校長自身も「Google認定教育者」のレベル1・レベル2を取得
甲府市立城南中学校は甲府市の南部に位置し、生徒数が約800人の大規模校だ。1学年につき8~9クラスあるというマンモス校でICT活用が活発になったのは、GIGAスクール構想が始まった2020~2021年度に校長を務めていた鈴木昇氏(現・甲府市教育委員会)の存在が大きい。鈴木氏は同校の校長在職時に、Google認定教育者のレベル1とレベル2、さらに「Google for Education 認定トレーナー」のトレーナースキルテスト(編集部注:Google for Education 認定トレーナーを取得するために必要なステップのひとつ)に合格。さらに同校において、生徒による「ICTリーダー」制度をスタートさせるなど、実践的な試みを行ってきた。
「もともと16歳頃からFORTRANでプログラミングをしていた」と話す鈴木氏は、2020年度に城南中学校に着任する以前は、教育委員会で教員向けの情報研修を行うなど、ICT活用に長けた経歴がある。
2020年からは、教育委員会に設けられたGIGAスクール構想準備委員会のひとつ「OS設定委員会」に所属し、甲府市でのICT導入に携わってきた。「導入するOSを検討する中で『G Suite for Education』(現在の『Google Workspace for Education』)に出会い、選定基準にも合致し、教育クラウドとして学校現場に親和性が高い点から、迷わず選んだ」という。
2020年4月に城南中学校の校長に着任後、鈴木氏は独自にG Suite for Educationの校内研修をスタート。Chromebookが導入されるのは翌年の2021年だったが、「教員向け情報研修を行っていた時代からやりたかったことが、GIGAスクール構想による環境整備で実現できると感じた。準備期間と言える2020年度の1年間で、何とか教員に端末を活用してほしい」という思いから、まずは教育委員会の了承を得て学校ドメインを取得し、G Suite for Educationの初期設定から管理設定までを一通り行った。さらに2020年12月には、教員向けの「Google Jamboard」体験研修を校内で実施するに至った。
「Google for Educationの共有機能やさまざまアプリは強力なツールだと感じていたので、それらの魅力を教員が実際に体験し、気付いてもらうために研修を行ってきた。そして、若手の教員に『授業をやってみないか』と声をかけて手を上げてくれた4人に、校内研究という形で授業を行ってもらった。さらに、教員からは『Google フォーム』で意見を集め『Google スプレッドシート』にまとめていた」と、鈴木氏は当時の取り組みを振り返る。
しかしこのように校内研修を進めていく中で、鈴木氏は「大きな課題が見えてきた」と話す。
「ICT活用のゴールは、学力向上につなげることだと私は考えている。しかし、Googleのサービスを知らない教員は、まず『Googleアプリで作成したファイルはどこに保存すればいいのか』『どうやって印刷するのか』といった基本的な操作を習得しなければならず、それどころではない。その時点で、教員はICTスキル習得の先に、学力向上というゴールの存在をイメージすることは難しい」(鈴木氏)
そこで「教員自身がGoogle for Educationの全貌を理解し、このツールを使いこなす前提で現在の業務や授業を見直さないと、改善された先のイメージが湧かないのではないか」と考え、まずは鈴木氏自身がGoogle認定教育者を取得するに至ったのだ。