- リンダさんの講演資料:「One Hundred Languages」
大きな問題は小さい問題の組み合わせ
リンダさんは、簡単な自己紹介のあと「本は、過去の出来事を伝えるのにとても有効な手段なので、執筆活動を続けています。そして、プログラミングは、国、性別、年齢を問わず共通の言語(Lingua Franca)になるものと思っているので『ルビィのぼうけん』を書きました」と話す。
『ルビィのぼうけん』は、6歳の女の子が、動物たちとダンスやゲームを通じてアルゴリズムやプログラミングについての概念を学んでいく絵本だ。日本語訳も出版され、小学校のアンプラグドのプログラミング教育の教材などにも利用されている。
すでに23か国で出版されている同書は、1巻がアルゴリズムやプログラムの本。2巻がコンピュータハードウェアのしくみに関する本。3巻がネットワークやインターネットに関する内容となっている。現在執筆しているのは人工知能に関する内容になるという。
リンダさんが、執筆や子どもたちとの話の中で心掛けているのは、「コンピュータはいろいろな場面で身の回りの問題を解決していること。世界の大きな問題も小さい問題の積み重ねで成り立っていること。そして、その大きな問題を解決するには、技術と教育が平等であること」という考え方。これはリンダさんが常に主張していることであり、『ルビィのぼうけん』のテーマでもある。
ループの気持ちになって考える
本を執筆したり、子どもたちと接していると「どうすれば子どもたちにコンピュータサイエンス教えればいいのか」という質問をよくうけるそうだ。ループでつまづく子どもが多いのか、ループの理解がネックにあることがあり、ループの教え方も聞かれるという。この質問には次のように答えているという。
「難しい概念ですが、ループになって考えてみる、とアドバイスしています」
本の中でも実践されていることだが、例えばダンスで手を叩いたり、ジャンプしたりといった動作を体を使って繰り返す。繰り返しは指示があるまでなのか、回数で止めるのか。手足を使ってシーケンスといったアルゴリズムの基本的な概念を体験させる。これが「ループになって考える」という意味だ。その上で、分解した動作をヴィジュアルプログラミグ、プログラミング言語へと発展させていく。
プログラミングの話になると、言語はどれがいいかという話もでてくる。この質問については「特定の言語を学ぶのではなく、その背後にある考え方を重視します」とリンダさんは答える。背後にある重要な概念とは「Computational Thinking」のことだ。このプログラミング言語だと、こう書けばこう動くということではなく、この動作を実現するには、コンピュータには、動作を分解して手順を示してやる、といった考え方をできるようにする。
プログラムが何をさせたいのか、どうやって動くのかを考える、そしてプログラムを組み立てたり、論理的思考を育てることが重要。そして、問題解決には欠かせない、「やり遂げる力、創造力、コラボレーションスキル」を身に着けてもらうことが最終的な目標だという。大きな問題でも小さい問題に分解すれば解決できるかもしれない。問題を解決するまでの努力や忍耐、ときには創造性を発揮し、お互い協力して最後までやり遂げることが大切なことなのだ。