はじめに
小学校に限らず、教育現場はどこも新しい仕事が後から後から……「GIGAスクールの実践を増やせ」「英語指導を一層充実させろ」「道徳の教科化も忘れるな」「プログラミング教育もしなければならないぞ」などなど、次から次へと仕事は容赦なく増えます。加えて「働き方改革実現だ」から「残業を減らしましょう」そのために「仕事の無駄を見つけて減らしなさい」と、よりによって業務量削減のために「仕事の無駄探し」なる新しい仕事がさらに積み上がるという、コペルニクスも真っ青の事態に進展しているのが教育現場の実態です。
「せめてこれは止めましょう」と削減すべき仕事の具体的な内容を、管理職ないし教育委員会から明示していただけるとありがたいところですが「自分の仕事は自分で管理しなさい」ということなのでしょう。そう、心身の健康を保ち、かつ長期的に教員を続けるために、日ごろの勤務状況や内容を鑑み、不要な手間や方法を洗い出し、端的かつ効果的な管理方法へと能動的に変換しうる知識や技術、実行力が、これからの教員には必要となるのです。
しかし、指導力向上にまい進しても「仕事の整理整頓など専門外な教員たちが、どうやってそれを実現すればいいの?」とお悩みの方は多いのではないでしょうか。
そんな先生方の救世主となるのが、積み重ね業務のひとつ、GIGAスクール構想実現をきっかけに導入され始めている「クラウド教育サービス」なのです。少なくとも私個人は、そう考えております。
今回は、クラウド教育サービスのうち、私が勤務する八王子市に導入されたOffice 365 Educationを活用して作り出した時間について紹介します。
市内全校にOffice 365 Educationが導入される
コロナ禍においても児童生徒に学びの機会を保障すべく、東京都八王子市でも、市内の全公立小中学校の児童生徒と教員を対象に、「Office 365 Education A1」のアカウントが配布されました。しかし、昭和時代から続く黒板とチョーク、ノートと鉛筆を最大限活用するための指導スキルを磨いてきた現場教員たちが、いきなり「使え」とA1アカウントを渡されたところで、早速使いこなすことができるような知識やスキルを身につけているはずがありません。この状況で活用するためには、まず教員自身がOffice 365 Educationを実際に使い、基本的な知識やスキルを身につけながら、そのメリットを実体験する必要があると考えました。
Office 365 Educationを校務に活かすポイントを絞る
もちろん校内すべての業務を一気に見直すことは不可能です。見直すのは、私が学級主任を務める特別支援教室の学級運営に関わる部分のみとしました。特別支援教室の運営上、改善すべき問題点を以下の通りまとめました。
- 拠点校、巡回校に配置された特別支援教室専門員間の情報共有にタイムラグが生じること。
- 巡回校専門員都教員の間で、正しく情報共有がされにくいこと。
- 特別支援教室教員が2チームに分かれて巡回指導を実施しているために、チーム間の指導方針や情報共有がされにくいこと。
- 特別支援教室教員が情報共有を行うための学年会の場が、主任や主張の強い教員の意見発表の場となりがちであること。
- 学年会が、以前の学級主任が当日配布した議題を確認するだけで用意した時間が終わってしまいがちなこと。
ここから、Office 365 Educationで改善すべき本学級の業務上の課題を「情報の共有化」「会議のもち方」の2つに集約しました。そこで、私が主たる学級主任を務めることになった本年度から、Office 365 Educationを活用した課題改善の方法を提案、実施することにしました。