お話を聞いた先生方
- 日本女子大学附属中学校 家庭科教諭 福井智子先生
- 同 遠山弥生先生
- 同 堀場愛未先生
中学校の技術・家庭科の現在──共修は1993年度から
まずはじめに、中学校の技術・家庭科について簡単に解説しておこう。中学校の学習指導要領において「技術・家庭科」は、ひとつの科で、技術と家庭ふたつの分野に分かれるが、成績は総合的につく。授業の標準時数は1年生70コマ、2年生70コマ、3年生35コマで、これを技術分野と家庭分野で分け合う。
読者の中には、男子は技術科、女子は家庭科に分かれて授業を受け、一部の内容だけ一緒に受けていた記憶がある方もいるだろう。かつては男女で履修する内容が分かれていたが、1993年度から全面実施された中学の学習指導要領(1989年告示)で解消されて男女共修となり、現在は男女分けることなく同じ時間に同じ授業を受けている。1980年度生まれが中学1年生になったのは1993年であるため、今年44歳になる年齢あたりを境に若い世代は常識感が変わっているはずだ。
現在の中学校では、技術の時間には男女一緒に木材加工や金属加工、電気系の製作実習、プログラミングに取り組み、家庭の時間には調理も手縫い・ミシンの裁縫も実習するのが通例だ。成績は総合的につくものの、技術と家庭の教科書は別々で、教員の免許も異なるため、生徒にしてみれば別の教科のような印象があるかもしれない。
家庭科教員が高校の情報科免許を取得し、学びを充実
日本女子大学附属中学校では、伝統的に家政系の学びに強みを持っている。技術分野においても家庭生活とのつながりを大切に、電気・機械の知識習得や実習、ろうけつ染め、コンピューターの学習などを行ってきた。近年では情報分野の重要性が高まり、より専門性の高い情報分野の授業を展開するために試行錯誤している。
最もキャリアの長い福井先生は情報関連の学習について次のように振り返る。
「以前はパソコン室でパソコンの基本的な使い方やWordなどを教えていましたが、徐々に内容も変わり、2019年からはScratchを使ったプログラミングも始めました。現在は1人1台のiPadがそろったので、個人のiPadを使用してプログラミングを含む情報関連の学習を行っています」(福井先生)
家庭科教員として情報の内容も教えるために、高等学校の情報科の教員免許を追加で取得し、対応してきた。後に続く2人の先生も、同校に赴任してから情報科の免許を取得済み、もしくは取得中だ。
中学校の技術科免許は取得できる大学が少なく、働きながら取得するのは困難だが、高等学校の情報科免許は通信制という選択肢もあるため、取得して必要な学びに備えている。学習内容は、校外の研修に参加したり、学内で詳しい教員に相談したりして内容を更新し続け、さらに2022年度はプログラミング教材を開発する株式会社ティーファブワークスの支援、2023年度からは特定非営利法人みんなのコードの支援なども受け、授業カリキュラムが充実してきたところだ。なお、カリキュラムの支援を受けているが、実際の授業は同校の福井先生、遠山先生、堀場先生が行っている。