矢野経済研究所は、国内の教育産業市場(主要15分野)を対象に実施した調査結果に基づく、サービス分野別の動向、参入企業動向、将来展望を10月6日に発表した。同調査は、学習塾、予備校、通信教育事業者、資格取得学校、語学スクール、幼児教室、体操教室、研修サービス事業者、eラーニング事業者、学習用教材会社、業界団体、管轄省庁などに対して、7月~9月の期間に行われている。
今回の調査対象となる国内の教育産業市場において、2022年度の市場規模(主要15分野計)は、事業者売上高ベースで前年度比0.3%減の2兆8499億7000万円となった。
市場の動きとして、2020年度はコロナ禍に起因とする各種教室の休塾・休校措置や生徒募集活動の自粛といった事業活動の大幅な制限を受けて市場縮小を余儀なくされた。2021年度は、新型コロナウイルス感染症の感染防止対策を講じた上で事業運営が概ね継続できたこと、対面授業とオンライン授業の併用などによるサービス提供体制が確立したこと、コロナ禍で需要を高めたサービスが引き続き好調に推移したことなどを受けて、市場が回復していた。
2022年度は、コロナ禍の行動制限の撤廃などによって需要が変化し、通信教育やeラーニングといったコロナ禍で急速に拡大した遠隔教育の需要が減退傾向で進んだ。一方で、対面教育を中心とする教育サービスへの需要回帰が一層進む状況となっている。とりわけ、社会人向けの「通信教育市場」は、外出・交際・娯楽に対する消費支出の高まりなどもあって、2022年度は前年度比10.0%減の大幅な市場縮小となった。
2022年度に前年度の市場規模を上回った分野は、「学習塾・予備校市場」「資格取得学校市場」「幼児体育指導市場」「企業向け研修サービス市場」「eラーニング市場」の5分野となっている。
そのなかで、教育産業主要15分野で最大の市場規模となる「学習塾・予備校市場」は、2022年度の市場規模は前年度比0.1%増の微増推移となった。しかしながら、学校行事や部活動の実施増加(平常化)にともなう通塾機会の抑制や、コロナ禍で生じていた学習の遅れや学力の低下に対する危機感・不安感が払拭されるようになり、通塾に対する意欲の減退傾向がみられる。
2023年度の教育産業の市場規模(主要15分野計)は、事業者売上高ベースで前年度比0.5%増の2兆8632億7000万円を見込む。その理由として、新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置づけが5類へ移行し、社会経済活動が従来の状態を取り戻しつつある中で、需要を高める分野と後退させる分野が混在することが想定される。教育産業主要15分野のうち「資格取得学校市場」「資格・検定試験市場」「語学スクール・教室市場」「幼児受験教育市場」「幼児体育指導市場」「企業向け研修サービス市場」「eラーニング市場」の7分野が成長することによって、教育産業全体市場としてはプラス成長で推移するとみている。
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