教育の未来を形作る3つのテーマ
イギリスとオーストラリアにおいて17年間、教師として学校に勤めていたというクリス氏。現在はGoogle for EducationのEducation Government and Academic Engagement Leadとして、アジア太平洋地域を担当している。
クリス氏は冒頭で「教育に携わる私や皆さんは使命を共有してここにいます。それは、若者たちが変貌する世界で活躍するために必要な知識や考え方、スキルセット、ツールセットを身につける手助けをすることです」と述べ、「教育の未来白書」の紹介をスタートした。
「教育の未来白書」では、日本を含む24カ国のインタビューと教育の専門家による調査結果が掲載されている。その中からクリス氏が注目する3つのテーマ「仕事に求められるスキルセットの変化」「個々に合わせた学びを提供する」「データの力で教育者を支援する」が、それぞれ解説された。
テーマ1:仕事に求められるスキルセットの変化
テクノロジーの変化に伴い、学校現場でもこれからの世界で活躍するために必要なスキルの習得が求められるようになってきた。また、気候変動やパンデミック、人口問題といった社会問題の解決と、経済発展のバランスをとる必要もある。クリス氏は「こうした課題を解決するために、私たちは子どもたちが学び、学び直し、また学ぶといったサイクルをサポートすることが大切だ」と述べる。
クリス氏はイギリスの学校、XP Gatesheadを訪れた際のエピソードを紹介。同校では教科を越えたプロジェクトを通して生徒が複雑な問題解決に取り組んでいる。例えば移民をテーマにした生徒たちは、「Googleドキュメント」で研究ノートを執筆し、「Googleスプレッドシート」で人口の変化に関するデータを分析。さらには地元の移民にインタビューする際にも「Google Classroom」を使って共同編集しながら計画していた。最終的には研究成果を書籍として出版し、売り上げはその地域に住む移民のために活用された。クリス氏は「子どもたちが大人と同様にプロジェクトを進めたことに驚かされ、何よりも共感と思いやりを育んでいたことに感銘を受けた」という。
また今回の来日で、クリス氏はGoogle for Educationの導入自治体である神奈川県川崎市の学校を訪問。そこでは、子どもたちがアクティブラーニングに取り組み、創造性とリーダーシップを発揮していたという。
これらの事例を踏まえ、クリス氏は「このような子どもたちがこれからの世界で活躍する。イギリスでも日本でも、学習者の能力を引き出すためにテクノロジーを使う様子を見てすばらしいと感じた」と振り返った。
さらにクリス氏は日本のGIGAスクール構想にも言及。学校で使用できるデバイスがおよそ320万台から教員・小中学生1人につき1台の1300万台まで整備されたことについて、「信じられないほど短い期間で達成した、もっとも壮大なデジタル変革」と評し、「次の10年が楽しみ」と述べた。なお、GIGAスクール構想において4割以上の自治体が導入端末にChromebookを選択したことについては「この変革の一端を担えたことを大変誇りに思うと同時に、身が引きしまる」とコメントした。
そのほか、Google for Educationが提供する無料のプログラミング教育カリキュラム「CS First」や、デジタルスキルの習得をサポートする大人向けのプログラム「Grow with Google」などもあわせて紹介された。