「バーチャル学校探検」で探究的な学びを
テクノロジーでwithコロナ!ES(Enliven School=学校盛り上げ)プロジェクト
4人目として登壇したのは、兵庫県・尼崎市立園田小学校の林孝茂先生。新型コロナウイルスの影響により従来の形でできない学校探検を、「バーチャル学校探検」という新しい形で実施した。
さまざまな制約があったこの1年、林先生は「Enliven School(ES)=学校盛り上げ」プロジェクトを考案し、児童と一緒に取り組んだ。ESプロジェクトでは新型コロナウイルスの影響を自分事にするために調査を行ったり、中止・縮小された学校行事をデジタルツールを使って取り戻したりする取り組みを実施した。「バーチャル学校探検」も、その一環として行われたものだ。
例年、学校探検は教室前の掲示物を5年生と1年生のペアが見て回り、それぞれの施設の役割などを知る活動として行われていた。
バーチャル学校探検では動画学習ツールである「Flipgrid」を活用。端末でQRコードを読み込むと、事前に制作した校内の施設の紹介動画を見ることができる。普段は立ち入ることができない屋上やプールなどの紹介も行うことができる上に、移動時間の短縮や、欠席した児童があとから視聴可能であるといったメリットもある。
最初に、5年生の児童がバーチャル学校探検当日に向けて準備を行う。まずは動画をつくるために必要な情報を集めるため、ロケハンを実施。ロケハンを経て担当場所が決まったら、「外観・内観・詳細・まとめ」の4部構成で絵コンテを作成する。その後、撮影に臨む流れだ。絵コンテを事前に用意したおかげで役割分担や撮影すべき内容がはっきりしていたため、撮影はスムーズに行うことができたという。また、Flipgridであればその場で編集・アップロードができ、手間がかからないのも大きなポイントだ。
映像を制作したら、バーチャル学校探検当日の掲示物(ポスターやQRコードなど)を作成し、準備完了となる。
準備活動で児童は「何を1年生に説明すべきか」を常に意識しながら活動を行うことができたという。児童から提出されたふり返りとしては、「コロナでできないことも増えたけど、工夫したらできることもわかった」「1年生が喜ぶ姿を見たいからがんばりたい」といった、意欲的な感想がたくさん集まった。「これは自分自身で取り組みを進めているからこその学習態度」と林先生は語る。
いよいよバーチャル学校探検の当日。密を避けるため、全18ブースを3つの教室にわけて配置した。5年生と1年生がペアになるのはこれまでの学校探検と共通している。このペアで、端末を片手に動画を再生する各ブースを回っていく。操作は最初こそ5年生が行っていたが、慣れてくると1年生が率先して行うようになり、5年生がサポートする姿も見られたという。
5年生の児童の当日のふり返りとしては「1年生に楽しんでもらえて良かった。自分もうれしくなった」「改めて学校について学ぶことができた」といった声が集まった。林先生は「発達段階にかかわらず、児童全員が興味関心を持って参加できるのもICTの強みだと思います」と語る。
今回の実践について、林先生は「総合的な学習の時間における探究学習の4つの過程である、『課題の設定』『情報の収集』『整理・分析』『まとめ・表現』にそれぞれ当てはめることができました」と説明。そして「こうした探究学習で得た『知識』ではない『経験』は、児童にとってより深い学びとなるはずです」と続けた。最後に「今後は1人1台端末によって学びの可能性をさらに広げていきます。皆さんと一緒に、新しい学びを一緒につくりあげてきたいです」と語り、発表のまとめとした。