IT活用が進む中国では教育分野においてもさまざまなテクノロジーが導入されており、正しい英語発音を判定する多次元音声評価AI「CHIVOX(チボックス)」もその一つ。これは、学習者の英語の発音の良し悪しを判定できるAIで2007年、英国ケンブリッジ大学発ベンチャーが開発したものだ。1000社以上の英語教育企業の製品内に組み込まれており、中国では英語教育プロダクトの60%以上にCHIVOXの英語スピーキング評価AI技術が導入され、上海市や江蘇省などの自治体主催の高校入試、大学入試における英語スピーキングテストの採点システムとしても採用されている。
アイード株式会社は、「CHIVOX」を日本の英語学習サービス事業者に対して展開している企業。今回は、アイードの代表取締役会長の宋暁非氏に、中国における「CHIVOX」の活用方法をはじめとした、英語教育へのテクノロジー活用の現況や日本との比較について聞いた。
アイード株式会社 代表取締役 宋 暁非
グロービス経営大学院で、コンテンツの整備・開発、クラスの品質管理に従事。2012年にグロービスチャイナ副総経理。2015年には「森暁教育」を立ち上げ、オンライン日本語スクール「Jtalk」とオンライン中国語スクール「Ctalk」を提供する一方、日中の教育商社として中国EdTechを日本へ仲介する事業を開始。2019年1月、デジタルテクノロジーの利活用を通じて教育領域が抱える課題解決を目指すことをビジョンに掲げるアイード株式会社を設立。広島大学国際協力研究科教育学修士/グロービス経営大学院経営学修士
中国では子どもの将来のための英語教育が過熱、より正しい発音を重視する傾向に
中国の英語教育について宋氏に尋ねると「日本の英語教育サービスは、社会人向けのものが目立ちますが、中国では、小学生向けのサービスが盛んです。親が子どもの将来を考え、小さなうちから習い事の一つとして学ばせるようになっています」と、子ども向けのサービスが活況であると切り出した。
中国の親たちが、子どもの就職には英語が必要と考え、英語教育に熱心になってきたのがここ8〜10年前からの傾向であるとし、中国の子ども向けオンライン英会話サービスの子供向け英会話市場における浸透率は、2018年で26.59%、2019年には33%を超える見通しだ(出所:2019年中国オンライン青少年英語産業研究報告)。 中国の子ども向けのオンライン英会話サービスでは、「VIP KID」「VIP Jr」「51Talk」の3つが市場全体の8割を占め、いずれのサービスも成長性のある事業として資金を多く集めているという。
宋氏は、オンライン英会話サービスで中国の親たちが重視しているスキルの一つが発音であるとし、「中国人は日本人より、発音についてこだわりが強い傾向にあると思います。『VIP KID』は北米の講師を多く採用し、フィリピン人講師などが多い他のサービスよりも人気を集めるようになっています。また講師だけでなく、教材やサービスにも発音評価機能があるのが当たり前になっています」と説明した
発音評価が当たり前になった理由の背景として宋氏は、10年ほど前から実施されてきた、受験における英語のスピーキング評価システムの導入が影響しているという。「北京市では高校受験の英語試験は100点満点中40点がリスニング&スピーキングで、AI活用などにより自動で採点が行われています。また英語の成績が省内で2番目か3番目だった朝陽区では、2018年に『CHIVOX』を活用した学校向けリスニング&スピーキングトレーニングソフトを導入したことで北京市の英語試験のリスニング&スピーキングにおいて1位になったという事例もあります」と宋氏。