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イベントレポート(プログラミング教育)

ITエンジニアのお父さんたちがプログラミング教育を考えた――大切なのは保護者が「一緒に」触れること

Developers Summit 2018【15-D-7】お父さんが教えるプログラミング、我が子に伝えたいワクワク レポート


 IT業界で働くお父さんたちは、「プログラミング教育」をどう考えているのだろうか。2018年2月15、16日に開催されたエンジニア向けイベント「Developers Summit 2018」において、「お父さんが教えるプログラミング、我が子に伝えたいワクワク」と題したセッションが行われた。登壇したのは教育の専門家ではなく、IT業界で働くエンジニアであり、子育て中のお父さんである阿部崇氏と平初氏。セッションには、多くのお父さん・お母さんエンジニアが参加した。EdTechZineでも連載を執筆した二人が、IT系お父さんならではの視点で語った、プログラミング教育と家庭でのIT教育とは。本記事ではその模様をレポートする。

株式会社セールスフォース・ドットコム 阿部崇氏(左)、レッドハット株式会社 平初氏(右)
株式会社セールスフォース・ドットコム 阿部崇氏(左)、レッドハット株式会社 平初氏(右)

第4次産業革命到来! 「プログラミング教育」が現実味を帯びてきた

 登壇した阿部氏は、連載「これから始まるプログラミング教育に対して保護者ができること」を、平氏は「お父さんが教えるプログラミング~5歳からのプログラミング教育体験記~」を、それぞれEdTechZineで執筆。本セッション登壇のきっかけとなった。この2本の連載を書籍化した「子どもに読んで伝えたい! おうちではじめるプログラミングの授業」(翔泳社)は、3月15日より発売中だ。

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 平氏は、「普段はレッドハット株式会社でセールスエンジニアをしていますが、今日は全然関係ない話をします」と簡単な自己紹介から始めた。

 平氏がプログラミングを始めたのは中学生のころ。壊しても問題ない、中古の事務用パソコンを手に入れて触っていた。高校生の時、インターネットとの出会いをきっかけに、「インターネットは世界を変える」と思いIT業界に入り、SIerやコンピュータメーカーなどを経て現在のセールスエンジニアに至る。2歳と6歳の子どもがおり、「長男が5歳の時にやってみた、家庭でできるプログラミングの話をします」と自身の発表内容を示した。

 続いて阿部氏の自己紹介。プログラミングとの出会いは、「どうしてもゲームを作りたくて、小学生の時に友だちが持っていたファミリーベーシック(ファミリーコンピュータ上でゲームを作れる機器)に触れた」のが最初だった。アプリエンジニアやインフラエンジニアを経て、現在株式会社セールスフォース・ドットコムにおいてPlatform Specialistとして活躍している。

 4姉妹のお父さんとしてPTA活動を積極的に行い、地区の教育委員会や教員とも交流の深い阿部氏は、「平さんのように、家庭でプログラミングをやっているわけではないが、情報モラル教育の話などを交えてお話ししたい」と話し、セッションをスタートした。

 阿部氏はまず、「どうしてプログラミング教育が必要になるのか」といった疑問を取り上げた。

 2020年に小学校で必修化されるプログラミング教育だが、「実は20世紀くらいから小中学校の段階でのプログラミング教育は必要だと考えられてきた。具体的に何を実施したらよいのか、目標が分からないなどの問題があって、これまで実現してこなかった」と阿部氏。

 こう説明したうえで、このタイミングで現実味を帯びてきた理由として、AIやロボットなどが人間の代わりに何でも行う「第4次産業革命」と呼ばれる時代を迎え、人がただ物を作って売るだけでは成り立たない時代に向かっていることを挙げた。今人類が抱えている課題を解決できるスペシャリストを育てなければならないので、早いうちから今あるIT技術を活用しつつ、「論理的な思考」ができる人材を育てよう、となったと分析した。実際に、文部科学省の資料に「第4次産業革命を勝ち抜き未来社会を創造する」ための教育を実施するといった旨の記載があることにも触れた。

 ここで阿部氏が留意点として、プログラミング教育とは、「今みなさんが使っている『プログラミング言語』の学習ではなく、あくまで『プログラミング的思考』を育むことが目的」だと述べた。「プログラミング的思考」とは端的に言えば「論理的思考」。入手した情報を整理して読み取る力や、課題を発見する力、解決するための力なども当てはまると考えられる。

「興味を持ってもらう」ことが大事、保護者がやるべきことは?

 それでは、子どもの論理的思考を養うために、保護者がテキストコーディングを勧めたり、一緒にロボットを組み立てたりしなければならないのか。そんなことはないと阿部氏は明言する。小学校課程の目標は、全ての教科においてあくまで「興味を持ってもらうこと」にあるからだ。

 「興味を失ったものについては、学習意欲がなくなって勉強していけない。現在では『アクティブラーニング』という言葉も出てきたように、『どうやったら興味を持ってもらえるか?』に、だんだんと主軸が置けるようになってきました」(阿部氏)

 昔から目指してはしていたものの、これまでの現場ではなかなか難しかった教育の形。それが近年、IT技術を含めて多様な手段が出てきたことにより、実現可能になってきたわけだ。

 阿部氏は、保護者にできることとして「まず『興味をそがない』ことが一番重要」だとした。「無理に勉強をさせよう、算数のドリルをやらせようと思ってもなかなかやらないでしょう」と会場に呼びかけた。また、「ゲーミフィケーション」という言葉を挙げ、ゲーム感覚で学びにつなげていくなどの工夫で興味を引き出すことが必要だと説明した。さらに、実際に子どもが興味を持ったらそれを伸ばしていかなければならない。保護者はこの辺りを考えていくことが重要だと語った。

 さらに阿部氏は、保護者自身がプログラミングやコンピュータへの苦手意識を減らす重要性も強調した。

 「プログラミングって複雑なことをやっているのでは?と感じてしまう保護者の方もいると思います。しかしプログラミングもかみ砕けば、要素はたった3つ(順次、分岐、反復)。また、家電など日常の中で動いているものを示して、『プログラミングは身近にあるよ!』と子どもに伝えることで、興味を持ってもらえるかもしれません」(阿部氏)

 このように話し、保護者が「一緒に考える」ことの大切さを説明した。

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小さなコンピュータ「IchigoJam」を5歳の息子とやってみた

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この記事の著者

岡田 果子(編集部)(オカダカコ)

2017年7月よりEdTechZine編集部所属。慶応義塾大学文学部英米文学専攻卒。前職は書籍編集で、趣味・実用書を中心にスポーツや医療関連の書籍を多く担当した。最近は英語学習のアプリやオンライン講座に興味がある。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です


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