としては端末を便利に活用しているポジティブな声が多い。ただ、その『便利』というのは教える側の都合が強い印象」(奈良市立平城東中学校 永田氏)
「そもそもGIGAスクール構想があまり浸透していない上に、高校は各教科の先生の裁量に任せられている部分が多く、まだネガティブな声が多いかもしれない」(埼玉県教育局 鈴木氏)
このように学校現場の目線ではまだ「浸透している」と断言ができない部分もあるGIGAスクール構想だが、認定NPO法人ほっかいどう学推進フォーラムの新保氏は、直近でフランスに訪問し学校見学をした際、学校全体で端末が50台程度しかなかった様子を報告。
これについては東北学院大学の稲垣氏も「世界的に見て、ここまでの整備を一気に進めた事例はほとんどない」とした。このように、GIGAスクール構想によって「1人1台」では世界をリードする環境を手にした日本だが、この後の議論では2つの大きな課題が浮かび上がることになる。