日本マイクロソフトは、三井不動産が6月18日より提供開始するオープンイノベーション支援プログラム「イノベーション・ビルディングプログラム」において、Microsoft 365を中心としたコラボレーション活性化支援を行うことを発表した。記者発表会の様子をレポートする。
「リアルタイム」のコラボレーションツールで、大手企業のイノベーションをサポート
昨今「オープンイノベーション」についての取り組みがよく聞かれるようになった。最初に登壇した日本マイクロソフトの三上氏は、大企業におけるオープンイノベーションの取り組みについて「新規事業の開拓や、既存事業の付加価値の向上、または課題の解決などを目的にさまざまな取り組みが行われています。しかし、スタートしてみたもののどうプロジェクトを動かせばよいか分からないなど、実際に成功に至るケースはまだまだ少ない」と話す。
そんな中、三井不動産が日本のオープンイノベーションを支援する取り組み「BASE Q イノベーション・ビルディングプログラム」をスタートする。これは、”企業内起業家”と呼ばれ、組織内の先進的活動を担うイントレプレナーに対し、実際の戦略設定やパートナーの選定など、プロジェクトを成功に導くまでのコンサルティングを行うサービスだ。
「オープンイノベーションを成功に導くにあたって、大企業とベンチャー企業のリアルタイムでのコミュニケーションは必要不可欠です。意見交換やタスク管理、資料の共有を都度ミーティングを待って行っていたら、時間が足りないでしょう」(三上氏)
こうしたリアルタイムの連携を実現するため、日本マイクロソフトは、企業同士をつなぐコラボレーションツールの活用、特に、Microsoft 365内のワークスペースMicrosoft Teamsの活用を支援していくという。
Microsoft Teamsは従来企業内のコミュニケーションに特化していたが、機能拡張により今年3月から企業外部の人ともつながることができる。これによって顧客ともダイレクトに、リアルタイムにつながることができるようになった。
さらに、三上氏は「新しいビジネスの創出・実現においてわれわれが支援できるエリアはMicrosoft 365にとどまらず、幅広い技術の支援ができると考えている」と話す。
日本マイクロソフトではここ数年、すでにMicrosoft製品を購入している企業内に入って、活用を促す活動を行っており、その中で実際に新しい活用法やアイデアが生まれている。三上氏は、本プログラムにおいても、「企業内で変革を起こそうとしている大企業のイントレプレナーを直接支援することができれば、そこで技術の活用の幅が広がり、新しいアイデアが生まれてくるのではないか」と期待しているという。
知識と実践の両面から、イノベーションをサポート。企業内にイントレプレナーを育成することを目指す
続いて、三井不動産の光村氏が、BASE Qのプログラム発足の背景となった問題意識を紹介した。
「日本において『オープンイノベーション』ブームが続いているにもかかわらず、大手企業とベンチャー企業の有意義なコラボレーションはあまり生まれていない。大手企業が変わらなければいけないことがいっぱいある」
こう説明した光村氏は、大手企業内に「自前事業を脱却しよう」という意識はあっても、すぐにオープンイノベーションへと舵を切っていける企業は少ないと語る。
そこで伴走コンサルタントが企業専属のイントレプレナーとなり、新たな事業創造にコミットしていく「BASE Q イノベーション・ビルディングプログラム」が生まれた。プログラムの構成は下図の通りだ。
1の「伴走コンサルタント」には、三井不動産、電通、EY Japanの3社から、自社のオープンイノベーションや大手企業の新規事業の立ち上げ・戦略作りなどの実践経験のあるメンバー7名(現時点)をアサイン。
例えばメンバーの1人には、学生時代に起業した会社を売却して電通に入社、さまざまな事業を黒字化し、並行して大手企業の支援に取り組むといった経歴の持ち主もいる。ベンチャーのカルチャーも把握しながら大手企業の内部事情にも理解があり、実践経験もある。こういったメンバーが、最長1年間にわたって戦略整理から、ブレストのファシリテート、ビジネスの共創に至るまで網羅的にサポートし、大手企業とベンチャー企業の橋渡し役を担っていく。
2の「Qスクール」では、大手企業の社員がイノベーションに取り組むにあたって不足しがちな、イノベーションや自社以外の領域に関する知識を体系的に整理し、提供する。光村氏は「大手企業の内部で『イントレプレナー』を輩出して、このプログラムがなくても企業が自走していく世界が実現できれば」と話し、本プログラムにおけるイノベーター教育の側面をうかがわせた。
とはいえ、オープンイノベーションを実践するにあたっては、もちろん座学で得る知見だけでは十分とは言えない。そこで、伴走コンサルタントとのプロジェクト実践に加え、3や4といった交流の場でも体験的なサポートを行う。
光村氏は、大手企業・ベンチャー企業等の外部パートナー・伴走コンサルタントの3者で取り組むオープンイノベーションにおけるコミュニケーションには、
- インタラクティブ
- リアルタイム
- インテグレーテッド
の3つの性質が必要だとした。さらに、大手企業で重要な機密情報を取り扱うにあたっては「セキュア」であることも求められる。以上の条件を満たすコミュニケーションツールとして、Microsoft 365が最適だったという。
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