Shoeisha Technology Media

EdTechZine(エドテックジン)

記事種別から探す

EdTech関連企業の提案を起点に「学び方改革」の具体策を考える――経産省の第3回「『未来の教室』とEdTech研究会」より(前編)

  • LINEで送る
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
2018/06/04 14:00

 経済産業省は5月8日、3回目となる「『未来の教室』とEdTech研究会」を開催した。これまで2回の研究会(1/19、3/28)と4回のワークショップが開催されており、「新しい時代の学び」について教育関連企業などから意見を募っている。第3回はそれらを踏まえ、さらに多面的な意見交換の場として開催された。前編では、ゲストスピーカーのリクルートマーケティングパートナーズ、ICT CONNECT 21、ライフィズテックの代表者によるプレゼンテーションと質疑応答、意見交換についてレポートする。

ゲストスピーカーである、株式会社リクルートマーケティングパートナーズ 代表取締役社長 山口文洋氏(左)とライフイズテック株式会社 代表取締役CEO 水野雄介氏(右)
ゲストスピーカーである、株式会社リクルートマーケティングパートナーズ 代表取締役社長 山口文洋氏(左)と
ライフイズテック株式会社 代表取締役CEO 水野雄介氏(右)

「未来の教室」に一気通貫でICTツールを提供

 第1部では、まず一人目のゲストスピーカーとして、株式会社リクルートマーケティングパートナーズの山口文洋氏が「50センチ革命を起こせるチェンジメイカーを育む『未来の教室』を目指して ~スタディサプリの挑戦」と題し、プレゼンテーションを行った。

 山口氏は株式会社リクルートに入社後、2011年にインターネット配信による学習サービス「受験サプリ(現スタディサプリ)」を開発し、現在はリクルートマーケティングパートナーズの代表取締役社長を務めている。チェンジメイカーを多く輩出するリクルートに身を置き、自らもまた「チェンジメイカー」となり得た理由として、企業文化や環境の影響を挙げ、そこには心理学を応用した「内発的動機マネジメント」があると分析する。

 「仕事と個人の目標を一致させて内発的動機を高め、物事の決定権を与えて自主的に成果を出せれば肯定感が高まり、社会的承認性も満たされる。その小さな成功体験の繰り返しで、さらなる内発的動機の喚起につなげられる。リクルートの場合、とりわけマネージャー層がコーチやメンターとして、内発的動機を育み高める力があることが最大の強みだった」と山口氏は説明。さらに企業文化として根付けば、改革の推進や創造性の発揮が容易になるというわけだ。

リクルートに根付く、心理学を応用した「内発的動機マネジメント」
リクルートに根付く、心理学を応用した「内発的動機マネジメント」

 そうした経験を踏まえ、山口氏はリクルートマーケティングパートナーズの社長として、社内に内発的動機に基づく企業文化を継承・進化させすると同時に、子どもたちの教育の場にも展開することを切望してきた。それが山口氏の教育支援活動の礎であり、「スタディサプリ」誕生の動機にもなっているという。

 「スタディサプリ」は小・中学生から高校生、大学受験までの各科目に対応する、月額980円で利用可能なオンライン学習サービスだ。国内で65万人以上、東南アジアでは約10万人が利用している。他にもリクルートでは1971年より高校生に向けた「進路選択支援事業」を、モチベーション格差の解消として「学習支援事業」を6年前より開始するなど、さまざまな教育事業に取り組んできた。

 そうした事業の知見やツールを活用し、経産省が目指す「未来の教室」の内発的動機づけから目標設定や進路選択、実現のための学習支援まで、全フェーズを一気通貫して学校へのサービス提供が行えるという。

 例えば「『好き』『わくわく』『自信・意欲・志』の発見向上」のフェーズでは「スタディサプリ:進路」が既に2500校を超える高校で活用されている。書籍や漫画などを通じて「好き」や「わくわく」を探したり、働く人や大学生などの先輩の情報で「憧れ」を探したり、自分の性格・強み・適性を知る「適性診断」などを提供したりしている。

 そして「『課題設定・解決力』『想像力』の向上」におけるPBL(問題解決学習)やSTEAM教育などについては、ICTではなく五感を通じた体感的な授業であるべきという考え方から、リクルートでは教育プログラムを提供していない。しかし、体験を内省し振り返ることが重要と考え、体験や挑戦を記録する「ポートフォリオ」を提供。また、ICTを活用した体験的授業として、「スタディサプリ」で学ぶ東南アジアの学生と国境を超えた交流ができるサービスも予定されている。

 そして、基礎学力・スキルの向上を目的とした「スタディサプリ高校講座」も全国857校の高校で活用が開始されている。また、各進捗レベルに合わせた個人対応が可能となっており、そうした生徒たち一人ひとりの学びデータを一元管理する、先生のためのサービスも用意されている。

 山口氏は、「こうしたツールを活用することで、生徒は自身の『好き』を勉学につなげて捉えられるようになり、自己肯定感を高め、自己決定性が身につく。一方、先生は基礎知識教育を教える『ティーチャー』から、『コーディネーター』や『ファシリテーター』『メンター』といった新しい指導者としての本質的な活動に集中できる」と語る。さらに時間的にもICTの活用で生産性が向上し、PBLやSTEAM教育、プログラミングなど新しい学びの時間の確保や効果的な反転授業になると予測する。

 こうした「未来の教室」の実現に向けた課題として、山口氏は「EdTech活用環境整備」を挙げ、Wi-Fi環境の100%対応や個人所有機器を含めたBYOD利用の許可、学校現場に対する広報の必要性などを提言した。また、先生がティーチャーではなく、コーチやメンター、ファシリテーター、コーディネーターへと役割を変えること、そしてそのために大学の教育学部など教育者育成の現場が対応する必要性も指摘した。さらに、地域の企業が学校を支援する有用性についても語り、そうした仕組みや体制の推進についても提言を行った。


  • LINEで送る
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

著者プロフィール

  • 伊藤 真美(イトウ マミ)

    エディター&ライター。児童書、雑誌や書籍、企業出版物、PRやプロモーションツールの制作などを経て独立。ライティング、コンテンツディレクションの他、広報PR・マーケティングのプランニングも行なう。

おすすめ記事

All contents copyright © 2017 Shoeisha Co., Ltd. All rights reserved. ver.1.0