女子向けプログラミング教育に課題感を持つ7人が集結!
2020年度からの小学校プログラミング教育必修化に伴い、プログラミング教育市場も拡大し、「子どもに習わせたい習い事」の上位にも入るようになってきている。その一方で、民間のプログラミング教室では男女比に大きな偏りが生じており、特に女子の在籍率が低く、それが将来の理系教育、ひいてはデジタル分野や工学分野における女性の就業などにも影響を及ぼすと考えられている。
主催者である株式会社アフレルの檜山桐子氏は、「実体験を通して感じた課題や学びを皆さんと共有し、気づきを得ていくことで、女の子がプログラミング教育に取り組みやすい環境をつくることを目指していきたい」とイベントの目的について語った。
今回の参加者の1人、芝浦工業大学 デザイン工学部でソフトウェア工学を専門とする野田夏子教授は、大学での研究・教育の傍ら、学内で「工学女子を育てよう!」プロジェクトを立ち上げ、工学系女子の裾野を広げるべく、女子学生、女性教員が指導者となって女子小中学生にロボットプログラミングを教えるワークショップを実施している。また、IEEE Japan Council(注:人類社会の有益な技術革新に貢献する世界的な専門家組織の日本支部)において、女性技術者・研究者の自立と連携を支援するWIE(Women in Engineering)の役員も務めている。その野田教授と檜山氏の出会いが、今回の座談会開催のきっかけになったという。
檜山氏がショックを受けたのは、大学および研究者の理工学分野における女性の少なさだ。大学在学者の女子学生の割合は平均で45.4%、しかし工学部は15.4%、理工学部も27.9%と低い数値が続いている。さらに、社会に出た後の専門分野別の女性研究者の割合が工学分野は6.2%にとどまる。
「野田先生は理工学分野の女性率の少なさに課題感を持ち、小中学生での楽しいプログラミング体験が、後に女子が理工学の進路を選ぶきっかけになればと考え、取り組みを始められたと伺った。その中での気づきを、民間スクールの皆さんとも共有したい」と檜山氏は語る。
株式会社ノジマ 販売推進部 PC教室でキッズプログラミング事務局を担当する加藤道子氏も、「ロボットプログラミングやScratch、Webサイト作成のコースを展開しているが、女子の比率は10%ほど。また、横浜市や相模原市、JAXAなどの後援のもとCSR活動として数百名規模のプログラミングワークショップを開催しており、そこでも女子は3割程度にとどまり増える様子がない」と現状を語る。
株式会社ミマモルメの楠本千尋氏も、教育事業部でロボットプログラミング教室「プログラボ」の運営に携わっており、教室で生徒を教える傍ら、大学などの教育機関と連携しプログラミング教育の普及活動を担っている。女子生徒の少なさに課題感を持っているのはもちろん、すでにプログラミングを学んでいる女子生徒に対して理工系での将来像を描くきっかけになるようにとの思いで、大阪府立大学と共同で女子限定イベントを開催。「参加した女子生徒たちの得た学びを紹介できればと考えている」と話した。
そして、夢見る株式会社でプログラミング教室「ロボ団」のフランチャイズ事業部に所属する佐野麻衣氏は、全国120カ所の教室の集客に携わる中で、女子向けプログラミング教室ブランド「チアーズ」を立ち上げ、1年でクローズした経験を持つ。「その失敗をもとに、難しかったこと、良かったことを共有したい」と語った。
6人目は、株式会社LITALICOで5歳~高校生まで通うIT×モノづくり教育「LITALICOワンダー」のカリキュラムや教材、研修開発を担当する和田沙央里氏。300人以上の生徒にプログラミングを教え、2016年度には総務省の若年層プログラミング教育普及推進事業でプロジェクト責任者も務めた。本人も小学生からプログラミングを楽しんでいた経験があり、2019年に共著で発行した子ども向けScratchの書籍には「女子が好みそうなテーマをあえて盛り込んだ」という。
そして最後に、現役の東京工業大学大学院1年生の小野沙桃実氏が登場。高校時代には「レゴ マインドストーム NXT」を使い、現在は理系女子学生をメインとする、世界中にネットワークがある学生団体「Robogals Tokyo」の代表を務める。「数少ない女子学生ということで、女子向け理系教室に参加し子どもたちの楽しむ姿を見て、自分も原点に帰って楽しみたいと感じるようになった」と語った。