日本パブリックアフェアーズ協会理事であり、慶應義塾大学大学院経営管理研究科特任教授でもある岩本隆氏は、政策提言レポート「教育機関におけるパブリッククラウド導入拡大に向けた考察~ポストコロナ時代に求められる初等中等教育環境整備のあり方~」を、1月12日に発表した。
同レポートでは、教育機関におけるパブリッククラウド導入メリットとして、以下の項目を挙げる。
- Savable(教職員の負担・コストの軽減)
- Secure(データを安全・安心に保存・利活用)
- Scalable(児童生徒数や利用の増減等の環境変化に即応)
- Seamless(時間や場所、端末等の違いを超え、切れ目なく活用)
また、パブリッククラウドの導入によって、自治体および教育機関における以下のような課題の解決に寄与すると述べている。
- 導入時・運用時のコスト合理化
- 教職員の働き方改革推進
- 災害や感染症蔓延時の遠隔教育対策
新型コロナウイルス感染症の拡大を契機に、初等中等教育機関においては遠隔教育やデジタル教科書といったEdTech関連サービスの活用が急速に進んでいるが、パブリッククラウドの導入、および利用促進に向けた課題として、同レポートは以下の4点を挙げている。
- 個人情報保護に関する諸課題(オンライン結合禁止条例の課題、いわゆる「2000個問題」)
- 予算確保に関する課題(地方財政措置では予算重点配分がされにくい、クラウド導入に向けた補助金などが存在しない)
- ICT人材確保の課題
- パブリッククラウドに関するわかりやすい情報提供の不足
さらに、パブリッククラウドの導入を実践している自治体・教育委員会や学校の先進事例も紹介する。具体的には、自治体・教育委員会や学校の負担軽減・業務改善、児童生徒の学びの支援、緊急時のレジリエンス確保、研究活動の充実の観点から、以下のような事例を取りあげている。
- 長崎県:パブリッククラウドを使用した統合型校務支援システムの共同調達
- ロイロノート・スクール:EdTechを支えるパブリッククラウド
- 札幌学院大学:災害対策とテレワーク実現のためのパブリッククラウド導入
- 英国オックスフォード大学:研究現場でのパブリッククラウド活用
これらを受けた、初等中等教育の現場におけるパブリッククラウド導入拡大を促すための施策として、同レポートでは早期に解決が必要な以下の4点を提言している。
- 「オンライン結合の禁止/条例2000個問題」の早期解消
- パブリッククラウド導入・利用のための補助金の新設
- 自治体・教育委員会・学校におけるICT人材確保に向けた支援拡充
- パブリッククラウド導入に関する情報を網羅したガイドブックの作成
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